見出し画像

【特集:農業・食から見る栄養改善への道】マルチセクターでの栄養改善

「自分たちのプロジェクト」を意識

マダガスカル:食と栄養改善プロジェクト(PASAN)

PASANでの経験を訪問者に語る受益者

(株)三祐コンサルタンツ
海外事業部 技術第3部 技術課 参事
矢敷 裕子(やしき ひろこ)さん
大学を卒業してITソフトウェア企業で勤務後、JICA海外協力隊に参加しホンジュラスの農村開発に従事。JICA国内協力員、専門家を経験した後、イギリスの大学院に留学。参加型開発、分野横断的なサービス提供を担う地方行政分野等が専門。

■(株)コーエイリサーチ&コンサルティングが共同受託


 マダガスカルでは、慢性栄養不良、特に子どもの発育阻害が長年にわたり深刻な課題となっている。本プロジェクトは、主に女性と子どもの栄養改善に資するマルチセクター介入枠組みを作ることを目標に、JICAの技術協力プロジェクトとして実施された。プロジェクトは栄養、保健、農業、水・衛生の4分野での活動に取り組んだ。その成果の一つとして、子どもたちの食事回数増加や下痢への罹患率減少など、住民の行動変容が確認された。特に、農業分野では、野菜やタンパク質を補う豆類などの家庭菜園での栽培指導に加え、肉や乳製品などを買って食べてもらうべく、栽培した野菜を販売し現金収入を増やすための研修も導入した。
 (株)三祐コンサルタンツ(SCI)と(株)コーエイリサーチ&コンサルティングが本プロジェクトの実施を受託し、地方行政分野での経験が長い矢敷裕子さん(SCI)が総括を務めた。最終受益者に加え、複数セクター省庁、国際機関など連携すべき関係者は多く、「全員の理解や目線を合わせることが大切で、難しかった」と矢敷さんは振り返る。矢敷さんが大切にしたのは「あくまで現地の人々のプロジェクト」ということ。現地関係者が「自分たちのプロジェクト」として自主的に活動に取り組めるよう支援し、矢敷さんたちはあくまでアドバイザーに徹した。そのおかげか、コロナ禍で渡航できない間も計画された研修などを現地関係者が進めてくれて、彼らのやる気の盛り上がりを感じたという。
 地方行政案件は、マルチセクターの公共サービス提供のため関係者が多い。「各方面を巻き込んで一緒に仕組みを作っていくことが楽しい」という矢敷さんの出番はこれからも続く。

研修圃場のキャベツ。青々と大きく育ったキャベツが印象的
食事記録の付け方を確認する住民代表。
普段の食事からどのような栄養素をとっているのかを
お互い学びあった
矢敷さんたちが制作に関わったマルチセクター研修教材。
農業、水・衛生、母子保健、栄養などの観点から
全部で6種類
野菜栽培実習
受益者の家庭菜園の見学会

掲載誌のご案内
本記事は国際開発ジャーナル2024年8月号に掲載されています
(電子版はこちらから)

いいなと思ったら応援しよう!