わたしたちだけの世界で(I-LANDを楽しむためのシグナル)
I-LANDが楽しめない人たちとBTSにハマらなかった人たちって共通点があるんじゃないだろうか。
ハマらない理由も分からなくもない。
単純に曲やメンバーの容姿が好みではない人ももちろんいるとして、サバイバルが好きだったりK-POPが好きだったり好きになる素質はあったのにいまいちハマらなかった理由はなんだろう。
これは予想だけどいまいちな理由として
まずシステムが難しい。
練習生同士で脱落者を決めるのが辛すぎる。
蹴落とし合っておいて入れ替わりの時に毎回メンバー同士で泣くのが意味不明。
先生たちがいないから、練習生同士で教え合っていて、こんなんでパフォーマンスは上達するのかよ…と思う(=サバイバルの醍醐味の一つであるパフォーマンス面での成長の過程を見ることができない気がする)
しかし実際はどうだろう?
(画面上は)ほんの少しPD陣にアドバイスをもらっているだけでめきめきとパフォーマンスに磨きがかかっている。
自分たちで脱落者を選ぶのに、
仲間たちの絆も深くなっているように見える…。
I-LANDにハマっている層の中でも、ARMYやMOAの多くは、観ていて辛い場面やよく分からない複雑なシステムにも「分からないな…」とは思いながらも自然と受け入れて楽しむことが出来ている気がして、その違いは何なのかとても不思議だったけど、それはARMYやMOAたちにとって、自分たちの推しグループのカムバの度に現れる謎の仕掛けや、時に言葉足らずなまま提示されるイベント(Armypediaやconnect etc...)だったり、よく分からないものを提示される事は日常茶飯事で、その後には必ず、“想像以上の驚きやトキメキが用意されていること”を知っているからではないだろうか。
例えばニキやジェイにとって、序盤(パフォーマンス面以外で)あまり良い印象を持てる場面がなくても、よく観ていないと気づかないような細かな心の動きや彼らの性格をキャッチして共感することが上手だったり、今は不利な状況でも、この先変わり始めた彼らの、成長した姿が観れるであろうという期待や、その時きっとポジティブな感情をもらえることをみんな何となく、無意識に予測出来ている気がする。
簡単にまとめるなら謎展開の先の未知の感動を知っているから、そこにたどり着くまで〈待つこと〉に慣れている。
“アイドル”がキラキラと輝いて勇気を与えてくれる存在だとして、その裏側の苦悩を見たくないという人もいるだろう。
多くのアイドルが見せることのない葛藤やぼろぼろになりながらもステージに立つ姿など見なくてもいいものかもしれない。そしてそういった裏側をさらけ出したコンテンツを楽しむことは少し罪悪感を感じるものだろう。
“裏側をさらけ出すこと”が人気を得た一つの理由となっているBTSのファン・ARMYたちでさえ、人格を消費しているのではないか…というジレンマに度々襲われているのではないだろうか。
過酷なシステムに投げ込まれて苦悩する練習生たちの姿は観ていてとても辛いものかもしれない。
未来ある男の子たちの葛藤を画面越しに楽しむという行為は残酷なことのようにも思える。
そこで思考を止めてしまえば、それだけの事だろう。私には肌が合わなかったと、また別の、心から楽しめるコンテンツを見つければいい。
人の好みは人それぞれだ。
だけど考えることをやめなければ、その先にはとてつもない感動と喜びがある。
時にずるく、時に弱く、ぶつかり合い、お互いを認め合い成長する姿をさらけ出してくれる事で私たち視聴者は彼らに共感する。
心を開いてくれた分、こちらの心を開いてあげたくなる。
心を開いた人たちは、少年たちが成長していく姿に勇気をもらうだろう。私も変われるかもしれない、明日はあの子たちのようにもっと頑張らなくちゃ。そんな事を思って私たちもまたほんの数ミリ単位だとしても彼らを通して成長する。
“アイドル”はキラキラと輝いて、勇気を与えてくれる存在になる。
心から夢中になれる“アイドル”
彼らの成長を通して自分を見つめ直すファンたち。
それこそが製作総指揮であるパンシヒョクPDの狙いなのかもしれない。
そしてある意味では消費された彼らもまた、この世界のどこかで自分の姿が誰かの勇気になる事をきっと喜んでくれるはずだ。誰かの救いになれるということはとてもとても嬉しいことだから、もっとカッコいい自分になろうとさらに努力するだろう。
お互いにそうした喜びを共有しながら互いを高め合えるなら、罪悪感を感じる必要はないのではないかと思う。
ファンたちは勇気をくれたかわいい男の子たちを全力で応援するだろう。
誤解され、上手く振る舞えなくて、勇気が足りなくて惑う彼らに、“私が”応援しなきゃと思う。
I-LANDはZICOやRAIN氏、IUによるテーマソングなど、超豪華メンバーが集結しているにも関わらず、どうやら視聴率も悪く、そのシステムも一部で不評らしい。
夢中になっている視聴者たちにとって、この事は逆に気持ちを加速する追い風になっているだろう。
“私が”応援してあげなくちゃ!
