劇場収入の行方・ミニシアターのリスクとは?
はじめに
ケニー・ケンヤ・ヤストミです。
日本中の映画ファンや自主制作映画のよりどころとなっている
ミニシアター。
時に劇場を助けようとクラウドファンディングなどが成立
多くの映画ファンの援助を受けているのを目にする。
この『ミニシアターを守ろう』と言う様なムーブメントについて
映画、映像文化の観点から守っていかなくては…と思う一方
少し歪な引っ掛かりを覚える点も多い。
それはまるで『守られる』かのような立場のミニシアターが
最大の映画の権利者なのではないか?
と思える点である。
つまり
劇場収入の50%を映画館が取っている事
と
ミニシアター以上に配給会社も困窮している事だ
劇場映画の回収構造
日本の劇場公開映画の多くは
「製作委員会方式」を取ることが多く
作品のビジネス・回収にまつわる権利を
各社が出資金に応じて買取る。
それらを「共同事業契約書」と言う書面にまとめて押印する。
※但し、私は製作委員会方式を推奨している訳ではなく、あくまで多くの人が使用している代表例として挙げさせていただきます。
劇場映画を構成する6つの権利
ここで対象となる代表的な権利を6つを紹介する
①劇場配給権
製作委員会で作った『作品』を劇場公開に適す媒体に複製し
日本国内の通常の商業用劇場および非劇場に頒布し、上映する一切の権利
②ビデオグラム化権
日本国内においてビデオグラム(ビデオカセット、ビデオディスク、DVD、ブルーレイを含む一切の録音録画再生媒体、そのほか将来技術開発される録音録画再生媒体を含む)として複製し、発売し頒布(販売、レンタル、ビデオグラムによる業務上映しようを含む)する権利
また当該権利を指定の第三者に許諾する権利
③テレビ放送権
日本国内において地上波放送、衛星放送、有線放送による無料または有料(ペイパービュー放送を含む)による放送を放送事業者などに許諾する権利。
また当該権利を指定の第三者に許諾する権利
※ビデオオンデマンド放送は含まれない
④自動公衆送信権
通信回線(回線が有線・無線を問わず)などを利用し『作品』を自動公衆送信(送信可能化を含む)により、配信(セットトップボックス等を介したビデオ・オン・デマンド配信を含む)する権利、または当該権利を指定の第三者に許諾する権利。
⑤マーチャンダイジング権
日本国内において、本映画を題材としたビデオグラムとは別の商品(書籍化、ゲーム化などを含む)を企画、製作、販売を行う権利
⑥海外販売権
日本を除く全世界に於いて①~⑤を行使する権利
また当該権利を指定の第三者に許諾する権利
大雑把ではあるが、6つの権利を様々な会社が
自社の権利として買い取る。
どんな会社が6つの権利を買うのか?
では一つの架空の劇場映画を元にどんな会社が権利を取得していくのか
想像したいと思う。
※また分かりやすさの為に既存のメディアや社名を使用するが
そこに悪意はないことはご理解いただきたい。
それでは架空の作品は
『スタジオジブリの新作』だとします。
スタジオジブリ作品と言えば
TOHOシネマズで大規模劇場公開され
日本テレビの金曜ロードショーで多数回放送され
海外ではNetflixで観れることは知られています。
ジブリのキャラクターはフィギュア化などのマーチャンダイジングにも期待されます、過去にバンダイでプラモデルも出しています。
ジブリはディズニーと提携しておりビデオはウォルトディズニージャパンが販売元となっている。
また海外劇場公開に関する権利もウォルトディズニーが保有しています。
①劇場配給権 →東宝
②ビデオグラム化権 →ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
③テレビ放送権 →日本テレビ放送網株式会社
④自動公衆送信権 →Netflix
⑤マーチャンダイジング権 →バンダイ
⑥海外販売権 →ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
上に述べた情報などから大雑把ながら
このよう会社が権利に関わりそうだなと見えてきます。
皆さん、よく見る会社ですよね?
まず私がここで述べたいのは
映画ビジネスにおいて劇場に作品をかける権利の為に
様々な会社が出資している
という事です。
例えば、
東宝はTOHOシネマズと言う多数の劇場に
良い作品を配給するために
・出資し、
・東宝にて作品を製作し
・TOHOシネマズに配給する
リスクを払い権利を得ているわけです。
ミニシアターのリスクとは?
ミニシアターのリスクは?
と思う訳です。
まずこんな想像をしてみてほしいです。
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制作費1000万円の映画があります。
貴方は500万円出資。
A社は250万円出資。
B社は250万円出資。
ミニシアターで上映が決まり
観客動員が上手くいき
1週間の50席が完売となりました。
1800円×50席×7日間=630000円
しかし
製作委員会には315000円が届きます。
そうです、映画館はチケット収益の50%を取っていきます。
それ以外にも実は上映諸経費も取っていきますし
これはそこそこ上映が上手くいったケースですね。
貴方の取り分は157500円です。
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これ「え?」って思いませんか?
いやいや、それはどんな劇場でも同じでしょ?
ケニー・ケンヤは素人なんだな。
と思われるかもしれませんが
これが東宝などの様にリスク(権利)を持っていれば
「まぁ、お金出してもらっているしな~。」
と言う納得感さえあるわけです。
しかし配給権を資本で獲得しているのに
『映画館』だからと言うだけで
50%の収益を取られるのは納得感が低いのではないでしょうか?
時にSNSなどでもミニシアターの関係者方々が
大手配給会社の作品が自分たちの劇場に届くのに時間がかかる
などの発言も見たりしますが
感情論では理解できるけれどビジネス的な側面で考えると
当然だし、リスク払っている側の納得が得られないのではないか?
と思っています。
中小の配給会社の困窮
まず中小の配給会社は大手と違い、製作と配給を兼ねていない故に
劇場回収分を自社回収とできないので収益が大幅に低いです。
ミニシアターに関わる配給会社が困窮していると私は思っています。
また私自身、それを聞き及びましたが
・一番お客さんと近い劇場だし市民権得ているから言いづらい
・一次回収のお金は劇場に届く、今後も付き合うからなんも言えない
と言う話も聞きます。
また中小の配給会社も作品によってはリスクを払いますが。
そこに50%の壁が生まれてきます。
更に配給会社を介さず、直接ミニシアターに作品を持ち込む自主配給も増えて苦しめています。
これによって配給会社は近年、劇場などの既存システムに限らず
直販できる映像作品の新しいモデルを模索している動きがあります。
ミニシアターはリスクとは?②
最後に改めて書きたいのが
ミニシアターとは本当に『守られる』立場なのだろうか?
勿論、経営が上手くいかないことは時代の波もあり
苦しさもあると思う。
しかしミニシアターはやはり一定のプラットフォーマーではないだろうか?
また、もしも私の聞き及んだ
直販できる映像作品の新たなモデルが進んでしまった場合
劇場と配給の乖離は広がり、ミニシアターの存続にも影響を与えるのではないだろうか?
映画、映像文化が多様性によって変化することは必須だけれど
映画文化の最たる点が失われかねないのではないか?
と私は私なりに危惧しながら
新しいモデルを模索せざるを得ない。
ケニー・ケンヤ・ヤストミ