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理詰めで誰でも面白いストーリーが作れる 11 エピソード作りで基礎力爆上げ

面白いストーリーを作るための、充分な量と質の理論を提供する連投テキスト。
11回目である今回は、キャラクター設定に際して行う、エピソード作りについて深掘りする。


「やおい」が教えてくれたこと

「やおい」という言葉をご存知だろうか。
かつて、ボーイズラブ系の同人誌に、ヤマもオチも意味も無く(つまりストーリーらしきものが存在せず)、描きたいシーンだけを描いた作品が多かったため、それを揶揄する表現として、ヤマとオチと意味の頭文字を繋げて、「やおい」という批判語が生まれたそうだ。
それが転じて現在では、ちゃんとしたストーリーが存在する作品であっても、ボーイズラブ系であれば「やおい」と呼ばれるようになった。
なお、ボーイズラブ全般を指す今日の「やおい」には、批判的なニュアンスは無い。

いきなり「やおい」の話から入ったが、別にボーイズラブについて語るつもりは無い。
本稿において重要なのは語源の方、つまり、「ヤマ無しオチ無し意味無し」という言葉だ。

ストーリーらしきものが存在せず、描きたいシーンだけを描いた作品を、人々は「ヤマ無しオチ無し意味無し」と評した。
その根底にあるのは、「ヤマとオチと意味が無ければ、ストーリーとは呼べない」という認識だろう。
実際、面白いストーリーを作るためには、このヤマとオチと意味は不可欠な要素だ。

前回までの数回にわたり、キャラクター作りにおけるエピソードの重要性については、繰り返し繰り返し述べてきた。
エピソードを作る目的は、キャラクターの個性を具体化・意識化・明確化することである。
本来、その目的さえ果たしていれば、エピソードそのものの巧拙は問題ではない。

そもそも受け手に見せるものではないのだから、それは作品ではなく、作品を作る工程で生まれた副産物に過ぎない。
作品でないものの巧拙が問題にならないのは、至極当然のことである。

巧拙が問題にならないということはすなわち、「ヤマ無しオチ無し意味無し」でもよいということだ。
キャラクター作りのためのエピソードは、「ヤマ無しオチ無し意味無し」で、ストーリーらしきものが無くても、一向に構わないのだ。

が、

敢えて、キャラクター作りのためのエピソードにも、ヤマとオチと意味を盛り込んで、ストーリー性を持たせるというのも、もちろんありだ。
いや、「あり」どころか、積極的に推奨したい。

前回までの話でおわかりいただけたと思うが、キャラクター作りに際して、作るべきエピソードの数は膨大だ。
その膨大な数のエピソードを、ヤマもオチも意味もある、ストーリー性のあるエピソードにするためには、並大抵の労力では済まない。
その労力は断じて徒労ではない。
ストーリー性のあるエピソードを量産することによって、ストーリー作りの勘所(コツ)のようなものが、自然と身に着くという効果がある。

キャラクター作りという主目的と、ストーリー作りのコツの体得。
そんな素晴らしい一石二鳥が、エピソード作りにヤマとオチと意味を盛り込むだけで、実現できてしまうのだ。

ヤマとオチと意味の作り方

手始めに、ヤマとオチと意味という、3つの概念について確認しよう。
ヤマとはストーリーの起伏のことで、いわゆる「起承転結」のことと考えてよいだろう。
オチとはエンディング、締め括りのことで、ギャグ系やコメディ系においては文字通りのオチを意味する。
意味とはいわゆるテーマのことで、受け手の心に最も強烈に残したい印象のようなものだ。

ではまずヤマの作り方について述べよう。
ストーリーの起伏と言われた時、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが、「起承転結」という言葉だろう。
これはもともと漢詩の構成に関する用語に過ぎなかったが、今では漢詩に限らず、さまざまなものに応用されている。
ストーリーへの応用も極めて一般的で、もはや何の疑いも抱くこと無く、「起承転結」に基づいてストーリーを構成することが正しい、盲信している人は多いだろう。

が、この連投テキストにおいては、「起承転結」に基づくストーリー構成については、俗説として批判的に扱う。
4つのパートを意識することは支持できること、及び、俗説とはいえ世間一般への浸透レベルが極めて甚大であることから、これを全否定するつもりは無い。
「起承転結」という用語を予備知識として援用しつつ、よりストーリーに最適化した独自の用語を、提案・使用していきたい。

この連投テキストにおいては、ストーリー構成を表す用語として、
ツカミ、アオリ、フリ、カマシ
というものを使用する。
これらはそれぞれ、世間一般のイメージする「起、承、転、結」に、それぞれ対応している。

以下、本項における「主人公」とは、ストーリーにおいてはそのまま主人公を、キャラクター作りのためのエピソード作りにおいては当該キャラクターを意味するので、ご留意願いたい。

