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ブーブーブレイブ          第四話『赤信号、進む? 止まる?』

◯ゲームセンター
学生A(13)、学生B(13)がクレーンゲームをプレイ中。
草、学生二人の後ろで立ち見中。
学生A、つま先立ちになり、
学生A「ビマちゃんゲットするぞー」
学生B「おいおい落ち着けよ」
クレーンゲーム機の右奥には水着の女性モデル・ビマのフィギアがある。
草、集中する。周囲の音が聞こえなくなる。
草の心の声「そこは……、右押し5秒、上押し2秒」
取り損ねる学生二人。
学生A「あー」
学生B「なにやってんだー」
その場を去る学生Aと学生B。
隣のクレーンゲーム機では小学生A(9)がプレイ中。
しかし景品を取り損なう。
草と小学生A、目が合う。
草「えっ」
小学生A、鋭い眼差しで草を見る。
草「僕は勉強があるから帰るよ」
小学生A「お願い。弟が泣き止まなくって。あいつレッドレンジャーが好きだから、どうしても取りたいんだ」
草、小学生Cに近寄る。クレーンのゲーム機を見て、
草「でも、僕はいつも見てるだけだからなあ。お金ある?」
小学生C「うん」
レッドレンジャーのフィギアは右の真ん中にある。
小学生C「お兄ちゃんお金入れるよ」
草「取れなかったらごめんだよ」
草、集中する。周囲の音が聞こえなくなる。
草の心の声「右押し5秒、上押し3秒」
操作してレッドレンジャーの真上にクレーンがくる。
小学生C「いけー!」
だが足にも体にも引っかからず取れそうにない。
草「ダメか」
が、クレーンが頭をキャッチする。
そのまま搬出の穴にレッドレンジャーを落とす。
小学生C「お兄ちゃんありがとう! レッドかっこいい!」
去っていく小学生C。
草「君の年くらいからクレーンの観察してきてるからね。レッド、ヒーローかあ」
草、天井を見る。防犯カメラがある。
草「機械の方が安全だよ」
その場を去っていく草。

⚪御習のアパート(夕)
土壁にヒビが入っている二階建てのアパート。

⚪️同・郵便受け(夕)
黒のパーカーを着てフードを深く被った御習、複数並ぶ郵便受けの前に立っている。
御習の口周りには白いヒゲが見える。
御習、201号の名前の記されていない郵便受けを開く。
御習「ここにもないか。久しぶりに読んだ遺書75、あれどこにやったかな」
合法ドラッグのチラシを取り、郵便受けを閉じる御習。
近くの階段に腰掛けて、手にあったワンカップ酒を一口飲む。
御習、合法ドラッグのチラシのXX40年バーゲンという文字を見て、
御習「あの遺書を書いたのがXX20年。いまがXX40年。結局、ヒーローは現れず、この国は悪い方に傾いたままだ」
ワンカップ酒をまた一口飲む御習。
御習「あの遺書を書いてから20年が経過か、もう私は95歳」
御習、眼の前を向いて、
御習「だが、私が立ち上がるしかないな……」
体をガクッとさせふらついて手を床に置く。
御習「年には勝てんな」
空を見る。黒灰色の雲が出ている。
御習「誰か、頼む……」
前に向き直り右手を差し出し、握手の仕草をする御習。

