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髪色で冒険した日

1、髪質へのコンプレックス

私が初めて髪に色を入れたのは、遠い昔、確か20歳頃だった。
私は幼少期から、自分の太くて硬い髪が嫌いで、それに加えて15歳くらいから癖毛にもなってしまい、雨の日は、ほぐしかけたインスタントラーメンが如くボワボワになってしまうのも、とても嫌だった。
「この髪を、なんとか軽く見せられないだろうか?」と考えたのが、髪色を明るくすることだった。
しかし、いかにも…と言うのは抵抗があったので、自然に見えるヘアマニキュアをすることにした。

2、美容院でヘアマニキュアを

私は早速美容院に行き、ヘアマニキュアをお願いした。
色が複数あり選べたので、自然に明るく見えそうなオレンジを選択した。
施術をしていただき鏡を見ると、うっすらとオレンジ色に輝く髪が!
「いかにも染めました!」というのではなく、角度によってキラキラと自然なオレンジ色に見えるのが、太陽のように美しくて。
「まぁ、綺麗!」とすっかり嬉しくなって家に帰った私だった。
次の日もその次の日も、外で窓や鏡に映るお日様のようなキラキラした髪に、我ながらウットリ。

3、仰天!

すっかりヘアマニキュアが気に入った私だが、ヘアマニキュアは永久的ではないので、当然色が少しずつ落ちていく。
私は再度、ヘアマニキュアをしてもらうことにした。
その日は何故か違う美容院に行ってみようと思い、初めて行く美容院でヘアマニキュアをしてもらうことにした。
今回もオレンジにしてもらおうとお願いしたのだが「オレンジは無いんです」と美容師さんに言われ「似たような色だよね」と思い、赤を入れてもらった。
「赤ならオレンジよりも落ち着いて、ちょっと大人っぽいかも?!」と、今回も楽しみにしながら仕上がりを待っていた。
施術が終わり「いかがですか?」と聞かれ、ワクワクしながら鏡を見ると…そこにはカキ氷にかけた苺シロップのような色をした頭の私がいた。
「えっ、何コレ?! 前はもっと自然な感じだったよね?!」と仰天したが、「あっ、い、いいですね」と引きつった笑顔で答える私。
「やってもらっちゃったし、店内で明るく見えるだけだろう」と自分にも言い聞かせ、支払いをして店を後にした。
(今考えてみると、ヘアマニキュアって黒髪にはあまり色が入らないと聞くが、何故あんなに黒髪にも発色が良かったのかは謎)
「実際はきっと、落ち着いた色のはず!」そう思って家に着いてから鏡を見たが、願い虚しく私の頭は相変わらず苺のカキ氷。
今の時代は、髪を染めているのは全然珍しくないけれど、当時は髪を染めている人は周りで殆どおらず、ましてやこんな派手な色にしている人は私の周りでは皆無だった。
なので、鏡に写る当時の自分は怪しげな人にしか見えなかった。
悩んだ末、何とかしてもらおうと、私はその日のうちにまた猛ダッシュで美容院に向かったのである。

4、なんか良いかも?!

美容師さんに「すみません、やっぱり派手過ぎるので、もう少し暗めの色にしていただけますか?」とお願いすると「青を乗せると落ち着きますよ」とのことだったので、上から青いヘアマニキュアで染めてもらった。
仕上がりを見ると、落ち着いた小豆色になっていた。
苺のカキ氷から宇治金時の金時に変わったことで、とても安心した。
周りからも好評で、アメリカに行った時も現地の人達から「綺麗な髪」と言われて嬉しかった。
これがきっかけで会話が弾んだのも、私にとって楽しい経験である。

5、髪の色で気持ちも変わる

あの時の自分にとって髪の色を変えるというのは、ちょっとした冒険だったと思う。
失敗もあったけれど、結果として良かったし。
髪の色を変えると、なんだか心の色まで変わるのかもと思った。
コンプレックスだらけだった髪も、色を少し明るくするだけで軽く見え、心も明るく軽くなった気がしたから。
今の時代は、落ち着いた色の他にも、赤、青、紫、ピンク、緑、黄色、ゴールド、シルバーなど、それぞれ好きな色に染めている人達が増えて、髪色だけでも街の中がお花が咲いたように華やかに見える。
もちろん学校や職場の規則があるので、誰でも好きな色の髪に出来るわけではないけれど、髪色の持つ力って面白いなぁと思うのである。

#髪を染めた日

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