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くだらない超ショートショート

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#小説

【短編小説】【特集】 自殺依存症 --彼らはなぜ「死」に依存するのか--

【短編小説】【特集】 自殺依存症 --彼らはなぜ「死」に依存するのか--

【特集】自殺依存症 --彼らはなぜ「死」に依存するのか--

「なんでって、それは気持ちが良いからよ」

彼女は我々の質問に気だるげに回答した。

「恐怖みたいなものはないのですか?私だったら、躊躇してしまうような気がするけれど」

「もう、何回もやってるから、あまりそういうのはないのかな。多分」

彼女は首を傾げ、眉間に皺を寄せながら、答えた。

「ああ、でもただ、別の意味での恐怖というものはあ

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ある人は死んだ【超ショートショート】

ある人は死んだ【超ショートショート】

ある人は死んだ。人権を取り戻す運動の中で、その重要性を訴えるために、自らに火を付け、業火の中で焼死した。

ある人は死んだ。自分の子を殺した、ある商品の危険性を訴えるため、その商品を使用し、命を落とした。

ある人は死んだ。不幸な事故に合い、突然この世を去ってしまった恋人を追って、大量の睡眠薬を飲んで中毒死した。

ある人は死んだ。自らが愛したアイドルが急性アルコール中毒により死に、悲しみに打ちひ

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世代就活

世代就活

就活を初めてから、もう半月がたった。
これまで、多くの企業説明会に参加し、将来のことを考え奔走してきた。
そして、今日3月16日は第一志望の会社の一次面接、僕は現在、面接の待合室のソファに腰掛けている。
心の中で、何度も考えてきた言葉を反芻する。大丈夫だと言い聞かせ、心を落ち着かせる。
ノックの音がなった。
どうやら僕の番が来たようだ。採用担当のお姉さんに面接室の前の廊下に案内される。
「ご自分の

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インビジブルマン

インビジブルマン

彼には何もなかったのだ、故に彼を認知するものはなかった。
名前はあった、しかし、誰もが忘れてしまった。
彼には趣味がなかった。そのため、趣味を共有する友はなかった。彼には今までは職があった。営業の職である。しかし、大した営業成績を残せず、その職も不況の波の中で消えていった。
彼には今や何もない。名も、名乗らねば意味をなさない。
職がなくなってから数ヶ月後に追い出されたアパートの名はなつみ荘といった

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