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楽食探訪:お菓子のホームラン王は、時を経て、7番打者になっていた。

「ナボナはお菓子のホームラン王です」。

このテレビコマーシャルを見たのは、
「懐かしの〜」というタイトルがつく番組だったと思う。

私の年齢からすると、
リアルタイムで見ているのかもしれないけど、
私は兵庫生まれ兵庫育ちなので、
関西では流れていなかった可能性の方が高い。

だって、記憶にないから。

「ナボナ」は、東京自由が丘で誕生した
「亀屋万年堂」というお店が、
1963年に売り出した和菓子のような洋菓子だ。

厳密には違うらしいが、
「ブッセ」と似ていると言われる。

「ブッセ」は、シャトレーゼや山崎から
発売されているので、よく知っている。

特に、シャトレーゼの「豊酪」はお気に入りで、
たびたび買っている。

その「ブッセ」に似たものを50年以上も前から
売っているということで、
どんなものかという興味をずっと持ったままでいた。

ぜひ、食べてみたい。
東京へ行ったら、絶対に買おう。
そこまで、思い込んでいた。

憧れと言っても良いのかもしれない。

いまは、ネットで買えるらしい。
が、少し迷っていた。

取り寄せるには、1000〜2000円は掛かる。

食べたいけれど、もしマズかったら、
ダメージは大きい。

そんな思いで決断できず、
3年ほどは経ったかもしれない。

食べたいと思い始めてからは、10年ぐらいだろうか。

ウダウダと刻は流れていた。

そして先日、スーパーで発見した。

「北海道ナボナ」。

えっ! ウソッ! マジッ!
これは本物なのか。

どうやら、粒あんとバタークリームの入った、
正真正銘の「ナボナ」のようだ。

これなら、「ナボナ」の雰囲気はわかる。

味のバリエーション以外、つまり生地は同じだから、
「ナボナ」の味は知ることができる。

即、カゴへ。

この瞬間の喜び、ワクワク感、少しドキドキ。

やっと、出逢えた。
東京まで行く必要がなくなった。
かなり嬉しい。

家に帰って、早速パクッ!

おやぁ〜、えぇ〜〜、こんなものなのぉ〜。

粒あんとバタークリームは普通だとしても、
生地が変な食感。

表現が難しい。

ふわふわだけど、キレが悪いというのか。

歯に残る、ねっとり感がある。

元々和菓子屋さんだから、こんな生地になるのか。

正直に言うと、期待が大き過ぎた。

マズくはないけど、わざわざ買いに行ったり、
取り寄せるほどのものではない。

コマーシャルをやっていた時代には、
このレベルのお菓子はなかっただろうから、
確かにホームラン王だったのだと思う。

でも、刻は流れ、
美味しいお菓子が氾濫しているいまでは、
かなり打順も落ちて、7番ぐらいだろうか。

ベストナインではあるけど、ファンに騒がれた時代は、
過ぎ去ったのかもしれない。

私の中の「ナボナ」は、もう引退してしまったけれど。

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佐藤きよあき
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