企業の持続可能性に対する説明責任の手法として主流化しているデューデリジェンス
最近、サプライチェーンのデューデリジェンス、人権デューデリジェンスなど、「デューデリジェンス」という言葉をよく聞くようになりました。日本では、今年の4月にクリーンウッド法が改正されたことにより、事業者は取り扱う木材が合法的に伐採されたものかどうかを確認する「デューデリジェンス」の実施が義務付けられることになりました(2年後に施行)。
木材はサステイナブルな資源です。しかしそれは、持続可能に管理された森林から適切に伐採された木材である場合に限られます。残念ながら、現在市場に流通している木材には、必ずしもサステイナブルな資源とみなすことができないものも混ざっている可能性があります。例えば、保護地など伐採が禁止されている森林から違法に伐採された木材であれば、その木材を使用するべきではない、そのような木材が市場に混入するのを防止するべき、ましては、そのような木材をサステイナブルな資源として販売することには問題がある、と多くの人が考えるのではないでしょうか。
しかし、現実的には、そのような違法に伐採された木材と、本当に持続可能に管理された木材を区別することは容易ではありません。そのため、事業者は、これまで知らずに流通させてしまっていたのかもしれません。しかし、気候変動対策や生物多様性保全のために持続可能性が重要視されるようになったことで、企業には「責任ある調達」が求められており、「違法木材であるとは知らなかった」ではすまされない時代になりました。そして改正クリーンウッド法によって、木材は、日本で初めて合法性を確認することが法的に義務付けられた製品となりました。この合法性の確認のために必要なのが「デューデリジェンス」です。
株式会社竹中工務店他が運営するウェブマガジン「キノマチウェブ」では、「新時代の森林経営」に必要な木材のデューデリジェンスとは何か、その取り組みが求められるようになった社会的な背景、デューデリジェンスの制度について特集しています。
私は、連載の第2回、持続可能性が求められる資源調達の世界的な潮流から日本に求められる木材デューデリジェンスリテラシーについての解説として、「海外での木材利用と法令、デューデリジェンスの現状 消費国の違法伐採対策として国際的に求められるデューデリジェンスとは」という記事を書かせていただきました。日本では、木材の合法性確認のためのデューデリジェンスは事業者にとって新しい要求事項ですが、海外(EU、豪州、米国)ではすでに実施されています。これらの国でデューデリジェンスがどのように運用されているのかを紹介しています。
EUでは木材だけでなくパーム油、牛肉、コーヒー、カカオ、ゴム、大豆にも適用されることが決定し、合法性だけでなく森林を破壊することなく生産されていることの確認も求められることになりました。デューデリジェンスの実施が、企業の持続可能性に対する説明責任の手法として今後さらに主流化し、義務化されていくと考えられることを解説しました。ぜひご覧ください!
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「もっと知りたい世界の森林最前線」では、地球環境戦略研究機関(IGES)研究員が、森林に関わる日本の皆さんに知っていただきたい世界のニュースや論文などを紹介します。(このマガジンの詳細はこちら)。
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文責:山ノ下 麻木乃 IGES生物多様性と森林領域 ジョイント・プログラムディレクター(プロフィール)