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【食料安全保障プロジェクト】紛争地特有の課題に取り組み食料安全保障に貢献

プロジェクト名:ヨルダン渓谷地域高付加価値型農業普及改善プロジェクト/市場志向型農業のための農業普及改善プロジェクト
実施地域:パレスチナ
実施者:日本工営(株)


農業を脅かす土地と水を巡る紛争

 パレスチナではイスラエルとの紛争によって農業セクターの持続的発展が妨げられている。入植地建設に伴う農地の接収、分離壁で隔絶された農地の利用制限、紛争に起因する暴力や破壊行為、イスラエルによる水資源の利用制限や爆薬原料になるという理由での化学肥料の輸入制限といった紛争地特有の問題がある。減少していく農地での過度の連作が原因と考えられる土壌病害の問題もある。これに対しては、野菜の接木苗技術を導入した。接木苗とは高収量品種の根の部分に病気抵抗性品種をつなぎ合わせた苗で、それにより衰退していた生産が復活した野菜もあり、近年導入農家数が大きく増加している。水資源の利用制限に対しては、点滴かんがいの効率性を診断する手法を導入した。

技術移転のプロセスを重視

 紛争地でさまざまな工夫をしている優良農家のデータベースを構築し、在来技術を水平展開することで技術普及の効率性を高めた。また、イスラエル産農作物との市場競合を避けるため、ニッチな作物を含む栽培多様化により農業経営の改善と安定化を図った。さらに、イスラム圏の社会環境を考慮し、女性農民の参加を促すアイデアを積極的に取り入れ、男女間の情報・技術格差の緩和を図った。持続性を高めるため、特に技術移転のプロセスを重視し、紛争という特殊な制約がある中、政府職員や農家ができることを分析し、農家のニーズに合わせ、一緒に試行錯誤しながら対策技術を導入・普及し、生計向上に貢献した。食料安全保障のため、今後も紛争地特有の課題に対する継続的な技術支援が必要とされる。


衰退していたスイカ生産が接木苗によって復活
紛争の影響を受けている農民間の技術・アイデア共有
節水技術である点滴かんがいの効率性診断の普及
ぬりえを置くことで女性農民の研修参加率が大きく向上
紛争地で必要とされている土壌病害にかかりにくい野菜の接木苗

本記事掲載誌のご案内

本記事は国際開発ジャーナル2023年6月号に掲載されています。
(電子版はこちらから

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