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「四月になれば彼女は」今村圭佑

どんな映画か(ネタバレなし)

「世界から猫が消えたなら」「億男」などで知られる映像プロデューサー兼小説家でもある川村元気さんの小説「四月になれば彼女は」の映画化作品です。

「世界から猫が消えたなら」で生きることについて、「億男」でお金について深く掘り下げた著者が、恋愛について深く掘り下げた「四月になれば彼女は」
小説発売時から気になり、原作も読んでいました。

今回は原作を読んでいてから少し時間が経っていたため、原作の内容をほとんど忘れていたのですが、あえて予習せずに鑑賞しました。

映画の感想(ネタバレあり)

映画は、主人公(佐藤健)の元恋人(森菜々)がかつて主人公と一緒に周ろうとしていた世界の名所を周っていく「過去の時間軸」と、主人公と現在の恋人(長澤まさみ)との生活から恋人の失踪を描いた「現在の時間軸」でそれぞれ進んでいきます。

予告編にもあったキャッチーな台詞「愛を終わらせない方法」、それについては映画の中盤から終盤にかけて明かされます
それは、「愛を始めないこと」だと現在の恋人は言います。
始めたら終わってしまうから、始めない。
なんじゃそんなことかい、と一瞬思ってしまうのですが、これが映画の中のストーリーと合わさると非常に深みを持って訴えかけてきます

というのも、一度「愛を始めた」主人公と現在の恋人の関係性は、お互いのことを大事に思っていた最初の気持ちは薄れ、どんどんとすれ違っていっていたのです。
つまり、元恋人とのかつての時間軸と、現在の恋人との現在の時間軸は、別の時間軸でありながら主人公は同じことを繰り返していたのです。

初恋を忘れ、次第に互いの存在が当たり前になり、価値を失っていく。
これが、「愛を始めたことによる愛の終わり」の正体そのものだったのです。


映画のラストシーン、主人公はそのことに気付き、今回は同じことを繰り返さないように(愛を終わらせないように)現在の恋人と向き合います。
何事も始めることは容易くても、また始めるときは盛り上がっても、続けることは難しい。
愛を始めること以上に難しい「愛を終わらせない方法」を伝えてくれる物語でした


そして、余談ですが全編を通じて、音楽がすごく良いんです。
ラストシーンの山場はもちろん、大学の何気ないシーンでも、そして世界の名所(ウユニ塩湖など)を周るシーンでも映像美に負けていない音楽。
エンドロールで、音楽を小林武史さんが担当されていると見て、納得しました。
主題歌などではないとしても、ここまで音楽を通して映画をワンランク上げられるのかと新しい発見でした。

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