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持久力をつける|距離と時間を乗るための5ステップ
何度も言いますが、100kmも乗れない選手が211kmのレースを走れるわけはありません。
ロングのレースに出ようと思うなら、まず距離と時間を乗れることが最低条件です。つまり、持久力をつける必要があります。
確かにレースを走る上で強度の高い練習は必ず必要です。ただ、ツールド福島や沖縄、ニセコなど長距離のレースになればなるほど重要な要素になるのが、持久力です。
とは言え、距離・時間が乗れるようになる=持久力をつけるには時間がかかります。少しずつ伸ばしていく必要があり、いくつかのステップがあると思います。
ここでは、長距離のレースで必要な、持久力を高めるための方法や工夫を、かつてツールド沖縄のチャンピオンクラスで、エースのアシストをしながら最終局面まで…残らなかった私が詳しく解説します(笑)
0. 距離と時間が乗れるとは?
そもそも、距離と時間が乗れるとは、いったいどのような状態を指すのでしょうか?
長距離、長時間自転車に乗れるということはつまり、長時間体を動かすことができる能力があるということです。この能力のことを「全身持久力」と言います。(そらみんな知ってるわい)
これは、スタミナや粘り強さといった言葉でも表現されますが、長時間体を動かし続けることができるためには、心肺機能が高くなければならず、全身持久力が高いとは、言い換えるなら「心肺持久力」が高いともいえます。(これもまあまあ知ってるっしょ)
この、心肺持久力を高めるためには、
低めの運動強度の運動を可能な限り長い時間行うこと、最大酸素摂取量の40%以上確保することが必要
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-095.html, (参照2024-02-22)
だそうです。ここまで知ってましたか?いきなり最大酸素摂取量って言われても…ねぇ。
とまあ、そんなに難しくは考えず、どれくらいの時間、強度で運動をすればいいのか、どのようにして持久力をつけることができるのか、段階を追って見ていきます。
1.まずは乗ってみることで限界がわかる
なんでも試してみるもんです。最初は。
最初から211kmなんて走れない、5〜6時間も自転車に乗れない…と決めつけず、まずは乗ってみるとよいですね。
股ズレするかもしれないし、脚が攣って動けなくなるかもしれません。体ができていないのに長時間サドルの上で過ごすと、尿道が圧迫されて痛くなり、ライド後の用足しでは激痛が走ることもありました。
そう、自分の限界を知るのは大事です。
自分の限界を知れば、そこからどうすればいいのかがわかります。限界がくる前に何をすればいいのか、限界を越えるために何に取り組むべきかが見えてきます。
先ずは、自分がどれくらいの持久力があるのかを知ることが大事です。
2.乗れる距離・時間からちょっとずつのばす
何kmだったら走れるのか、何時間だったらペダルを回し続けられるのか。それがわかれば、そこからがスタートです。自分が乗れる距離・時間をちょっとずつ延ばしていくのです。
最初から5〜6時間の練習をするのではありません。徐々に増やしていくと良いと思います。
体力はすぐにつくわけではないので、レベルに併せて、1か月単位で少しずつ練習量を増やしていくといいと思います。
私の場合は、ツールド福島211kmで勝つという目標を据えた2023年9月以降、徐々に練習量を増やしました。
9~10月は3~4時間をしっかり走れるように。10~12月は4~5時間を、年明けからは5~6時間。週末に練習時間が確保できる日は、できる限り時間を意識するようにして走りました。
…なんですが、1月は週末の出勤が重なったり、2月には調子に乗ってギックリ腰を、やってしまったり、挙げ句の果てには風邪…と、一回4時間くらいの練習量で推移しています。(まあ、こんなこともあります。3月は頑張るぞー!)
3.練習時間の確保が難しければ、分けてもよい
このように、仕事やケガ・病気に限らず家族のイベントなども含めて、練習時間を確保するのが中々難しいという人もいると思います。
また、単身であれば、時間的拘束もなく一日中自転車に乗れるという人でも、家族やパートナーがいれば、身近な人とのバランスをとりながら乗っている人がほとんどだと思います。
季節要因もありますね。この記事を書いているのは2024年2月、冬です。こうした冬場は日も短いですし、夜明けが遅い。仮に夜明け前の5時に家を出たとしても、5時間走れば10時を回ってしまいます。
あと30分、もう1時間…と時間を気にしなければ乗りたいところですが、そういうわけにもいかないのが現実だったりなかったり。
自転車が好きすぎる(または全力で応援してくれる)家族でなければ、ただ自転車に乗って遊んでいるダメ父親に映ってしまうものです。
こうした諸々のバランスを考えるなら、自転車はそこそこに切り上げて、別の何かに置き換えて運動時間を確保しつつ全身持久力を高めることも1つの方法です。
子どもと遊びながら走り回ったり、四つん這いになってアニマルウォークをしてみたり、ショッピングモールの階段を登り降りしながら腸腰筋を意識してみたり。ちょっと違った目線のトレーニングに置き換えて運動量を確保することができると思います。
実際、ロングライドの後で、成長真っ盛りの子供3人を相手に鬼ごっこだのかくれんぼだの、かなりの高負荷と言っても言い過ぎではないくらいキツいものです。
そう、トレーニングとは、自転車に乗るだけにあらず、いつでもどこでもトレーニングはできるのです。
とにかく、持久力を鍛えるという観点から、体を動かす時間をできるだけ多くするように意識することです。
4.長距離・長時間のレースを走れるようになるための乗り方
長距離・長時間、自転車に乗ると言っても、練習する時はどのように乗ってますか?
