Kei

韓国・中国・カナダと移り住みまくり、最終的にやっぱり日本にいる日本人です。 おじさんに…

Kei

韓国・中国・カナダと移り住みまくり、最終的にやっぱり日本にいる日本人です。 おじさんになりたくないので、最終的にはおばさんになりたいとおもい、日々鍛錬を積んでいます。 キュートな妻(シングル)と結婚したら突然やばい娘2人の父になり、異常に騒がしくなった日々の中で過ごしています

最近の記事

リスとリンゴの皮

 義母が、新居に遊びにきた。  どこかに一人で出かけて行ったと思ったらすぐに帰ってきて、両腕にはさまざまな食料品と、なぜか大量のゴミ袋。 「ピンクで可愛かったから、いっぱい買ってきちゃったわ。ゴミ袋なのねー、これ」  なぜ大量に買ってきてくれたかといえば、私が住んでいる自治体では、燃えるゴミを出すためのゴミ袋が異様に高いからである。中くらいのサイズのゴミ袋が、10枚入りで400円もする。  間違えたふりをして買ってきてくれる、義母の優しさが沁みる。  引っ越してきてま

    • 視界が一気に変わったみたい

       片瀬江ノ島駅から江の島まで向かう途中、歩き疲れた娘にサングラスをかけて、高い位置で抱っこした。  一瞬でぐるりと目線が変わり、世界が光の速度で変化する子供のことをおもい、若干腰をやられながらも疲れが吹き飛んでいくように感じる。  夏の暑さと、娘越しに季節の巡るスピードをほのかに感じた瞬間。 #夏の1コマ

      • おみくじを引くのをやめたら、大吉が降ってきて、部屋が散らかる話

         2年前、おみくじを引くのをやめた。  神社境内にあるあの小さい箱から、小さい紙を引っ張り出して、開いてみたらそこに書いてある「小吉」の文字。あれに何度、落ち込んできたかわからない。  だいたいが、「吉」と「小吉」のどっちがいいんだったかも、毎年思い出せなくなる。毎年思い出せないので、毎年初詣に行ったついでに従兄弟とどっちが良いんだったかを話し合っては、ついぞ答えが出なかったりする。結局どうでもよくなって、最後は屋台のじゃがバターを買って帰る。そんな年始ルーティーン。  

        • 裁縫が嫌いだった理由を再考する話

           とにかく裁縫が嫌いだった。  小学校高学年になった頃、授業でいきなり先生に「ズボンを自分で裁縫してみよう!」と言われた。  いやいや、ちょっと待って。いきなりズボンなんか縫えるわけないでしょ、何を言ってるんだい、この大人は?  完全に肩をすくめて周囲を見渡すと、なぜかできているクラスメイトたち。  その横で、最初から全くやる気がなく喋りまくっているだけの一部の男友達(もちろん彼らは後で怒られる)。  どちらにも混じれなかった私は、やる気だけはあるのに、玉結びもたまに

        リスとリンゴの皮

          うんこ水が点眼されて、エジソンを想う話

           最悪のタイトルである自覚はある。  恐ろしいことに、これは実話である。どんな怪談よりも怖い。  話自体はごく短い、誰にでも起こりうる話だ。  ある日、私はこんな体勢で脱糞していた。便器に座って前屈みになり、膝と膝の間の少し上くらいに頭があるようなポーズである。  別にお腹が痛いわけではなかったが、用を足しているときは昔からなんとなくこのポーズをよくとっていた。  特に古いタイプの洋式トイレで脱糞する際、最大の問題点は、便器の中に溜まっている水が多すぎると言う点である

          うんこ水が点眼されて、エジソンを想う話

          ドライブで死にかけの時に思わぬ愛の芽生えを感じた話

           ドライブは、ものすごい怖い。  これは、当然のように車を運転できる人々に囲まれていたり、運転中に不思議な体験に巻き込まれたことがない、恵まれた人間たちには、おそらくぜんぜん理解できないであろう感覚である。 失禁との戦い  例えば大学時代の同級生の山口くんは、高速で永久にサービスエリアに入ることができない人間であった。たまにレンタカーでドライブに繰り出す仲であったが、その度に困る羽目になる。  スピードを出して高速を走っているうちに、いつハンドルをきればいいのかわから

          ドライブで死にかけの時に思わぬ愛の芽生えを感じた話

          子供とリフレッシュウィークエンドを希望する話

           今週末何する?という定期課題に対して、回答できるだけの材料を集めるのが平日夜のルーティーンになった。    元来、何もせずにベッドでゴロゴロと漫画を読んでいるだけで心地よい背徳感を得られる人間としては、必ず週末にアクティビティを行う生活とは子供ができるまで無縁だった。    ところがどっこい、子供に合わせた生活を送る週末になると、自分のためのイベントが存在しない週末は単なるメンタルトレーニングウィークエンドになってしまう。  SNSでショート動画を高速でまわし見している人間

          子供とリフレッシュウィークエンドを希望する話

          10年以上ぶりに短パンを履いた

           そう、10年以上ぶりである。10年以上ぶり。  短パンを履くのには勇気がいる。短パンを履くような男になるには、短パンを履いていいと周囲に納得させるような人間性が必要だと何の理由もなく考えていたからだ。  で、別に誰でも短パンを履いていいのであるというダイバーシティな現代の風潮に背中を押されて、勇気を出して、ある日着てみた。  めちゃくちゃ似合っている。無論、筆者は右のご陽気な成人男性である。  似合っているということは、もはや現代に私の短パン外出は認められたのではない

          10年以上ぶりに短パンを履いた

          還る (過去作)

           よく晴れているため散歩に出ると、いつの間にか近所のお婆さんの家が取り壊されていることに気がついた。我が家を出てほんの数秒のところにある家だったのに、解体されていることにもお婆さんがいなくなっていることにも気がつかなかった。更地だった。土しかない更地だった。お婆さんの住む家の下は、こんな風に土だったのかと思った。  よくよく考えればわたしがまだ小さな子どもだった二十年前から、あのお婆さんはずっとお婆さんだった。単に、容姿が昔からこれまでずっとこれ以上「お婆さん」にならないくら

          還る (過去作)

          ラベル (過去作)

           有酸素運動を室内で行う方法を探しています。思い当たる節がある方は下記電話番号、もしくはメールアドレスまでご連絡ください。そういう張り紙を貼った。近所の電柱という電柱に貼ってまわったが、1件として連絡がきていない。こんなものはインターネットで検索してもぜんぜんおもしろくない。室内で使用する特殊な器具を勧めるのをやめてください。  本来、「室内でできる」といったときに想像されるのは、本当に外に出ないでできるのかという意味だけではなく、「なにもない状態でこの身一つでできるかどうか

          ラベル (過去作)

          ほんとうは。 (過去作)

           寂しい気持ちを誰にも共有できなかった夜を幾度となく超えて、人は自室にお守りの御札を貼るようになる。ぺたりと裏側に両面テープを貼って。御札にこんなに強力な糊をはっつけてバチがあたらないのだろうかといつもおもう。わからないけれど貼る。きっと救われるような気がする。自分の頭よりも上の位置に御札を貼って、貼ってからコンパスで向きを確認する。御札をどちらの方角に向けてよいかは元から決まっているらしい。調べたくせに調べたことを貼り終わるまで忘れたりしている。  洗い物をしていて少し飛び

          ほんとうは。 (過去作)