リストカットをするなと気軽に言わない vol.293
今日の「対話の先生塾」は、「リスカする子どもを前に、あなたならどうしますか-中学生あみの事例から考える-」というテーマで山崎尚子さん(メンタルコーチ/公認心理師)にお話しを伺いました。
リストカットというと学校現場でも、その場の辛さから逃げ出してしまいたくてついついそう言った行動に走ってしまうという子をたまに見ます。
それは、それだけを切り取ってみれば「何でそんなことをしてしまうんだ」と感じてしまいますが、その子たちからすればSOSの表れ。
今日はそんなリストカットをしてしまうような子について考えていきます。
実際の事例から考えてみる
中2の女子、きっかけは大好きな先生が離任してしまったこと。
家族構成に問題はないが、祖父母に対しては嫌悪感を抱いていた。
学校では養護の先生が対応してくれていたが、家庭では特に変化がなかったため、家庭の対応は悪化するまではなかった。
こう言った子を日々の授業を見ながら、空き時間で先生で交代をしながら見ていかなければならない。
こう言った子がいる時、みなさんならどうしますでしょうか?
実際にそう言ったこと話していると、その子なりに承認欲求があるために隠しはするけど、見て欲しいという両方の気持ちが共存しているような雰囲気を感じられます。
大切なのは、窓口は狭く、情報は広く。
その子が最も信頼できる先生や、カウンセラー、スクールソーシャルワーカーが、そのこと最も話す機会が多くなると思います。
その子は、その信頼できる方に対しては秘密にしてくれというかもしれませんが、教員側としては必ず情報共有をしてしかるべきところに情報を届けることが大事です。
現場でどのようにしていくのか
家庭環境という問題の理解、それに対して教師やカウンセラーはどう対応すべきなのか、どこまでやるべきなのか。
そもそもなぜリストカットをしてしまうのでしょうか。
多く考えられるのは、承認欲求。
リストカットは存在承認の表れです。
だから、リストカットは無視してはいけません。
承認してほしいに応えてあげなければならないのです。
その上で、自傷行為をやめさせることを目的にしてはいけません。
その子の状況理解こそが大事だからです。
そしてそれは、自分自身のこともそうなのかもしれません。
リストカットをしてしまう本人も自分のことを理解していないからこそ、リストカットをして生を実感してしまうのです。
リストカットをしてしまう子に対して、自分の記録を取るというのも一つの対策として挙げている病院の先生もいます。
小さなことから少しずつ
では、そんな子に対して私たち教員はどのように対応していけるのでしょうか。
それはやはり、ありきたりでもその子にとって居場所を作ってあげること。
例えば、あいさつ。
あいさつ一つをとっても、そのあいさつを通して存在の確認、承認をすることができます。
教員をしていると、どうしても学力という名の人間性とは離れたところを育てたり向上させたりしなくてはならないという幻想に陥ってしまいます。
でも、人間的な部分の成長は自然と学力の向上にもつながっていくのではないでしょうか。
学力を育てるよりも前に人を育てる。
私たち一人ひとりのパーソナルな関係作りが、今苦しんでリストカットに走ってしまう子を救えるのです。