【特集:教育プロジェクト】住民の意識改革と児童の学びの改善を通じ、ジェンダー視点に立った教育モデルを構築
パキスタン:学校活動と住民参加を通じたジェンダーに配慮した就学継続プロジェクト(GRACE)
国際開発センター
女子就学率改善を目指すGRACE
2,000万人を超える不就学児童を抱えるパキスタン。特に、シンド州は、パキスタンの中でも不就学児童が割合、絶対数共に多く、男女の教育格差も大きい地域である。女子の就学率が低い背景には、慢性的な教員不足から授業の質が低く「学校に行く意味がない」と考える保護者が多いことや、コロナによる長期の休校、経済状況の低迷に加え、「女子は結婚するので学業は不要」「男性教員のいる学校は不安」などの宗教的・文化的な背景も要因にあると考えられている。
このような背景から、2022年に女子の就学継続と退学防止に向けて同州で開始されたのが「学校活動と住民参加を通じたジェンダーに配慮した就学継続プロジェクト(GRACE)」だ。JICAより委託し、実施している。
地域参加型の活動で教育を普及
就学率の改善と退学防止には、保護者や地域社会の巻き込みが不可欠である。特に女子の就学継続には女性保護者を含めた意見交換や啓発が重要なことから、プロジェクトでは、校長と保護者からなる学校運営委員会(SMC)を地域住民参加型へと活性化し、同委員会へ男女両方の保護者が参加し意見交換できる体制を構築した。今では教育の意義を理解し、SMCのリーダー的な役割を担う女性保護者も誕生している。
また、学習の質改善のため、授業開始前に「朝の算数ドリル学習」を導入したところ、基礎計算力が向上し出席率が高まる効果も見られている。
さらには、これらの活動を自立的・持続的に行うために欠かせない体制づくりも、州教育局と共に進めている。
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本記事は国際開発ジャーナル2024年5月号に掲載されています
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