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“ほか弁屋”の「のり弁当」は、なぜ売れ続けているのか?

庶民なら一度は食べたことがあるであろう、ほか弁屋の「のり弁当」。ご飯の上に、昆布の佃煮もしくは醤油和えのかつお節をのせ、焼き海苔をかぶせた本体。

その上に、白身魚のフライと竹輪の天ぷら、きんぴらがのり、さくら漬けか大根の甘酢漬けが添えられている。

見ためにはチープだが、間違いのない安定した美味しさがあり、長年に渡って人気商品である。

「ほっかほっか亭」「ほっともっと」「かまどや」などのチェーン店では、350〜380円程度で販売されている。「のり弁当」が一番よく売れるという店も多い。

この安さも不況の中では人気の要因ではあるが、それだけではない。

「すごく美味しい」「めっちゃ旨い」という存在ではないが、心にほのかな明かりが灯るような、温かな味がする。特別なものは何も入っていない。安い素材だが、もっとも美味しい調理法を選んでいる。

淡白な白身魚は、フライにすることで脂の旨味を足している。竹輪はそのままでは“おかず”になりにくいが、天ぷらにすることで、練り物のコクを引き出している。ごぼうと人参のきんぴらは、和総菜の定番。

この弁当のもっとも美味しいところは、昆布もしくはかつお節と海苔とご飯の組み合わせである。白ご飯に合うものの王道として、昔から親しまれてきた味である。

安っぽいと感じる人もいるだろうが、庶民ならどこか懐かしく、ガツガツと食べてしまうほど、美味しいはずである。

ほか弁屋の人は言う。「お金のない人にも、しっかりと食べてもらいたいから、安い価格で提供している」。これがほか弁屋の原点であるがゆえに、いまだ安く提供しているのである。

この信条は、どこか母親に通ずるものがある。お金もなく、決して料理上手とも言えない母親が、子どもの成長を願い、不器用ながらも一所懸命に作ってくれた弁当に似ている。

アルマイトの弁当箱に、ギュウギュウに詰められたご飯。白ご飯では寂しいから、昆布や海苔をのせる。少ないおかずを豪華に見せるために、ご飯の上に並べる。

腹を空かせた子どもには、なによりのごちそうである。「のり弁当」には、そんな郷愁がある。母親の愛情のようなものを感じるから、美味しいのである。

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