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ストーリーテリング伝わる不思議 足折れつばめ

私たちが行っているストーリーテリングは、昔話や創作のお話を覚えて語ることです。
テキストを覚えるのですから、正確に覚えると、誰がやっても同じお話になります、なるはずです。

でも、不思議と、語る人、語るとき、聞いている人、によってお話が違ってくるのですよね。

先日、勉強会である方が「足折れつばめ」を語られました。
話のあらすじは次の通りです。

貧乏なおじいさんが足が折れて飛べないつばめを助けたら、つばめが恩返しにすいかの種をくれた。その種を蒔いて育てると大きなすいかができて、中から大工や木こりが出てきて、いい家を建ててくれて米俵やみそ樽しょうゆ樽も持ってきてくれて、おじいさんは何不自由なく暮らせるようになった。
 
となりの金持ちじいさんがまねをしようとつばめに石をぶつけて足を折って看病したが、もらったすいかの中からネズミが出てきて家中食い荒らされてしまった

こぐま社/子どもに語る日本の昔話③ 稲田和子・筒井悦子/著 「足折れつばめ」よりあらすじ

つばめがやってくる季節になると聞きたくなるお話です。

日本の昔話でよくある「となりのじいさん」型で、真似をするといいことにはなりません。

ここで出てくる「大工ときこり」
もとのお話の中から抜粋すると、彼らはこんなふうにやってきます。

すると中の(すいかの)種がみんな大工や木こりになってどっととびだし、何十人もずらすらっとならんだ。みんなははっぴを着て、鉢巻をしめている。

子ともに語る日本の昔話③ 「足折れつばめ」より

あれ、いつもは小人のようなかわいい大工と木こりがすいかから出てきてトンチンカンチン健気に家を建てるように感じるのに、今日はいなせな男衆がきりりと鉢巻しめた姿が見える。

ストーリーテリングは耳から聞く世界。
文字も絵もない静かな空間で、聞いた人がイメージを膨らませる。

お話のあとで語り手の方が言ってました。
「前は小人の大工のイメージだったけど、立派な家を建てるのだから立派な職人さんだと思えて、今回は粋な男衆イメージで語ったのよ」

不思議、伝わっています。
立派な体格の若衆が、鉢巻をキリリと巻いてずらりと並んでます。

言葉は本に書かれている通り、以前と全く変わっていない。

けれど、語り手のイメージが聞き手にちゃんと伝わっている。

ストーリーテリングは不思議な世界。

言葉、言葉が示す物事についてイメージしたことが伝わってしまう。
まさに「自分の中を通り抜けてきた言葉」が相手に伝わる。

お話を語り始めて恐ろしく思ったことは、自分の中が出てしまうこと。
自分の言葉を汚してしまうと、
自分の言葉が痩せてしまうと、
それはなぜか聞き手に伝わってしまう。

それを知って、自分と、自分の言葉を大事にしようと決めました。




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