ツカミは、いわゆる「起」に相当し、「主人公」の目的を受け手に提示するパートである。
アオリは、いわゆる「承」に相当し、目的に込められた「主人公」の切情や、目的が達成されなければどうなるのかといったリスクを提示して、受け手の感情移入を促すパートである。
フリは、いわゆる「転」に相当し、目的が達成される目前、あるいは逆に、達成不可能になる目前の状態を現出させて、受け手の期待あるいは不安を、極大化するパートである。
カマシは、いわゆる「結」に相当し、フリとは逆の結末を現出させる(フリで達成目前にした場合は達成不可能にし①、フリで達成不可能目前にした場合は達成させる②)か、目的の大前提となっていた条件を無効化させる③ことにより、目的に何らかの決着(①負け、②勝ち、③ドロー)を付けるパートである。

以上のような構成法を、今後この連投テキストにおいては、4つのパートの頭文字を繋げて、ツアフカ理論と呼ぶこととする。

ヤマ、オチ、意味のヤマを盛り込むためには、ツアフカ理論に基づいた構成にするだけでよい。
オチはカマシが担う役目で、「目的に何らかの決着を付ける」がそれに当たる。
意味もカマシに関係している。「目的に何らかの決着を付ける」からには、その決着の決め手となる何かしらの要素が、必ず存在しているはずだ。
その、決着の決め手となる要素こそが、意味すなわち「テーマ」である。

キャラクター作りのためのエピソード作りにおいては、【具体化・意識化・明確化すべき個性】こそが「テーマ」だ。
つまり、【具体化・意識化・明確化すべき個性】が決め手となる形で、目的に何らかの決着を付ければ、そのエピソードには意味が盛り込まれるということだ。

長くなったのでまとめよう。

キャラクター作りのためのエピソードにヤマ・オチ・意味を盛り込む方法は、
ツアフカ理論に基づいて、そのエピソードを構成する
②カマシパートにおける目的の決着は、【具体化・意識化・明確化すべき個性】が決め手となる形にする
この2点を実践することである。

尺の目安は4応酬

キャラ歌―作りのためのエピソードは、非常に膨大な数を作る必要があるため、各エピソードがあまり長い尺になると、労力が大変なことになる。
かと言って短過ぎては、ツアフカ理論から外れてしまう懸念がある。
ツアフカ理論に基づく構成が作れる、必要最低限の尺がわかれば、効率よくエピソードを量産できるようになるはずだ。

そのような尺の目安としてほしいのが、行動と反応4つ分である。

この連投テキストの第五回、「目的とストーリーの多層性」にて、「展開とは、行動と反応の応酬である」と述べた。
この行動と応酬の1セットを、以後、この連投テキストでは、応酬という独自の単位で呼ぶこととする。

「主人公」の行動に何らかの反応が起こったら、そこで1応酬、
それに対して「主人公」がさらなる行動を起こし、また反応が起こったら、2応酬目、
といった風に数えてゆく。

ツアフカ理論に基づく構成を、極力短い尺で作りたいなら、4応酬という尺を意識するのが最適と思われる。

1応酬の尺は様々で、極端に長い1応酬もあれば、極端に短い1応酬もある。
そのため、長めの1応酬を想定するなら、1応酬でツアフカ理論に基づく構成を作ることもできる。
なので、4応酬というのはあくまで目安でしかないことについては、充分に留意してほしい。

まとめ

キャラクター作りのためのエピソードは、キャラクターの個性の具体化・意識化・明確化さえできればよく、ヤマ無しオチ無し意味無しでも構わない。
が、
全てのエピソードにヤマとオチと意味を盛り込むように意識すると、基礎力が飛躍的に上がる。

ヤマを作るには、ツアフカ理論に基づく構成にすればよい。
ツアフカ理論とは、
「主人公」の目的を受け手に提示するツカミパートと、
目的に込められた「主人公」の切情やリスク等を提示して、受け手の感情移入を促すアオリパートと、
目的が達成される目前、あるいは逆に、達成不可能になる目前の状態を現出させて、受け手の期待あるいは不安を、極大化するフリパートと、
フリとは逆の結末を現出させるか、目的の大前提となっていた条件を無効化させることにより、目的に何らかの決着を付けるカマシパートを意識した構成作りを勧めるもの。

オチと意味を作るには、目的の決着の決め手を、【具体化・意識化・明確化すべき個性】にすればよい。

エピソードの尺は4応酬が目安にするとよい。

今回のテキストは以上である。
最後まで読んでくださったそこのあなた、本当にありがとうございましたm(__)m

参考文献
○ロバート・マッキー著、越前敏弥訳『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』(フィルムアート社)(2018年)
○沼田やすひろ『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』(講談社)(2011年)
○Webサイト『コトバンク』内「政治体系」の項(https://kotobank.jp/word/政治体系-1178804)
○アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ著、新田享子訳『トラウマ類語辞典』(フィルムアート社)(2018年)
○Webサイト『シナリオ教室 ONLINE』内「キャラクターの作り方が分からない 人必読:脚本家 清水有生さん脚本術」内「キャラクターをタイプ別に分ける」の項(https://www.scenario.co.jp/online/23302/)

Xやってます。
https://x.com/ideology_theory
主に政治経済ネタをつぶやいてます。
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