自営型テレワークという働き方は福祉支援の希望となり得るのか?
障害者支援や難病支援などを行なっている方から、「支援を行なっている方にテレワークをさせたい」「パソコンが得意な入居者がいるができる仕事があるか」という質問を受けることが増えてきています。
それだけテレワークという仕事が広まってきたんだな、と言う喜びはありますが、正確に伝える難しさも感じています。
可能性としてはとても大きいと考えていて、わたし自身も希望をもっています。ただ、そう簡単でもない、というのが答えです。
「自営型テレワーク」という働き方で救われる人ももちろんいます。自律した働き方ができる人に限定されてしまうため、より多くの人の解決策としたいのであれば、支援者自身が知識と経験を得て、事業として受注や組織運営する必要があると感じています。
自営型テレワークってどんな可能性をもった働き方なのか?内職・フリーランスと比べてみよう
自営型テレワーカーは「新しい働き方」とされることも多いですが、似た形は昔からありました。
例えば内職は事業者の指示の元で家で働く部分に関しては非常に似通っています。また、デザイナーなどのクリエイティブな職業は昔から時間や場所にとらわれないと言う意味ではとても似ています。
内職との違い〜物や場所からの解放
厳密に言えば、内職は家内労働法のもとでの働き方で、個人事業主で労働基準法が当てはまらない自営型テレワークとは異なる働き方です。ただ自営型テレワークを「パソコンで行う内職」というイメージを持っている方も少なくありません。
内職はDMの宛名書きなど、物に手を加える作業が大半です。なので作業するにはある程度手を動かすことができることが条件になります。
その点、自営型テレワークは可能性の広がりを持っています。
手が動かなくても口や足でペンを操作できれば、仕事を行うことが可能となります。ペン以外にもパソコンやタブレットを動かすためのツールを工夫することで、タブレットやパソコンを扱える人は劇的に増えるでしょう。またデータでのやり取りが中心のため、物を保管する必要もなくなり限られた面積でも仕事ができ、場所に通う必要がないという点で「場所」から解放されます。
内職との違い(メリット)
手が動かなくても、タブレットを操作する工夫をすることで仕事することができる
物を保管する必要がないので、限られた広さで仕事ができる
物を取りに行ったり、物がある場所まで通う必要がない
内職は「簡単な仕事」が多いイメージがありますが、一方、自営型テレワークは簡単な仕事から、専門的な仕事まで幅広いため、自分でどの仕事を行うのか選択する必要があります。
またパソコンやタブレットの基礎的な使い方を習得している必要もあります。それほど難しい技術は必要としませんが、壁にぶち当たった時に相談できる場所がないと乗り越えるのが難しいところでもあるかもしれません。
内職との違い(デメリット)
自分で仕事を選択する必要がある
パソコンやタブレット、インターネットなどの基礎的な使い方を習得する必要がある
フリーランスとの違い〜仕事の受注・学習コスト・コミュニケーションからの解放
自営型テレワーカーはフリーランス(個人事業主)の中の一部を指す言葉ですので、正確には「フリーランスとの違い」ではおかしいのですが、あえて以前から存在する独立した「起業型のフリーランス」と「自営型テレワーカー」を分けてご説明します。
自営型テレワーカーという働き方が現れるまでは、フリーランスになるためには、「学校などで勉強してスキルを身につけ就職」、「就職した先で実績やつながりを作り独立」、「営業するなどして仕事を獲得」するのが一般的でした。
インターネットの普及や、事業者によるwebサービス、プラットフォームの出現により、「家で働きたい」と思ったらすぐに行えるようになり、その形が変化しています。
自営型テレワーカーはスクールなどに通って勉強する人は少なく、ほとんどの人が簡単な仕事を行いながらスキルを身につけていく、という方法をとります。身につけなければならないリテラシーやスキルのほとんどはインターネットで取得できるようになりました。その分、学校に通うコストや時間から解放され、経済的なハードルや、子育て中など時間がないという方のハードルが低くなります。
またクラウドソーシングなどのプラットフォームを使うことで、実際の仕事をやってみることで、自分に向いていることを探すのも容易になりました。小さな仕事がたくさん掲載されているので、いろんな職業を試してみることができるのはクラウドソーシングの一つの魅力でもあると思います。
