イガラシ/五十嵐文章
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魅せてくれ、モノホンの“レトロスペクティブ”ーディストピア東京、真夏の下北沢でビレッジマンズストアとベッド・インを観る
■古風なものが割と好き8月の終わり、秋の気配を感じてもおかしくないはずのその夜はまだまだ蒸し暑くて、Tシャツを容赦なく背中に貼り付かせる汗はもう何度も空調で乾いてはまた流れを繰り返していた。 どんなに換気に気を遣っても、ほかの観客との間に今までの3倍ぐらいディスタンスが設けられていても、地下のライブハウスはいつだって蒸した。手強い盟友であるマドンナ達との闘いを半ば程終えた、真っ赤なスーツが日本一似合うそのひとは、最早愛おしさすら感じるそのじっとりとした空気に向かって、少し俯き
【7/25】かがやけみらい――Dannie May自主企画『Welcone Home!』ゲスト小林私、感想【@渋谷O-nest】
インディーズミュージシャンを応援していると、必ずと言っていい程ファンの多くが「売れてほしい、でも売れてほしくない」というような葛藤に駆られている場面に遭遇する。いわゆる「安易な売れ線になってほしくない、でも彼等の音楽は広く認められてほしい」というような批評的な目線もあるかと思うし、「まだ知られてほしくない(=遠い存在になってほしくない)、でも彼等の生活は保障されてほしい」というようなある種何様感ある(でも気持ちはわかる)身勝手なファン心理もあるかと思う。オタクやってる限り逃れ
【5/13】たとえ何処にも行けなくても――TempalayのZepp Hanedaワンマンライブに連れて行ってもらったら凄まじかった話
霧雨に靄った何もない道を友人と連れ立って歩いていくと、巨大な鉄の塊のような建物が靄の向こうに見えてくる。人影が見えなさ過ぎて怖い程だった視界の端に、人間の気配をうっすらと感じるようになった。小さなエレベータに乗り込んで上へ。煩わしい傘は早々に閉じ、吸い込まれるようにして喧騒の中に身を投じた。 アニメショップらしき店にカフェなど、きっと普段はお客で賑わい、人気が絶えないのであろう店々が軒を連ねる空港の施設は、緊急事態宣言の影響か全ての店が休業していた。照明を落とし、薄暗く黙り
【3/18】Dannie May初自主企画『Welcone Home!』感想――この光さえ見えていればどこに行ったって帰れると思った【@渋谷o-nest】
「ライブハウスでしか呼吸が出来ない、ここが俺のホーム」なんて言う人種のひと達からしてみたら甘ちゃんなのかもしれないが、筆者にとっては何処までも、ライブハウスは非日常だ。非日常だからこそ、時々、定期的に帰りたい場所でもある。 この日筆者が約1年ぶりに帰ったのは初めて行ったライブハウスで、1年前では考えられない程の大観衆を前に威風堂々振る舞う3人の前だった。 螺旋の外階段をおっかなびっくり降りた場所にあるフロアには、既に前列2列を埋めつくした観客。シモテの2列目に陣取った筆者