機械願望者
機械のように描き、機械のように眠る。
死んだひとを想うには早過ぎる。
おれは冷たい部屋の中、巨大なものを描きたいと思った。
圧倒的なもの、量は質を超える。異形の祈りだ。宇宙人の信仰だ。
それをするにあたっておれは何を買って何を準備すればいいのか。
ノートやペンはもう買ってある。
酒、煙草の類いは逆に歩みを遅くさせる。
だから特に何も買わない。
必要なのは徹底して機械になれるかどうかなんだ。
旧共産圏の巨大な建物。シンボルのようだ。
あれを目指して作りたい。
朝に飲むコーヒーの話を100回描いてもいい。
時間の圧倒的な流れを描いてもいい。
そもそもおれは漫画家じゃなくてもいい。
どんな形式でもいいと思うことで、こだわりを捨てる。
頭から自然に出てくることが正しくて、物語を描く時はそれをパズルのように組み合わせる。
ナマの人間であろうとすることこそナマ感を減少させる。自分は何者でもなく、主役不在の世の中で生きていると実感するべきなんだ。
機械には筋肉も肌もない、肉体から発されるにおいや熱は必要ないからだ。
ただ、パーツのひとつひとつに思考回路が管のように張り巡らされていて時々光る。
おれはおれを棄てちまう。
これはかなしいことじゃない。
読んだもの、観たもの、聴いたものは染み込んで永遠に取れない。
だからおれがおれを棄てても感覚神経が煙のなか輝きながら新しいものを作ろうとする。
人間。それはシミの付いた身体。空洞で、痛くて、かなしみを悦ぶ感性、ひとりで爪を切れない愛おしさ。
おれは機械になってそれを描く。
誰の感情も操らない。ただ、思ったことを描いて、終わりたくなったらおわる。
機械だ。機械になりたいんだ。
してもらえるとすごく嬉しいです!映画や本を読んで漫画の肥やしにします。