中津村開拓日誌・第3号(1997年11月発行)

それは、突然の来訪でした。

紀州新聞(和歌山県日高地方だけの地方紙です)
の記者が、私を取材したいと言うのです。

悪いことは何もしていません。

そうだ、嫁はんが道に落ちていた栗を
拾って来たことがあります。

ねこババした妻を持つ夫にインタビュー……?。

いえいえ、木のおもちゃを創っていることが、
取材対象だったのです。

髭も剃っていません。
作業用の服は何ヵ月も洗っていないし。
髪もボサボサです。
いやだわぁ、お化粧もしていないのに……。

おっと、これは失礼。
つい大阪人根性で、笑いに走ろうとします。

本題に戻ります。

取材は私もよくしていたので、
受け身になっても緊張はありませんでした。

おもちゃを持ってカメラにポーズ。

あることないことペラペラおしゃべり。

2日後の新聞に、
なんと!デカデカと私が映っているではないですか。

これにはドキドキ。
地方紙と言えど、新聞に載るとちょっと鼻高々。

あちらこちらで、
「新聞に載ってたねぇ」「見たよぉ」と声がかかり、
村ではちょっとした有名人となりました。

田舎では、顔を知られる方が生活しやすくなるので、
今回の事件は役に立っているのです。

だからと言って、
おもちゃがすぐに売れるようになるわけではありません。

先は長い。
---と、こんなイントロで、今号は始まります。

中津村に来て、はや6ヵ月。

はや(焼肉屋さん)にもしばらく行ってないなぁ。
食いたい。

いかん最初から横道だ。
何から書こうか。

そうだ、夏に書いていないことを―。

引っ越して来てすぐの頃。
庭の隅にかぼちゃとキュウリを植えました。

和歌山は夏の日差しが強いので、よく育つこと。

前号でいろんなモノを
村の人たちにいただいたことを書きましたが、
これに加えて、
我が家のキュウリが食卓を彩ってくれました。

毎日2~3本、一生懸命に食べなくてはいけません。

そうです。
でき過ぎなのです。

スーパーでは、3本200円ぐらいで売られているのに、
うちではいやというほどできるのです。

ピクルスにした残りを
サラダやもろきゅうにして食べました。

美味しいから、うれしいのですが。

ここでひとつ教訓。

雑草の多いところの近くに植えると、
地這い種のキュウリはあちらこちらに行って、
消息がつかめないことがあります。
これに注意。

毎日探していても、何度か見落とし、
とんでもない事態を招くことがあります。

大きくなり過ぎ、
な、なんと37cmのお化けになって
発見されたことがありました。

またいつぞやは、その姿を変え、
体積4倍はあろうかという“うり”になっていたのです。

しっかり、うりの漬物として食しました。

味もうりふたつ。
なんてな。
自然とは恐ろしい。

どうも私は食べ物の話が多いですが、
ついでにある日の我が家の食卓を紹介します。

鮎の甘露煮・鮎の塩焼き・芋の茎とベーコンの炒めもの・
大根のまびき菜の漬物・ピクルス・ごはん。

う~む、贅沢なメニューだ。

えっ、そうでもない?

うちではすごいメニューなのです。

この話、何がポイントなのかと言うと、
ベーコン以外、鮎にかけるすだちにいたるまで、
いただきモノもしくは自宅でできたモノなのです。

お米だって、新米の精米したてをいただいたのです。

どうだ!人づきあいは大切です。

何か違うんじゃない?
と思われる方もいるでしょうが、気にしない。

ある時など、山の中なのに、
釣ったばかりのサバをいただいたのですぞ。

これがまた旨いのなんの。
サバ特有の臭みがない。
内臓がプリンプリン。
こんなの初めてです。

中津村はいいところです。

相変らず、いただきモノに弱い私たちです。

食べ物の話はこれくらいにして、
村の環境のことなど……。

秋も深まり、紅葉が空気をほんのり赤く染めています。

朝夕の冷え込みが頬に紅を差すごとく、
ゆっくりとあざやかに厳しさを増していきます。

やがて木々は葉を落とし、道を冬へと彩るのです。

美しい自然。
私たち3人は、初めての冬を迎えます。

ぜんぜん似合わんので、やぁ~めた。

近くに温泉施設ができたんで、冬はええぞぉ。

村民はタダ券もろとらぁよぉ。
タダは気持ちええ。
券なくなったら行かんのんよ。

まあ、村には温泉と自然しかないらぁよぉ。

あと、ホロホロ鳥があるけんど、高くて食べれまぁ。

注:方言はたぶん間違っていますので、
雰囲気だけお届けします。
       
話は変わります。

畑をつくりました。
山の土をダンプで運んでもらい、
せっせせっせと畦づくり。

幾日かかったでしょう。

やっとできた時には、作付けの時期を少し逃し、
いまだ小さな芽があるのみ。

土も痩せているので、ちゃんと育つかどうか。

大根・人参・白菜など冬のモノと
キャベツ・エンドウ・玉葱などの
春モノを植えたのですが、
鍋の季節に白菜は間に合うのでしょうか。

畑には、うちの生活がかかっています。

また食べ物の話になりました。
風情のない私です。

松ぼっくりやどんぐり拾い、
山のお散歩などもしていますので、
ここにつけ加えておきます。

♪それでは皆様、ごきげんよぉ~♪

ちゃっきり娘をお存じですか?
古い大阪人の私。

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佐藤きよあき
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