⚪️マーブ城・玉座(夜)
大扉の横にはカニンとタコンが立って警戒している。
マーブ王、玉座に腰掛けて黒灰色の息の出るシーシャを吸っている。
その前には小ボス・ブキミシャ、中ボス・シャルガン、大ボス・ドドゴロスが布切れを全身で隠し片膝をついている。布切れは目のみ穴が空いており、ボス達の姿は見えない。
マーブ「ブキミシャ、どうだここの生活にも慣れたか」
マーブ王から向かって右のブキミシャが話す。
ブキミシャ「用意してくださった城の離れの別荘のおかげで、我々怪人も快適です」
マーブ王「シャルガン、ドドゴロスはどうだ」
真ん中のシャルガン、続いてマーブ王から向かって左のドドゴロスが返事をする。
シャルガン「大変に快適です」
ドドゴロス「いい具合だ」
マーブ王、シーシャの先でボス達を指して、
マーブ「そちらがどこから湧いてきたのか不思議ではあるが、戦力が増えるのは心強いの」
ドドゴロス「なに? 湧くだ?」
マーブ「なんだね? 吸うか?」
マーブ王、尻を横にし、黄色の煙を天井高く出すマーブ王。
ドドゴロス、鼻を手で抑え、
ドドゴロス「くせえ、いえ、なにもない」
マーブ王、首を左右に振ってゴリゴリと音を立てて、
マーブ「つまらん揚げ足取りはよせ。それよりもこの勢いのまま、金持ちと怪人の楽園を作ってしまおうではないか」
ボス一同「はっ!」
マーブ「でー、ラスボスのホタブーはどこいったのだ?」
キョロキョロするボス達。

⚪️黒灰のガスの上空(夜)
両手を腿につけたホタブー、お尻を茶色く光らせ、黒灰色のガスを尻から出して空を飛んでいる。
月明かりがそのホタブーの下にある黒灰色のガス雲を照らしている。
ホタブー、首を下ろしガス雲を見て、
ホタブー「汚れた人間による汚れた空気、悪意に満ちた美しい光景だ」
前に向き直るホタブー。
ホタブドン「匂う、匂うぞ。御習、お前はまだ生きている。あれから何十年が経ったな。さぞかし年老いてるのだろう。だが俺は、長い年月の末、この汚れた空気によってパワーアップした。お前なんぞイチコロよ! がははははははは!」

⚪️草の家・食卓(夜)
テーブルに向かい合って草と草ママが着席し食事中。
ご飯に味噌汁、焼き魚程度の食事。
草、テーブルの端にノートパソコンを開いている。富裕地の求人で検索しているが、まったくサイトの結果がでない。
草「アクセス制限してるよ。ねえ、ママ。勉強頑張ってたら富裕地の仕事につけるよね」
草ママ「うーん、基本的には大卒並みの学力が必要らしい。優良企業は賢い大人が占めてるからね」
草「大卒並み、じゃあ、まだまだ先か。もっと早めに勉強開始すべきだったよ」
草ママ「でも、まだクナークは警戒地区ではないから」
草「そうだね、まだ余裕があるね」

⚪️同・草の部屋(夜)
草、布団で仰向けに寝ている。
枕元には学習参考書。

⚪️夢
暗闇の中、御習の右手が握れと言わんばかりに差し出されている。
御習の手や腕は赤い光線が血流のように行き交っている。
御習「誰か、頼む……」
草、御習の手から後退りして、
草「ぼ、僕はヒーローなんかにはならない! ヒーローは苦難の連続、場合によっては死ぬんだ。そんなの嫌だ! 絶対に嫌だ!」
御習の手とは逆に逃げる草。

⚪️空
快晴。

◯道
照りつける眩しい太陽を襟足を伸ばした髪型の御習が見ている。
御習、前に向き直る。
手にはワンカップ酒。それを一気に飲み干す御習。
ノーヘルの不良たち五人ほどがスクーターに乗り、道路を通り過ぎていく。
酔っ払った御習、コンビニに入る。

