
開催レポート/井土アレザレキャンパス『みんなで考えよう!良いヨシを育てるには?』
12月7日に実施した「井土アレザレキャンパス」では、『みんなで考えよう!良いヨシを育てるには?』と題した座談会を開催しました。プログラムナビゲーターである、プロダクトデザイナーの小松大知さんと参加者の皆さんと一緒に、今年度の「市民参加型のヨシ活用の取り組み」を振り返りつつ、井土地区で再び質の良いヨシを育てていくために必要なこと、そのために私たちができることについて、アイデアを出し合いました。

大阪・関西万博でも注目されているヨシ
小松さんから提供された話題の一つが、「万博におけるヨシ活用」です。2025年4月に開幕を控える「大阪・関西万博」は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成をミッションの一つとして掲げています。そのため、現代社会における自然素材の見直しや再利用についての提案を積極的に発信する内容となっています。
その自然素材の一つとして注目されているのが「ヨシ」です。建築家の隈研吾氏が手掛ける「いのちをつむぐ(EARTH MART)」パビリオンには茅葺屋根が採用され、ヨシ繊維を用いた「ヨシ生地」によって万博ユニフォームがつくられることになりました。いずれも、素材の再利用・廃棄ゼロを目指した取り組みになります。
滋賀県にある琵琶湖は、代表的なヨシの生産地の一つであり、滋賀県では行政と民間が連携しながらヨシの生産・活用を行っている事例が多々見られます。ヨシは多年草であり、ヨシズなどで使う際には11月ごろの地上部分が枯れた状態のヨシを使いますが、地下茎はそれまでの光合成で蓄えた養分で生き続け、春になると再び青々とした新芽を芽吹かせます。このような短期間での循環を維持することが良質な素材としてのヨシを育て、周辺の生態系にも良い影響を与えるとされています。琵琶湖周辺では、ヨシ刈りへの地域住民の積極的参加がみられ、地域でヨシのある景観を支えている様子がうかがえます。
「井土らしい」ヨシの活用とは?
万博のユニフォームの事例からも分かるように、既存素材から、ヨシのように持続可能性のある素材への代替を図っていくことは、これからの社会を構築する上では非常に重要な取り組みの一つであるといえます。
小松さんからは、畑の畝を覆うマルチングにおいてもヨシが活用されている事例が紹介されました。そして、参加者の皆さんとの議論の中で、井土は農村集落であることから、「井土らしい活用として〈農業〉に着目した利用を積極的に考えてみては?」という話に展開していきました。ヨシは、堆肥として活用されている事例もみられます。井土らしいヨシの使い方を発信していくで、資源の循環を生み出す可能性もあることから、ぜひ取り組んでみたいことだと考えました。いつでも誰でも使えるように、井土地区内に「ヨシの保管小屋」を作ってみては、という意見も出されました。

ヨシを身近にするために
議論の中で「そもそも『ヨシって何?』という市民も多いのではないか」という話題も上がりました。たしかに、今の私たちの暮らしの中でヨシを見かける機会はなかなかありません。そうした状況の中で「ヨシを使っていこう!そのために、手入れにも参加しよう!」と呼びかけるだけでは、市民側の関心を惹きつけることは難しいと言えます。
先に取り上げた大阪・関西万博の事例では、ユニフォームの素材に使われるヨシの刈り取り作業に多くの市民が参加したと報じられました。市民にとって「今、刈り取っているヨシが万博のユニフォームとして使われる」という事実が、刈り取り作業という手入れへの参加意欲につながっている可能性は十分にあると考えられます。
このことを踏まえれば、市民と将来的な活用手段を共有しながら、手入れにも参加してもらうことが大事であることが分かります。今の暮らしの中にはない「ヨシを手入れして、使う」という、自然環境への新しい関わり方を浸透させていくために、「教育機関と連携した自然学習の実施」や「ツーリズムとしてヨシの手入れ・活用を展開」等、さまざまなアイデアが出されました。「ヨシを知っている」層を拡大させながら、みんなで持続可能性の高い資源の活用方法を考えていくことが大事なのかもしれません。

さまざまな意見が出され、今後のヨシ活用だけでなく、ヨシの手入れにも可能性を見出すことができたアレザレキャンパスとなりました。ぜひ来年度の活動に活かしていきたいですね。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!