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そういえば、かつてキラキラJCだった



レピピのショッパーはイケてるJCのアイコン

当時、中学2年生だった私は、月刊ファッション誌「ニコラ」の愛読者だった。
全てのページがキラキラしていて、眩しくて、誇張ではなく、本当に擦り切れるまで読み込んでいたし、風呂にまで持ち込むから、もはや紙面はしなしなのふにゃふにゃになっていた。

今をときめく藤田ニコルちゃんや、飯豊まりえちゃん、池田エライザちゃんなどなど、錚々たるメンツもニコラ出身者なのである。
※自分が読んでいた時代のニコラモデルがどんどん結婚していくのは、友達が結婚するレベルに嬉しく、感慨深いものがあります。

特に2012年頃の古畑星夏ちゃんの人気たるや、相当なものだった。
星夏ちゃんはレピピアルマリオ(通称「レピピ」)のイメージモデル(イメモ)を務めていたが、レピピのイメモを務めるのは、人気モデルの中でも更に大人気であることの証で、出世頭の存在なんだということは、中学生の私でも理解できた。

当時の私はもちろんレピピ一択。
事あるごとに、親にレピピの洋服をせびり、「学年順位あがったらレピピ買って!」
「クリスマスは限定ショッパーになるから絶対レピピ欲しい!」などなど、
何が何でもレピピをせびるガールだった。
そして、服以外にも私の日常にレピピは侵食していた。
キャンパスノートの表紙には、レピクマ(レピピの公式キャラクター)の絵をでかでかと描き、3ヶ月に1回はレピピのおニューの筆箱に変え、中にはパンパンの文房具を詰めていた。

青地に星がちりばめられている、あのレピピのショッパーを持てばオシャレの証。
期間限定のショッパーを持っていたら羨望の眼差し。
中学生だと、制服を着る機会の方が多く、同級生たちに私服を見せられないが、私は、机の横のフックに当然レピピのショッパーをぶら下げて、通学時の自転車の前カゴにもレピピのショッパーをぶち込んで、レピピアピールに必死だった。
そして、普段関わることの出来ない一軍女子から、「レピピ買ってるのー?ショッパーかわいいね♡」と話しかけられると、自分の存在が認められたような気がするのであった。

そんな私の将来の夢は言わずもがなレピピ店員。
愛してやまないレピピの店員になれるなんて、天職だと思っていた。
しかしあるとき、母親から「ショップ店員は大学生でもなれるから、まずはアルバイトで試してみようね」と言われることになる。
この時の私は正社員とバイトの区別も曖昧なので、バイト?まあなんでもいいけど。レピピで働けるなら。くらいの感覚でいた。

レピピが遠のいた

時は進んで中学3年生。
私は受験勉強に追われていた。
10年経った今でも、真夏のうだるような暑さの中、自転車をかっ飛ばして塾に向かった夏期講習の地獄の日々を、昨日の事のように思い返せる。
そして冬になる頃には、23時まで塾に缶缶詰である。ブラック甚だしい。
生きがいだったレピピの最新の服を見る余裕もなく、ニコラの最新号も一読したらすぐに教科書を開いて勉強を開始するなど、忙しない日々を送っていた。

晴れて高校1年生になると、私はニコラを卒業し、「seventeen」を読み始めることとなる。
はじめてseventeenを購入してページを開いた時の感覚は今でも覚えている。
大人の階段を上っている感覚がくすぐったく、でも嬉しかった。
しかし、seventeenはニコラとは違い、毎月の発売日を心待ちにするほど熱狂できなかった。
それは、コンテンツの違いなのか、それとも雑誌の発売日など忘れ去るくらい、充実した高校生活の日々を過ごしていたからなのか。
理由はもはや覚えていないけど、私の趣味の大部分を占めていて、生きがいですらあったファッション誌は、私の日常から徐々にフェードアウトしていった。
そして、あんなに欲しくてたまらなかったレピピの洋服も、高校生が着るブランドじゃないからと、一切着ることはなくなった。

10年後、26歳になった私。

今、私はレピピの店員ではない。
ファッション誌の編集者にもなれなかった。
アパレル業界と、何のかかわりもない、いたって普通のOLだ。
中学生の私が一切想像していなかった私がいる。

ネオンカラーの一張羅を身にまとい、
慣れないメイクを頑張っていた中学2年生の私に、今の私の姿を見せたら、きっと驚くに違いない。
なんて感想を持たれるだろう?
「おばさん……」かもしれない。
ネオンカラーの服なんて、今や一つも持っていないし、グレー・黒・白・ネイビー、この色合いの服でクローゼットは埋まっているのだ。
特にこの寒い時期は、生足なんてもってのほか、三首隠すのに必死で。
黒タイツにロングスカート、黒のダウンをしっかり上までジップし、完全防寒対策。しまいにはバッグも真っ黒。
鏡に映った自分が黒一色で笑ってしまった。
しかも、スタイリッシュな黒ではなく、もさもさとした黒なのだから。
ネオンカラーのまぶしい少女に、説教してもらいたい。

ああ、いつの間に私はこんなにつまらない人間になってしまんだろう。
熱中できる趣味の一つも持っていない、私のモットーは、浮かない・害を与えない。
地味な色だけを身にまとう、つまらない大人になってしまったのだ。

今日もクローゼットを開く。
一面に見慣れたベーシックカラーが並んでいる。
ふと、奥底にしまい込んでいた淡いピンクのプリーツスカートを手に取った。
気分が上がる音がした。
今日はこれを着て行こう。

ネオンカラーの少女は、嬉しそうに微笑みかけてるに違いない。

#想像していなかった未来

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