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#12 オルゴールバージョン制作にあたって | 元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音

今でこそ多くの駅で聞かれる発車メロディや発車サウンド。
その元祖である、「JR新宿駅・渋谷駅の音(1989-)」について、当時の開発プロジェクトリーダーである「井出 研究所」所長・井出 祐昭が、開発秘話や制作エピソードを語ります。

2024年に35周年を迎えた「元祖発車ベル」ををオルゴールバージョンとしてリメイク。


オルゴールバージョン制作まで

この度、35年を経て初めてバージョン違いの制作にあたりました。経緯とお考えを改めて伺っても宜しいでしょうか?


一通の手紙

元祖発車ベルが新宿開始して1年くらいしてから、一通の手紙が届いたんです。
空のカセットテープと一緒に入っていたのですが、「息子が心が不安定で、暴れる事がよくあり、どうしたらいいのかとを困って苦しんでいます。」という内容のものでした。
確か、病院に行く最中に新宿駅を通るということなのですが、
「発車ベルが聴こえるその時だけ、子供の気持ちが安定するんです。
その音をカセットにいれて送ってくれないでしょうか」と。
そんな内容の手紙でした。

「発車を知らせる」を超えて

本来、あくまで単純な「発車を知らせる音」なのですが、そういう効果もあるのかという発見がありました。

そもそも、大きな発想としては、「大きな音でびっくりさせるのではなく、綺麗な音でハッとさせる」という考えや、「自分の気持ちが映る鏡の様な音」「新宿クリーン作戦の一面で駅空間を浄化する」という発想が作る前からあったのも確かです。
それが、このような形で効果が現れているということは、嬉しいことでもあり、びっくりしたことでもありました。

立体音響化により確信に

実はその話はしばらく、そういえばJRの発車ベルは駅全体がアンサンブルになっているので、最近の技術で立体音響にしてみたらどうかなということをやってみました。
それを、何人かで聴いたんだけど、平たく言えば癒し効果だし、突っ込んで言うと、空気が透明になるみたいな、懐かしい気持ちになるという効果、ほわっとした気持ちになりました。

技術的には、鐘の響きというのがベースになって作られているけど、鐘の響きは倍音構造の特徴とも言い換えられる。
この特に高域の倍音構造のきれいさは関係していると思います。

今度は「音楽として」

これは音楽としてオルゴールでやってみたらどうか?ということで、仲間の一色このみさんが創りました。

発車ベルという人に危険を知らせるもののはずなのに、オルゴールにしてみても、すっとした温かさみたいな、そういうものを感じています。

新宿の発車ベルのもう一つの力として、こういうものが皆さんの心に役に立つようなものであれば、大変うれしいです。


「元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音」では、皆様からの質問を募集しております。
井出所長に聞いてみたいことがございましたら、note記事へのコメントまたは公式Xへのリプライでお寄せください。


井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。

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