(1)家出は、虐待からの自主避難

家出とは何か?
Wikipediaでは、以下のように書かれています。

主に子供や若者が両親や養育者に断りなく、その家を出ていき、または出ていったまま戻らないことをいう。一時的な無断外出、進学、就職、転勤などで実家を出ていく場合はこれに当たらない。成人の場合でも使用される(例:妻の家出、夫の家出)。

大まかにいえば、上記のとおりと言えますが、wikipediaにある説明には時代遅れの認識や誤った事実も記されています。
たとえば、こんな部分。

警察庁生活安全局長によって1999年(平成11年)10月25日に出された「不良行為少年の補導について」では不良行為に該当する「家出」を「正当な理由がなく、生活の本拠を離れ、帰宅しない行為」としている。このような家出少年はヤクザに引っかかり風俗業界に引きずり込まれたり、ネット自殺などの誘惑が懸念される場合も少なくない。

上記の不審点を正すと、2点あります。
●「正当な理由がなく、生活の本拠を離れ、帰宅しない行為」と判断しているのは警察官であって、家出した当事者ではありません。
「正当な理由がなく、生活の本拠を離れている」なら、夢遊病者か、あてもなく家を出た旅人であり、家出人とは呼びにくいでしょう。
●ヤクザに引っかかり風俗業界に引きずり込まれたり、ネット自殺などの誘惑が懸念される場合も少なくない、という記述も、今日では事実とはまったく異なります。

以下、解説します。
警察が発表している統計を見てみると、平成26年(2014年)の未成年の家出人の総数は、969+17,763=1万8732人。

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犯罪の被害にあった未成年は390人。390人÷1万8732人=0.02(約2%)
家出した後に犯罪の被害に遭う未成年は100人に2人しかおらず、犯罪の被害に遭った少年の中でもたった6.2%なので、「家出すると犯罪の被害に遭う恐れが高い」とする主張する言説は完全に間違っています。

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危険な目にあった事例をいくら引用しても、それらはレアケースなのです。
ほとんどの家出人は、犯罪の被害とは無縁。これを覚えておきましょう。

(※なお、最新データはここにあります)

家出は、実の父親から毎日のようにレイプされている中学生や、母親から暴行されている高校生にとって、家にい続けるよりはるかに安全な選択です。

つまり、家出とは、被虐待児にとって虐待からの自主避難なのです。

これを知ると、取材前から家出を不良行為のように決めつけて問題視したがるテレビや新聞などの報道が、あらかじめ危険な家出のケースだけを取材し、それによって視聴者や読者の注目を集めたい意図で作られてきたことにも思い当たるでしょうし、そうした報道によって家出に良くない印象をもってしまっていたと悟る方もいるでしょう。

『完全家出マニュアル』の著者であり、「プチ家出」の名付け親である僕のところには、10年以上前まで毎年家出人の数が警察から発表される7月には、毎年のようにテレビ記者からコメントのオファーがありました。

しかし、彼らが取材する前の企画段階から危険なケースばかりを取材したがるので、家出人全体のイメージが不当に悪くなるばかりだと感じ、10年以上前に断ることにしたのです。

また、家出=危険というイメージは、家出した子どもを捜索してほしいと望んでいる家族からの依頼を増やしたい探偵にとって都合の良いものであるため、多くの探偵業者のホームページには、レアケースの危険性を声高に伝える文章が並んでいます。こうした広告の文章を鵜呑みにしてはいけません。

さらに言えば、刑事事件の捜査を主な業務とする警察では、昔は「捜索願い」と呼ばれていた行方不明届を受理しても、犯罪に関わるか、自殺願望がある家出人(=特異家出人)でない場合、まず捜索しません。なので、wikipediaで「手配(家出人手配)、公開捜査などの措置が執られる」と記述されていても、それ自体がレアケースと考えていいでしょう。

もちろん、警察に行方不明届を出さない親も少なからずいるため、警察が把握していない家出人もいますが、福祉被害で保護された未成年の数は変わりませんから、家出人の総数が増えれば増えるほど、家出の危険性は0.1%よりさらに下がることになります。

以上をふまえて、家出とは何かを考えると、単に家族に教えずに家を出るというものではなく、危険な境遇に飛び込んでいく自殺願望のようなものでもなく、端的に「家ではない他の場所で暮らすことを誰の許可も求めず自分で決めること」ということになります。

旅人になったり、死に場所を求めてさまよったり、短期間だけ外にいて家に帰ることをくり返す「プチ家出」と、現実の家出はまるで違うのです。そこで、『完全家出マニュアル』では、「完全家出」として以下の3点を満たすものだと定義しました。

★定住先を得ること

アパートでもシェアハウスでも友人宅でも、今日も明日もあさっても数ヶ月後も同じ場所で寝食できることは、生活の安定を意味します。その安定によって自分の人生に安心を与えられる生活環境を得ることを目指していることが、家出の第一条件です。

★定職を得ること

アルバイトでも正社員でも、あるいは起業でも、生活保護でも、毎月決まった収入を自分で確保することによって生活を成り立たせることは、家族にも誰にも自分の自由を奪われない保証です。生活を続けられるだけのお金を自分で試算・調達し、誰かの世話にならないと生きられない不自由さから自分を解放することが、家出の第二条件です。

★家出後の目的を得ること

定住先を得て、定職を得た後は、家にいたらできなかったことをふまえ、自分自身の人生を自由に設計するのが、家出の魅力であり、醍醐味です。誰にも邪魔されず、自分自身を活かす人生の目的を自分で考え、その目的を果たそうと動き出すことが家出の第三条件。この3点を満たすことこそ「自立」(完全家出)であり、自立することによって、家にいた時に奪われてしまった自尊心を取り戻すことにもつながるはずです。

※今後も少しずつ更新していきますが、公開範囲をせばめる場合もありますので、ご購入はお早めに。

https://con-isshow.blogspot.com/2020/02/1999iede-hanbai.html

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http://letters-to-parents.blogspot.com/


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