安易な結婚・出産は、不幸な事件を呼ぶ。
女性雑誌の「an・an」が、「授かり婚はこんなにスバラシイ!」という特集を掲載したことがある。いわゆる“できちゃった婚”を推奨しているようである。「セックス特集」など、先進的な内容で人気を得ている雑誌とはいえ、これは行き過ぎではないか。やり過ぎ、ぶっ飛び、無責任だとも言える。
長くつき合っているカップルの「できちゃった」と、つき合い始めて間もないカップルの「できちゃった」とでは、大きく意味が異なる。「“できちゃったから結婚しよう”も悪くないよ!」と、an・anは言っているのだが、楽観的に考えて良い問題ではない。
つき合いが浅ければ、お互いのこともあまりわかっていない。一生をともに生きることができる相手なのかどうかの見極めもできていない。そんな相手との子どもを一緒に育てていけるのかどうかは、大きな賭けになってしまう。結婚、即、離婚の可能性も高いのに、子どもにどう責任を持つのか。
ある程度長くつき合い、お互いのことを理解しているカップルの「できちゃった」なら、結婚後の姿も想像しやすく、覚悟もできるのだろうが。
an・anは、「結婚の覚悟が即できる」とか「結婚と出産、Wのオメデタ」、「すぐに家族の絆が生まれる」などというメリットを書いているが、何を根拠にしているのかがわからない。
「結婚の覚悟」と書いているが、それは“仕方なく”であって、心から願っているわけではない。願わない結婚がうまくいく確率は低い。
「Wのオメデタ」とは、ふたりで過ごす時間がなくなることを意味し、愛を深めることなく、慌ただしい子育て期間に移行するのである。
「絆が生まれる」とは、“家族”という言葉から想像した理想論である。これを書いたのは、独身女性ではないかと思う。それは、なぜか?
夫婦間のトラブルで多いのは、“子ども”のことである。子どもが元でケンカが多くなり、他のことでも対立するようになり、離婚にまで発展するのである。これは、結婚していない女性にはわからないことである。
女性は子どもができると子ども第一となり、それを当たり前のように暮らすが、男性は違う。子どもは可愛いが、妻との時間も大切にしたい。妻が子どもばかりを構うと、夫はすねる。大人げないと思うかもしれないが、そんな男性は多い。つき合いの浅いカップルの男性なら、なおさらである。
なので、「子どもができたから絆が強くなる」とは言い切れない。よくここまで無責任なことを書けたものだ。
それだけではない。「できちゃった婚」の推奨は、不幸な事件に繋がることも知るべきである。安易に同棲・結婚・出産した結果、DVや子どもへの虐待、挙げ句の果ての殺人事件が多発しているのである。ニュースに登場するカップルの関係を見ていれば、よくわかることである。
お互いをよく知らないまま一緒に暮らし、子どもを作ると、さまざまな歪みができる。軽はずみな行動をする=物事を深く考えない者同士が一緒にいれば、問題が起きるのは当然である。
その収拾の方法もわからないので、離婚となる。離婚で済めば良いが、ストーカーや殺人事件に繋がるケースも多い。もっとも不幸なのは、子どもである。「生まれたことが不幸の始まり」とならないことを願うしかない。
これらのことを考えると、「授かり婚はこんなにスバラシイ!」などとは、軽々しく言えない。言ってはならない。影響力のある雑誌は、もっと慎重であって欲しい。