特許で企業の技術力を診断
特許について、二級知的財産管理技能士である私が簡単に解説します!
特許を企業の評価に加えるべきだという話はかねてからあるかと思います。実際の現場では特許についてかなり重要視されています。しかし、特許というものがそう簡単なものでもなく、自分で評価しづらいため個人投資に活かすのは難しいところがあります。
そうしたなかで、特許を調査してまとめてくれている記事は非常にありがたいものと言えます。
トヨタ、EV特許に競争力:日本経済新聞
日経新聞を投資に活かすことを目的に、気になった記事を取り上げていきます。
投資初心者たる私が、その記事を見て、調べ考えたことを発信していきます。
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特許とは
特許は知的財産の一つで、特に産業の発展に寄与するものについて認められるものです。
自然発生する著作権とはことなり、審査に通過しなければ権利として認められません。
基本的に一度認められてしまえば特許は独占排他的に利用することができるため、より根幹の部分の技術について特許を取得できると、他の企業に対して非常に優位に立つことができます。
その代わりとして、特許を取得すると、その技術の全容を開示しなければなりません。また、特許の有効期限も20年ですので、それ以降は独占して使うことができません。
特許でのマネタイズ
特許を用いて利益をあげる場合、大きく二つの戦略をとることができます。
①市場独占
特許を有していれば、それについて独占排他的に利用が可能なので、市場そのものを独占して利益をあげることが可能です。
しかし特許は20年で有効期限を迎えます。したがって、市場を1から作り上げるような新規分野でこの手法を取ると、市場が拡大しきる前に有効期限を迎えてしまうかもしれません。
②ライセンス契約
もう一方はライセンスによる利益です。
他社にライセンスを与えることで、その使用料を収益として得られます。他社でも同様な製品が販売されることになるので、直接の製品の売り上げは小さくなります。しかし、市場にプレーヤーを増やすことができるので市場の拡大を狙いやすくなります。
EV関連特許の競争力でトヨタが首位に
今回の記事では、トヨタが首位に立ったことが報じられました。また3位にはホンダも付けており、日本勢の競争力が高いことが明らかとなりました。
今回の競争力の算定については記事本文のなかで以下のようにのべられていました。
日本経済新聞が特許調査会社パテント・リザルト(東京・文京)と共同で、7月初旬の米国でのEV関連特許を調べた。競合他社によって類似特許として引用された回数や、他社から審判を申し立てられた回数などをスコア化した。回数が多いほど競争力のある重要な特許と評価できる。
類似特許として引用されるものは、主に源流となる特許が多いです。その技術をもとに着想を得ていたり、一般に知られている技術として紹介したりします。論文と同じですね。
審判の申し立ては、主に特許化されると困る人がいるときに行われます。
つまり、その業界で影響力の大きい特許は、特許化されると困る企業が多いです。主要な技術を独占される可能性があるわけですから。
これらをスコア化した際にトヨタが首位になったというわけです。
トヨタが勝ち続けるためには
先述した通り、特許は20年でその権利が切れます。
すなわち、どんなに革新的な技術であっても、20年すると、誰でも利用可能になります。ジェネリック医薬品のように、安い同一製品が出回り始めるということです。
そうならないために重要なのは更なる技術発展をし続けることです。
元ある技術をベースに発展させるだけでなく、全く新しい技術も含めて開発していく必要があります。
一度、特許で首位に立てると、その後の競争にも本来有利です。すでにある自分の技術を使ってさらに進歩した技術を開発しやすくなるためです。
家電やソーラーパネルなどでは大敗を喫した日本ですが、自動車では勝ち続けられるのか。
特許という視点から眺めるのも悪くないですね。