それは昔、誰からも見向きもされず、逆風の中、ひたむきに努力を重ねてきたBTSと共に歩んできたARMYたちの心理と似ているだろう。
“私がみんなを喜ばせてあげたい”
そんな風に誰かを想うとき、人はとても幸せな気持ちになる。
私たちはこの先、彼らを通してどんな景色を見るのだろうか。卵の殻をやぶり、外側の世界に出た時、きっと経験するであろう幾多の困難が詰め込まれた世界で。それでもきっと忘れられない、たくさんのきらめきでいっぱいの、アイランドで。
追記
9月18日、113日の時間を共に過ごしたアイランダーたちから“ENHYPEN”としてデビューすることとなる7人のメンバーが決まった。
一人一人デビューが決まる中で発表されていく順位は、きっとこれまで番組を見ていた人たちにも予想もつかなかったものだった。
それはファン投票で決めることの穴だったのかもしれない。
“1番に応援している子は私が投票しなくても1位だから、PD評価のランキングで下位だった、落ちてしまいそうな練習生に投票しよう”…そんな風に思って行動していた人たちはいなかっただろうか?
その結果これまでぶっちぎりで人気があり、絶対にデビューするだろうと誰もが思っていた練習生は最後の最後まで名前が呼ばれず、その光景を見守っていた私たちの心臓は飛び出そうなほどに緊迫した。
誰も悪くないのかもしれない。
おそらく描かれていたであろう番組側の思惑は果たしてその通りになったのだろうか?
予想外の結果にうろたえたのは、視聴者だけじゃなかったんじゃないだろうか?
それとも結局、以前のサバイバルと同じように私たちは黒いもののてのひらの上で踊らされていただけだったんだろうか?
前の週の評価で1位じゃなかったら、たった数秒でも編集された場面が違っていたら、きっと結果は変わっていただろう。
それぐらいファイナルまで残っていた9人はみんな、一人残らず輝いていた。
こんなに晴れ晴れとしない結末を誰が予想していただろう?
全ての人が納得する結末なんてない。だけど多くの視聴者の気持ちが放置されたまま幕を閉じたI-LANDは、今後の課題をたくさん残したんじゃないかと思う。
今回の番組のシステムに触れることは、私たちもはじめてならばPD陣や番組側にとってもはじめてのことだったのだから。
だけど仕方のないことだと大人になるのではなく、怒りたい人は怒ればいい。
人を傷つけるために攻撃するのは良くないけれど、113日の間応援してきたアイドルのために悲しんだり悔しがったりしている人たちの姿は、練習生本人にとっては、きっと救いになるのではないだろうか。
今回はダメだったけど、これからまた新しい夢へ走っていくための原動力になるのではないだろうか。
人が争うのは愛があるからだと誰かが言った。
好きだからその人のために腹を立て、好きな人を傷つけるかもしれない事柄を怖れ避けようとする。
デビューできなかったメンバーを想って悲しい分だけ、きっと深くその人を好きになっていただろう。悔しい分だけ、彼らのパワーを信じていただろう。
ケイくんがインターネットにあふれたたくさんの言葉から、ここを見つけてくれる可能性はゼロに近いけれど、もしもこの言葉が届くのなら伝えたい。
いつも明るくて、高い理想を持って努力し続けたケイくんが、笑ったり泣いたり、時には厳しくぶつかり合いながら仲間たちの中心で成長していく姿を観て、たくさんの人たちが勇気をもらっただろう。
そのバランスの整った最高のパフォーマンスやセンスにたくさんの人たちが胸を踊らせただろう。
たとえI-LANDからデビューできなかったとしても、私たちが観てきた物語が巧妙に編集された作り話だったとしても、出会えたことは取り消せない。
たくさんの人たちの心の中に生まれたトキメキを、正しいかどうか計ることも偽物だと笑うこともできない。
私がいなきゃと思わせる“心から夢中になれるアイドル”
それを見つけられることがサバイバル番組の醍醐味ならば、
悲しい分だけ、悔しい分だけ、
多くの人たちにとってケイくんこそが“心から夢中になれるアイドル”だった。
デビューを勝ちとった7人の夢も、
デビュー組には入れなかったアイランダーたちの夢も、まだ終わったわけじゃない。
23人でパフォーマンスした彼らの清々しい輝きは私たちの心に深く刻まれただろう。
I-LANDという卵の殻を破り、外の世界に出た、
ここからがすべての始まりだと信じて。
113日間、たくさんのドキドキをくれた23人の夢の続きをこれからも応援していきたい。
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