人との距離感と孤立について。ねじまき鳥クロニクルを英語版wikiで読む #21
英語版wikiではねじまき鳥クロニクルにおけるテーマを以下の4つに分類して、それぞれ考察しています。
1 Desire(欲望)
2 Power(力)
3 Polar opposites(対極)
4 Alienation(孤立)
今回は4 Alienation(孤立)について、見ていきましょう。
今回は、alienationの意味を英英辞典で引くところろから始めてみましょう。
the state or experience of being isolated from a group or an activity to which one should belong or in which one should be involved.
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所属すべきまたは関与すべきグループや活動から、孤立した(isolated)経験や状態。
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isolate 【動】孤立させる
isolation 【名】分離 孤立
意味合い的にisolationはただ単に人と離れている状態でネガティブでもポジティブでもなく、alienationは望まない孤立というネガティブなイメージみたいです。
それでは本文いってみましょう。
Alienation: Throughout the novel the characters are obviously related to each other but they never feel like they connect to one another.
obviously
【副】明らかに
obvious 【形】明らかな
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孤立:小説の登場人物を通してずっとお互い明らかに関係しているが、彼らは彼らが他の誰かと繋がっているように感じない。
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All of the characters develop independently and tend to live solitary lifestyles.
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登場人物の全ては、独立して(independently)成長し、孤独なライフスタイルを送る傾向にある。
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This can be presented in Toru and Kumiko’s marriage.
can be 過去分詞
〜することができる
物が主語のときは助動詞+be+PPで表現する
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これはトオルと久美子の結婚の中で示すことができます。
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Throughout the novel, Toru presents himself to be one who seeks solitude.
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小説を通して、トオルは彼自身孤独を求める(seeks)人間であること(to be one)を表現ている。
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One example is presented as he completes an everyday task, “I went to the Municipal pool for a swim. Mornings were the best, to avoid the crowds”.
Municipal
市営の(地方の運営している)
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ひとつの例が彼が毎日の用事を完了するときに示されている。
「僕は泳ぐために市営プールに行った。朝が群衆を避ける(avoid)のに一番いい」
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His desire for solitude also is shown when he quits his job to take care of the house alone while Kumiko goes to work. He enjoys being home alone.
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彼の孤独への欲望もまた、彼が久美子が仕事に行っているあいだ家の世話をひとりでするため仕事を辞めるときに見られる。
彼は一人で家にいることを楽しんでいる。
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In the relationship between Kumiko and Toru, both characters seem to be developing in solitude.
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久美子とトオルの間の関係の中で、二人の登場人物は孤独のなかで成長しているように見える。
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Both characters hide many of their thoughts from one another and even though they are married Toru ponders on the fact that he may not know much about his wife.
ponder
【動】熟考する
重さの単位のポンド(pound)と同じ語源
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二人の登場人物は、彼らのお互いの(one another )考えの多くを隠し、彼らは結婚しているにもかかわらず(even though)トオルは彼の妻について彼が知らないかもしれない多くの事実について熟考する(ponders)
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以上がAlienationについての考察でした。
僕は、この作品を読んで、それほど孤立について思いを巡らせる(pounder)ことがなかったので、このように指摘されていることが意外でした。
なぜなら僕個人の視点では、それぞれの登場人物は孤立を求めているというよりも、適度な距離をもって人と関わることを求めているだけなのだと思っているからです。
それを"孤立"と換言されると、なんだか違和感を覚えるのです。
なぜなら孤立って”ネガティブ”な表現ですよね。
冒頭にalienationはネガティブな意味であると語意を確認しました。
ただ僕にはそれぞれの登場人物が”孤立”していると感じているとは到底思えないのです。
市営プールに空いている時間帯に行くことのどこが”孤立”なのでしょうか?
彼らは、世の中と適切な距離感を保って生きようとしているだけで、それが海外の読者には「孤立」しているように映り、僕には「独立した大人としての生き方」に見えるのです。
人に必要以上に依存せず、それでも別に「隠居」しているわけでもない。
そんな現代的でクールな生き方を表現している村上作品が、僕にとってはとても心地よいのです。
そして海外でも評価されているということは、この村上春樹的人間関係(適度な人との距離感)に共感している読者が相当数いるのではないか?と想像してみるのです。
復習
Alienation: Throughout the novel the characters are obviously related to each other but they never feel like they connect to one another. All of the characters develop independently and tend to live solitary lifestyles. This can be presented in Toru and Kumiko’s marriage. Throughout the novel, Toru presents himself to be one who seeks solitude. One example is presented as he completes an everyday task, “I went to the Municipal pool for a swim. Mornings were the best, to avoid the crowds”. His desire for solitude also is shown when he quits his job to take care of the house alone while Kumiko goes to work. He enjoys being home alone. In the relationship between Kumiko and Toru, both characters seem to be developing in solitude. Both characters hide many of their thoughts from one another and even though they are married Toru ponders on the fact that he may not know much about his wife.
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