お香の真髄-香木とは何か?-
お香と言えばお線香や竹線香(バンブーインセンス)、三角形のコーン型のお線香をイメージする方が殆どだと思います。
日本でのお香とは、本来はお線香や焼香、匂い袋、塗香、練香などを総称してお香といいます。
しかし、香木と言われる香りのする木を指すことがあります。
それは、日本の伝統的な芸道である香道的観点によるものです。
または、お釈迦様が香木(沈香)を焚かれていた事からお香が始まったことからの、"お香"="香木"という考えによるものだと思われます。
お香はそもそも、沈香を焚くことから始まり、沈香の香りを引き立てるように、漢方薬と調合するようになりました。
そう考えると"沈香"="お香"と言っても良いと言える事が見えてきます。
なので、お香を深く知る上で香木の理解は必要不可欠だと言っても過言ではありません。
香木の話しをすると本が1冊位出来てしまうくらいなので、触り程度でサクッと話したいと思います。
香木と言っても様々な香木があります。
お香以外の香木を挙げるとすれば、ヒノキ、ヒバ、パロサント、ローズウッドなど香りのする木はたくさんあります。
お香でいう香木は伽羅、沈香、白檀の3つになります。
お香を深く理解するためには、この三つの香木について知っておくことが、お香の真髄に近づいて行くということになります。
では、お香の真髄といえる香木について具体的にどうすれば理解できるのかというと。
それは、実際に香木の香りを聞く(香りを嗅ぐ)ことに尽きます。
ただ、お香を知るうえで伽羅は欠かせない香りなのは変わりないのですが、あまりにも価格が高いため、財布と相談して可能であれば香りを聞いてみてほしいというところです。
伽羅は香道の宗派がつけた分類と、伽羅を扱う商人がつけた分類に分かれます。
どちらの伽羅も注意が必要です。
香道の場合は宗派によって伽羅の定義が違う場合があります。
私は香道で香木の理解を深めようと考える方は、流派を決めて入門されるのが一番の近道だと思います。
商人であっても偽物を扱っているところがあったり、伽羅に近いような沈香を伽羅として売っているところあります。
また、商人がつける分類には緑油、紫油、黒油、黄油などがあり、見た目や削った感じ、触った感じ、上匂いと木の複数個所を削っての焚き匂いで分けます。
一番わかりやすのは緑油伽羅の刻みがおすすめです。
理由としては、緑油伽羅は伽羅の香りの王道であり、殆どの香道の宗派で伽羅として扱われているもの(※)になるからです。
※御家流や志野流での聞香での主観で、全てを確認した訳ではないです。
緑油伽羅を手に入れる点で注意したいのは、ネットオークションです。
ネットオークションは99.9%偽物と言っていいほど偽物だらけです。
また、海外での購入や怪しい人からの購入は控えましょう。
なので、老舗のお香屋さんに行って上匂いを聞かせてもらったり、質問などをしてしっかりとしたものを買いましょう。
また、香りの聞き方についてもお香屋さんに合わせて聞いてみるのをおすすめします。
次に沈香について見て行きたいと思います。
沈香については、伽羅よりもさらに奥深くすべてを知ることは不可能でしょう。
ざっくりと理解するために、シャム沈香とタニ沈香と言われるものをある程度の値段のものを手に入れて違いを理解できれば良いと思います。
シャムは甘味、タニは辛味に特徴があり、焚き比べて香りが理解できれば沈香というものがどういったものか見えると思います。
ただ、沈香の香りは一度では理解し難いところがあります。
それは、鼻が慣れていないため香りを全て理解出来ないところがあるからです。
沈香は、何度も香りを聞くことで、感じ取れない香りが見えて来ることがあります。
それは鼻を鍛えるトレーニングのようなものです。
沈香について深く知りたい方は、毎日少しずつ沈香を焚いて見ることをオススメします。
最後に、白檀について見て行きましょう。
白檀は沈香と違って香りは分かりやすく、香木の中で一番初めに香りを聞いて見ることをオススメします。
値段も安価で、香りも分かりやすいためです。
白檀であれば老山白檀を聞いて見て下さい。
余裕がある人は他の産地のものを焚いてみて、違いを見てみるのも良いでしょう。
オススメとしては、香木の刻みを熾った炭の上で焚く(焼香)方法と聞香の両方を試して違いを見ることです。
時間とコスパを考えるなら、いくつかの聞香体験などに参加して、香木の香りを聞いてみるのもオススメです。
ただの知識としてではなく、実際に香りを聞いて体験する事が、お香への理解を加速させます。
是非、香木を体験して"お香の真髄"に触れてみてはいかがでしょうか?
【伽羅余談】
厳密にいうと伽羅も沈香の一種ですが、香りの違いから沈香と伽羅は分けられており、伽羅は言葉では言い表せないほど素晴らしい香りがします。
もちろん沈香もいい香りがしますが、伽羅の方が、誰もが良い香りだと万人受けするでしょう。
お線香の中で伽羅を配合して作られているものがありますが、私の知る伽羅の香りではないものも多数あります。
それらは私が知る伽羅ではないのかもしれません…
なぜ、私が伽羅の香についてこのように曖昧な回答になってしまうのかと言うと、伽羅や沈香には定義がないからです。
そして、香道でも流派や師範によって伽羅の香りがどこまでを伽羅とするのかが分かれています。
特に香道の場合は歴史的に是迄の師範が伽羅と決めた中で、現代の一般的に流通している伽羅とかけ離れたものが伽羅と扱われているものもあります。
私や違う流派が伽羅としていないものであってもその流派では伽羅であり、間違いではないのです。
その流派で受け継がれたものなのです。
ただ、そういった伽羅は買取では伽羅と扱われない場合がほとんどです。
では、どういった伽羅が買取されるのかというと、どの流派であっても、どのお香屋さんであっても、どの海外の商人であっても、伽羅と認めるものがあり、それであれば高額での買い取りが成立します。
曖昧であり不透明なお香の世界ですが、そう言ったことも含めて、お香の歴史や香りを楽しむのが良いと思います。
純粋に良い香りの様々な香木を楽しんで見て下さい。
そうすれば、きっとお香の魅力に気付くことでしょう。