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中国との協力はポスト・コロナ時代に不可欠

新型コロナウイルスは東南アジア諸国や新興国にも大きな影響を及ぼしている。その中で「マスク外交」を積極展開しているのが、中国だ。米中対立が一段と深まり、多国間の協力が十分に進まないが、日本は存在感を増す中国との協力に尻込みしている時間はない。東南アジアや新興国の情勢に詳しい末廣昭・学習院大学教授に聞いた。

明暗分かれた東南アジア
―東南アジアにおける新型コロナウイルスの影響はどんな状況ですか。
  ベトナム、タイ、マレーシアは感染防止対策に成功したが、インドネシア、フィリピン、シンガポールは失敗した。カンボジア、ラオス、ミャンマーはもっと感染者がいる可能性があるが、報告されていない。
 ベトナムやタイは早くから徹底した対策を取ったのが成功要因だろう。ベトナムは全国に約1万ある末端の行政組織が自発的に動いた。タイは全国に200万人近くいるボランティアが活躍した。一方、インドネシアやフィリピンは外から感染が持ち込まれた。宗教に熱心で濃厚接触を気にしない人が多
いことも影響したのではないか。また、シンガポールは医療体制が万全と思われたが、自国民に対する感染防止対策と比べ、外国人労働者に対するそれは十分でなかった。タイも国内にいる外国人労働者の感染状況はあまり報道されていない。それでもコロナ禍による東アジアの死亡率は8月初旬で3.0%と、世界の3.7%より低い。米欧に比べ、中国と東南アジアは復興協力に動き始めるのも早くなるだろう。
 その一方、ブラジル、ロシア、インド、南アフリカなどBRICSも自国の対応で手一杯で、中国を除き壊滅状態だ。新興国を含めたG20による国際協力は機能不全に陥っていく。G20が世界の経済復興を牽引することは当面あり得ない。国際通貨基金(IMF)や世界銀行は最貧国を中心に経済支援を考えている。では、誰が新興国も含めて面倒を見るのか。
 注目されるのは、やはり中国だ。中国の「一帯一路構想協力文書」に調印した国は138に達する。中国がグローバルな経済復興に責務を負うと考えても不思議ではない。しかも「ヘルスケア・シルクロード」のソフトな名前でコロナ対策の形をとり、機をみて中国の影響力を拡大していくと考えられる。インフラ投資も鉄道・道路・港湾に加え、デジタル化支援を前面に打ち出している。また、IMFや世界銀行で出資金引き上げが課題になれば、中国が名乗りを上げて出資比率を増やし、指導的地位を狙って来るだろう。しかし、米中対立を一層激化させるに違いない。

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