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傷の話

私は絵が下手だ。
かなり下手だ。
イラストツールのフォトショップも、クリップスタジオも、SAIももっていて
数万円もするインティオスのタブレットももっているが尋常ではなく下手くそである。
むしろ書けないし、描かない。

本気で絵を書こうとすると思い出すのだ。
学生時代に『君の絵はすごいヘタ。もう書かないほうが良い』と美術の先生に言われた事を……
正直、そのときは大したショックも受けなかったし、絵なんかに興味もなかった。文章にすら興味を示す前の話である。

しかし、それが大人になり、いわゆるオタクの末席に座して創作を始め、ツイッターに入り浸るとどうだ。
素敵な絵がたくさん見ることができる、バズって評価されているイラストレーターや漫画をみることができる。
その流れにのって自分も始めてみたくなる。とっくに成人していてるが、
『何かを始めるに遅いはない』という信仰にしたがってペンタブを握る。

そのたびに頭をよぎるのだ。呪いの言葉が
『君の絵はすごいヘタ。もう書かないほうが良い』
その瞬間に心が腐る。
線の一本を、筆の一なぞりを、呪いの言葉が邪魔をする。
結果的にどんなものが出来たとしても、呪いが『駄作』のレッテルを貼り付ける。ベタベタとベタベタと。まるで悪霊を封印する御札のように。
貼られたレッテルが認識を歪めてしまう。
そして自家中毒をおこして、消去してしまうのだ。
右クリック+Dである。ゴミ箱を空にするである。

私が学生時代につけられた傷が、呪いになったまま消えないという一例である。
覚えておいてほしい。
親や、教師や、親類や、友人や、見ず知らずの他人であっても、けっして消えない傷をつけ、その一生を無自覚のまま呪ってしまう可能性を覚えていてほしい。

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