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Photo by
ピーテル・パウル・ルーベンス / メトロポリタン美術館
秘食甘美。スプーンなしで食すチョコムースの味。
僕は今朝、
チョコムースを食べた。
隠れて食べた。
Nestleのチョコムースは濃厚だ。
プラスチックの容器に入っている。
下がチョコムース、
上がホイップクリームの
2層構造だ。
朝4時。
僕は慎重に冷蔵庫を開ける。
お目当てのチョコムースを手に取る。
静かに階段を上がる。
木の階段は軋む。
ソファに腰を下ろす。
アルミの蓋を開ける。
ホイップクリームが僕を出迎える。
…スプーンがない。
仕方がないので
僕はアルミの蓋で
スプーンを作った。
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チョコムースを口に運ぶ。
アルミ製のスプーンの角があたる。
痛い、おいしい…痛い
僕は指で食べることにした。
チョコムースを指ですくって食べた。
食べ終わった僕は
このことをすぐにあの子に話した。
あの子は言った。
私の指を貸してあげようか?
甘美。
チョコムースとあの子の指。
次は一緒に食べよう。
スプーンなしで。
追記
僕はあの子に言った。
君の目を見ながら、
君の指でムースを食べるね。
あの子は言った。
痛くしないでね!
痛くしないよ。
歯があたらないように
優しくチョコムースを食べるつもりだよ。