投票率を上げれば野党は勝てる! 一見それらしい謎理論 投票率upは大切だけど…
10日に投開票された参院選の投票率は52.05%.前回の参院選よりは若干改善したものの、相変わらず半数近くの有権者が棄権している状況が続いています。この点についてまず大前提として、投票率上昇は社会的に望ましいことであると筆者も考えています。投票率が低ければ、「有権者が決めたことだから有権者がその責任を負う」という民主主義の前提が崩れてしまいます。また、確実な数字(いわいる組織票)を持っている団体の影響力が不当に強くなってしまうことも大きなデメリットです。
しかし、投票率が上がれば野党が勝てるというものでもないと思うのですが…
日本の人口は約1億2500万人ですから、その中にはいろいろな考えの人がいるのでしょう。しかし、そうした考えが広く支持を集めるとなると問題になります。選挙で有権者から支持を得られなかった政党が、反省せず、「投票率が低いから負けたんだ!」と開き直る可能性があるのです。
自民党の得票に占める組織票の割合は10%強
ある政党の得票のうち組織票が占めるおおよその割合は、参院選の結果を見れは確認できます。
政党の有力な支援団体は参院選の比例に自らの「組織内候補」を立候補させます。参院比例は非拘束名簿式ですから、組織員に比例で自分の組織内候補を書かせるば、国会に送り出すことができます。(そうした団体に属していない人は政党名で投票することが多いので組織員の票だけでも当選ラインに届かせることができます)こうした組織内候補に投じられた票を数えることでおおよその組織票数を知ることができるのです。(ただし、組織内候補に投じられた非組織員の票や政党名で投じられた小規模な組織の票があるため実際の数とは若干ズレます)
さて、この方法で計算すると、自民党の組織票は198万票(千の位以下四捨五入)、自民党全体の得票に占める割合は10.8%です。これは立民の8.4%よりはやや高い数字ですが、組織票のみの自公といったつぶやきは現実とかけ離れていることが分かります。
ちなみに組織票の割合が26.6%と比較的高い国民民主党、0.0%と組織票に頼らない日本維新の会、そもそも創価学会という大きな団体を母体とする公明党と、組織票との向き合い方は各党それぞれです。
自民党逆風下でも減らない自民党票
そもそも日本史上、自民党が大負けした選挙自体が少ないのですが、唯一、明らかに負けといえる選挙が2009年の衆院選です。このときの自民党の比例得票数が1881万票、これは自民党が大勝し政権を奪還した2012年の衆院選の1662万票よりも多い水準です。(前記事でも書きましたが、自民党票を切り崩せるポテンシャルがあるのは穏健な野党、当時は(旧)日本維新の会に強い勢いがありました。)
それ以外にも衆院選2000では1694万票、衆院選2014では1765万票衆院選2017では1855万票と2009年の政権交代選挙を下回った例はいくつもあります。
逃げた従来の支持層
一般に世論調査の回答者はそもそも投票する可能性の高い人が多いとされています。実際、投票に行くかという質問ではどの調査でも軒並み9割近くの人が肯定的な回答をしていますし、回答者層も投票率の高い比較的高い年代の人に偏っています。政権交代当時、その世論調査で政権支持率は大きく下がっていました。(最後の方は若干回復しており、そのタイミングを狙って解散したものと見られます。)
従来からの支持者が不支持に回ったにも関わらず、得票数はいつもの水準を維持した。このことから考えられるのは普段は棄権していた有権者の自民党への投票です。当時の民主党は投票数の点でも大きく伸びており、その中には普段は棄権していた人の票も多く含まれていたとは思います。ただ、そうした「新しい票」が反与党票ばかりではなかったことも注目すべき点です。
投票率が上がるとき
小泉総理(当時)が自民党の造反議員と戦うとして解散した衆院選2005、2度の政権交代がおこった衆院選2009、2012の3回の衆院選は、前後の選挙と比べて高い投票率を記録しました。こうした政治が大きく変わる可能性のある選挙では、改革派はもちろん、保守派も現状をなんとか維持しようと投票する割合が高まります。
どのような状況下でも有権者は投票するべきです。しかし、もし投票率の低迷に政治にも責任があるとすればそれは変わる可能性が全く無いと思われるほどの野党の弱さでしょう。そして与党から政権を奪取しうる野党は前記事で述べた通り、穏健で自民党票を切り崩しうる政党です。こうした政党を強く育てるべく、発信を続けていきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。もしこの記事を気に入っていただけたら、フォロー、よろしくおねがいします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?