⚪️コンビニ・入り口〜本コーナー
自動ドアを開け入ってきた御習、ワンカップ酒をゴミ箱に捨てる。
そのまま本コーナーへ。
壁の時計はAM10時を差している。
御習、本コーナーの角を手でつかみ、
御習「なにもできん、ただ死を待つのみ。情けない」
顔を上げた御習の視線の先に、赤色の『少年ビーム』がある。
タイトル『最終号/ヒーローよ永遠に』。
御習、目をハッとさせる。
☓  ☓  ☓
御習の回想。
パトカーが通過して御習(13)の顔が一瞬赤くなる。
パトカーを目で追う御習。次に赤い『少年ビームを』見る。
☓  ☓  ☓
御習「きっかけをくれた本。最終だと!」
御習、『少年ビーム』を取ろうと手を伸ばす。
突然、目の前のガラスが割れて、ハーレーにタンデムした不良が店内に入ってくる。
運転席の革ジャンの不良A(18)とタンデムシートの革ジャンの不良B(18)が降車して御習のそばに向かう。
尻もちをついた御習、上着のセーターを引っ張られる。
不良A「こい!」
不良Aも不良Bも、半笑い。

⚪️道~コンビニ前
学ランの草、学生カバンを脇に抱えて早足で歩いている。
草「やっべ、夜まで勉強しすぎた。遅刻、遅刻」
草、膨らんだ腹を手で抑える。
草「なおかつ、なんかやけに腹が張るし、最悪、最悪」
コンビニまできた草、本コーナー前の割れたガラスに気づく。
上を見る草。
屋上の御習の背中が見える。
草「なにかあったんだ!」
草、立ち止まる。

⚪️ビル五階
不良Aと不良Bが、首を回したり手を振ったりしながらビルの端の前ににいる御習に歩み寄る。
不良A「殴りがいのある顔してんな、95歳」
御習「なっ、なんで知ってる! なにが目的だ! 金ならある!」
不良B「金じゃあ手に入らないんだよ、御習さん。手応えのある暴力ってのは金ではね」
御習、深刻な顔。

◯コンビニ前
屋上の御習を見て、
草「脅されてるんじゃ! どっ、どうしよう!」
足が震えて動けない草。
草「違う、危ない、逃げないと」
だが、草の足は震えて動けない。

◯ビル五階
御習、一端上空を見て、不良Aと不良Bを見据える。
不良A「なんだ、空にでも逃げる気か?」
不良B「ホタルみたいに飛べもしないのに?」
御習「ホタル? ひょっとしてお前ら」
不良Aと不良B、ヨダレを垂らして、
不良Aと不良B「ほーたーぶのーひーかーり」
御習「ホタブーの! なんであいつが!」
突進してくる不良Aと不良B。
御習、腕をバツにして、
御習「私はレッド! レッドは不滅だ! 不滅なんだ!」
突進してくる不良Aと不良Bの肩で突き飛ばされる御習。

⚪️ビル五階
吹っ飛んだ御習、ビルを背中から落ちていく。

⚪️コンビニ前
逃げようと屋上を背後にしている草。
(スロー)屋上から御習が落ちてくる。
振り返る草。御習を見てハッとした顔になる。
草、前方を見る。
コンビニの本のコーナーの床に、真っ赤な『少年ビーム』。
☓  ☓  ☓
ビルから落ちてくる御習。
☓  ☓  ☓
草の眼の前にクレーンゲーム機のボタンが一瞬表れる。
草の心の声「落下地点は右に4メートル、直進10メートルほど」
(スロー終わり) 
草、落下地点にダッシュする。
☓  ☓  ☓
地面に落ちてくる御習。
カツラが取れてスキン・ヘッドになる。
☓  ☓  ☓
草、御習の落下地点に向けてスライディング。
草「届けー!」
☓  ☓  ☓
(スロー開始)背中から地面に落ちてきた御習、草の腹の上に落ちる。
御習、軽く弾んで草の方に向き直り、御習が右手を突き出す。草が右手でがっちり御習の手を握る。
抱き合う二人。(スロー終わり)
御習「たっ、たっ、助かった!」
御習の頭に綺麗にカツラが被さる。
不良Aと不良B、屋上から覗き込んでくる。
不良A「まだ終わってねーわ!」
不良B「いまからいくから待っとけ!」
草「やっべ! 逃げないと! 僕、後は知らないから!」
ダッシュで逃げる草。
御習「待ってくれ!」
草の後を追う御習。


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