見出し画像

#5 コウモリ男と、おじいさん | 元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音

  今でこそ多くの駅で聞かれる発車メロディや発車サウンド。
その元祖である、「JR新宿駅・渋谷駅の音(1989-)」について、当時の開発プロジェクトリーダーである「井出 研究所」所長・井出 祐昭が、開発秘話や制作エピソードを語ります。

TOKYO MORNING 1989 (井出 研究所)


電車の発車音制作を進めるにあたっての課題は?

前回、前々回と、「元祖・発車音」開発のきっかけや考え方についての記事をお届けしました。

では、実際に「元祖・発車音」を開発・制作する段階になってからは、どのような課題があったのでしょうか?


課題はたくさんありました。
まず、ハードとしては、作業時間がかなり短いこと。
終電後、酔っ払いの方々にもお帰りいただいて(これがなかなか時間がかかるんです)、深夜1時付近からのスタートになります。
始発は4時頃なので、作業時間は、実質3時間くらいしかない。しかも寒い時期。
詰めている期間は、昼夜逆転生活になりました。
けっこう長い期間やっていました。

毎晩、暗闇で検証用スピーカーを取り付けてくれる人がいて、「こうもりおとこ」と呼んでいました。
かなりの功労者ですよ!

「元祖・発車音」制作の影の功労者、コウモリおとこ(画像はイメージです)

もう一つは、ソフト面の課題です。
長い間使っていたものを一気に変えるとなると、お客様も戸惑うし、それを安全にやろうと思っている駅員の方々も戸惑う。
そのショックが必ず出てくるということが目に見えて分かるので、どうすればショックを回避できるのかということ。これが一番難しかったです。

じゃあどうしようか、と考えた末に、ラジカセを持って駅ホームの端っこに行き、どんな音・音色が合うのかを散々実験しました。
シンセで創ったものなど、色々と試しました。昼間にもやりました。

ひとつ、ピアノの音色で簡単なフレーズを演奏したものがありました。
それを鳴らしたときに、杖をついたおじいさんが、「にこっ」と笑ったのです。
「これか、こういうものね。」と思いました。

杖をついたおじいさん(画像はイメージです)

「元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音」では、皆様からの質問を募集しております。
井出所長に聞いてみたいことがございましたら、note記事へのコメントまたは公式Xへのリプライでお寄せください。


井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?