実際、わたしたち自営型テレワーカーは、ライティングを試したけれどあまり向いておらず、デザインに転向というようなことを非常に短期間で行っています。実際にやってみて選択できることは自分が納得できる働き方につながりやすいと考えています。
また、クラウドソーシングなどのプラットフォームを使うことで、実績が見える化します。実績数や評価など数値でわかりやすく実績を積むことができるので、それまでに経験がない人でも簡単な仕事から始めて継続することで信頼を見える化することができます。コネクションを作らなくても仕事を受注することが可能になります。
クラウドソーシングを開いたその瞬間、何千件、何万件という仕事と出会うことができます。フリーランスでは、営業やコミュニケーションも自分の仕事の1つとして、行わなければなりません。営業が苦手でフリーランスを断念する方も多いと思います。その点、クラウドソーシングなどのプラットフォームを利用することで営業を行う必要がなく、本来の自分の得意なスキルに特化できるメリットがあります。
インターネットでのやりとりは、メールやチャットなどのテキスト、オンラインミーティングツールのような音声・映像でのやりとりなど、対面よりも種類があります。特にクラウドソーシングの場合、メール形式でのやり取りがメインなので、対人関係に不安があったり、瞬時に対応することが苦手であっても、確認しながら進めることができます。
フリーランスとの違い
学校に通うコストや時間をかけなくてもよい
いろんな仕事を試して自分に合う仕事を見つけられる
信頼の見える化により、つながりを作らなくても仕事が可能
営業を行う必要がない
テキストでのやりとり中心なので確認しながら時間をかけてコミュニケーションを取れる
自由になる、そのぶん自律が求められる
内職とフリーランスを比べてわかることは、自営型テレワーカーが生まれる前の時代と比べて、経済的なこと、時間、場所、選択肢、コミュニケーション、動作によって制限されてきた人でも、働き方をつくることができる点で、可能性が広がっていると言えると思います。
ただし、自由になった分、自分で考え決める部分は増えています。
自営型テレワーカーにチャレンジできるかどうかは、この「自分で考え決められるか」が判断基準です。
新しいことを行うのが怖い、自信がない
自分で判断するのが苦手、人を頼ってしまう
独学することが苦手
自分で振り返り、目標設定することができない
継続することができない
という状態は、自営型テレワーカーとして進んでいくための支援はかなりの時間がかかります。
組織で支援体制を作り、解決する
それらを解決するのが、チーム・組織として支援体制を作ることです。
学習やモチベーション向上、振り返りや目標設定の機会をもうけることによって、一人で進めなければならないという状況をクリアにできます。
例えば、「新しいことを行うのが怖い、自信がない」という人たちには、「安心・安全の場で小さな失敗・成功を繰り返す」場が必要ですので、そういった場を用意する、といった具合です。
その方の特性や嗜好、価値観などで向き不向きもあり、選択する職業が異なるので、学ぶ場を多様に作ることは大変なことだと思います。現実的ではないかもしれません。
支援者が事業として考えることで可能性はもっと広がる
自営型テレワーカーを支援する仕組みは非常に多様な場が必要であり難しいと考えるなら、事業を起こすこと、商品作りをして組織として受注してくることが理想的だと考えます。
例えば、「ショッピングサイトの運用」という商品づくりを組織で行い受注してくれば、支援の仕方もシンプルになります。
わたしはそういう事業者が増えてくれることを期待しています。
まずは支援者自身がテレワークについて学び、実践すること
「何が仕事になりますかね?」と聞かれますが、事業として行うことに責任を持って答えることは難しいと感じます。自分の組織の特性を踏まえ、時代の流れを読み、ニーズを捉えて事業化・商品作りを行うしかありません。
まずは支援者がICTやパソコン、テレワークなどについて学び、実体験するしかないと考えています。1年〜2年ほど挑戦すればテレワークの全体像も見えてくるはずです。ICTを活用した働き方を支援のひとつとしたいのであれば、最低限それくらいの覚悟は必要です。
必ず未来につながると信じています
わたしは必ず多くの人の未来につながると信じて活動しています。同じビジョンをもった仲間が増えることはとても嬉しいことです。
ぜひ柔軟な働き方が必要だと思ったら、チャレンジしてくださることを心より願います。
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