“おひとりさま”が快適になると、経済は破綻する。
高齢者のひとり暮らしが増えているのは周知のことだが、結婚適齢期を大きく過ぎた人の“おひとりさま”も増加している。いわゆる、結婚せずに中年になってしまった男女のこと。
厳しい社会情勢で収入に不安があるため、結婚に踏み切れない男性。
自立して食べていくことができるため、男性に寄り掛からなくて済み、婚期を逃した女性。
ひとりで気ままにいることに慣れ、交際さえも面倒だと思うようになってしまった男性。
理想が高過ぎて、妥協できなかったために、気づいた時には誰にも相手にされなくなっていた女性。
さまざまな理由で、淋しい“おひとりさま”になっている人がたくさんいる。ところが……。
これまでなら、現状を抜け出して早く結婚したい、と願うのであるが、こうした“おひとりさま”を狙ったビジネスが広がることにより、結婚願望が薄れてきているのである。
“おひとりさま”専用テーブルを作った、イタめし屋や焼肉屋。
単身者向けの家事代行サービス。
ひとりでも参加できるパック旅行。
淋しい時の話し相手になってくれる電話サービス。
日常の洗濯をまとめて請け負うクリーニング店。
ひとりでいることが「快適」になるサービスが増えているのである。
「自由で気まま」だった“おひとりさま”生活に、「快適」が加わることで、結婚に魅力を感じなくなってきている。
この自由・気まま・快適なライフスタイルを捨てて、制約も多い結婚生活を選ぶ価値があるのかどうか、疑問を持ち始めている。
結婚する人が少なくなると、当然少子化問題も深刻化する。経済を支える人そのものが少なくなるのだから。
消費も減り、税収も減る。それだけではない。結婚そのものに関連する商品・サービスも売れなくなる。
男女が結婚し、新居を構え、子どもが生まれ、成長する。その過程で、ありとあらゆる消費行動が起き、経済はまわっていくのである。
結婚する人が少なくなれば、このサイクルが途絶えてしまう。平たく言えば、モノが売れなくなり、お金がまわらなくなる。
“おひとりさま”が生涯に遣うお金など、たかが知れている。すなわち、快適な“おひとりさま”を増やすことは、経済全体にとってはマイナスでしかない、ということである。
“おひとりさま”には申し訳ないが、淋しく不便な生活をしてもらう方が、「結婚したい」と思うようになり、経済のためには大きなプラスとなる。