レースを走れるようになるためには、ただ乗るだけじゃなくて、工夫している点がいくつかあるので紹介します。
①脚を止めない 回し続ける
下り坂で、脚を止めてませんか?
レース以外のトレーニングでは、基本、脚は止めません。延々ペダルを回し続けることを意識します。
上りも下りも、急なカーブでペダルが地面に当たってしまう場合を除いて、可能な限り回し続けるのです。脚がいっぱいいっぱいになってもとにかく回します。
ギアが重たければ軽くします。ケイデンスで言えば最低でも90回転/毎分はキープしたいところです。
ピスト車に乗っているようなイメージ、と言った方がわかりやすいでしょうか。
細かいことで言えば、ボトルをとって水を飲むときも、補給食をポケットから出して食べる時も、です。
このような走り方をすることで、長距離・長時間しっかり走りきることができる持久力をつけることができます。
②ベース強度を保ったまま走る
長い距離・時間を乗るといっても、強度の低いサイクリングを続けてもレースを走れるようにはなりません。
(サイクリング部の出身者として)もちろんサイクリングの楽しさも知ってますが、長距離のレースで勝つことが目標なら、距離と時間を乗る段階からベースの強度も上げる必要があります。
例えばこの質問、
「上ったときの出力で平坦や下りも踏んでますか?」
と聞かれて、はいと答えられる人はどれくらいいるでしょうか?平坦でも下りでも出力を出し続けること、これが意外に難しいんです。
コースレイアウトに関係なく、長い距離、長い時間を踏み続けることがまずベースになり、その中でどれくらい高い強度の練習を入れられるかによって、レースでどれだけ耐えられるかが決まると思います。
因みにここで、前述の「低めの運動強度の運動を可能な限り長い時間行うこと、最大酸素摂取量の40%以上確保すること」についてですが、
この運動強度は以下の式に当てはめ心拍数で求められるそうです、
(220 - 年齢 - 安静時心拍数)× 0.5 + 安静時心拍数
ワタシの場合は、
(220 - 43 - 50)× 0.5 + 50 = 114
になります。
がしかしです。そう、強度的にはかなり低い値です。なぜなら、これはこの式が健康維持を目的としているから。
ロードレースに出ることやレースで勝つことと、健康維持とでは、コンセプトが全く異なります。
211kmという長丁場のレースで「勝つ」ためには、5~6時間しっかり強度を保って走り続けられるだけの力はつけておく必要があります。
じゃあ一体それってどんな強度なの?という肝心な部分ですが、
「話しながら走れるけど、話してばっかりだと辛いかな」
という強度です。わかりづらいですか笑?
でも実際のところそーなんです。脚はいっぱいになっててもわりと話ができる、みたいな。そんな強度でなんです。
最大酸素摂取量やFTPに対してどれくらいの割合になるかという数字の部分は、また機会を改めて解説しますが、まずは、一定の強度を保ったまま走り続けることを意識してみましょう。
5〜6時間ひたすらペダルを踏み続けるという、最低限の基準をクリアできなければ、レースではどう頑張っても勝てないと考えます。
5.練習会には自走で参加
1人で5〜6時間、延々と長い距離・時間を乗るのは、けっこう大変です。毎週末となると尚更で、集中力も落ちてしまいます。
ですので、ショップが企画する練習会や近場で集まっているグループがあれば、積極的に参加することをお勧めします。
練習会自体のコンセプトにもよりますが、1人で走っているよりは質の高い内容で長距離・長時間走ることができると思います。
そして、長い距離、時間を走るという点で言えば、練習会に行く時も帰る時も走ることです。
長距離のレースで勝ちたいなら、強度の高い練習会の前後もしっかり走ることで、レースにも耐えられるスタミナとパワーがつきます。
ただし。自走で遠いところから練習会に参加しているからといって千切れる言い訳にはしないこと。
練習会に参加するまでどんな走り方をするかにもよりますが、1〜2時間程度走って練習会に出たとして、そこでちぎれてしまうようでは、どのみちレースではお話になりません。
どんなに長い距離を走っても、周りの選手を全員ブッちぎれるくらいの実力をつけなければ、長距離・長時間のレースでは戦えないと思っていた方がいいと思います。
練習会である程度立ち回ることができるなら、練習会に参加するまでに強度の高いメニューを消化するなど、脚を使った状態で練習会に参加することで、より実践に近い形で長距離のレースを走れる力がついてくるでしょう。
走り続けたその先に
自転車に乗り始めて初心者ということじゃなければ、100kmくらいなら走れる、強度が高くても耐えられるという方も少なくないと思います。
ただ100kmというと、時間にして約3〜4時間ほどですが、長距離のレースでは、200kmオーバー・5〜6時間は走り続けなければいけません。レースという高い強度で200km、5〜6時間走るとなれば、それなりの準備が必要です。
レースの距離が長くなればなるほど、長い距離、時間を走る持久力の重要度が増します。
レース後半になっても力を出し続けられる力は、結局のところ走らなければ身につきません。
まずは、走ること。
走った先には、必ず見える景色があります。それを見るまでは、走り続けます。