見出し画像

AIに駆り立てられる世界

 昨今、生成AIが目まぐるしい進化を遂げている。これまで、AIチャットボットというと、chrtGPTや、Copilot、Gemini、Claudeなどが主流だったが、最近中国企業の作ったAIであるDeepSeekが注目を集めている。中国企業の開発したAIということもあり、情報セキュリティの面で危険であるなどという言説をTwitter(現:X)で見かけたが、とにかくnoteのネタに困っていた私は今あげたAIたちに「AIと総かり立て体制を結び付けてレポートをかくとしたらどんなテーマでかけばよいでしょうか」というプロンプトを投げかけた。

 そこで出たテーマは残念ながら、大したものではなかったし、たまによさそうなものがあっても、他人のnoteから引用したものだったりした。しかしこれらのアイデアとハイデガーのテクストを眺めながら悩んでいた時、自分の中である考えが浮かんできた。

 なので本論ではAIによって我々の世界のすべてが徴用物資(ある目的の為に必要だとして徴用される物)として駆り立てられているということを示す。

 最近、Vtuberの「白銀ノエル」と「夏色まつり」が相次いでファンアートタグを使用してAIイラストを投稿しないでほしい旨をTwitter(現:X)に投稿した。これによりAIイラストを生成しているアカウントが反発するなどの議論が行われていたが、この二名のVtuberは、ハイデガー的な感性を持っているように感じた。

 つまり、ポイエーシス(創造を意味するギリシア語、ここではハイデガー用語として使っている。)をAIという機械に任せるという行為に対する嫌悪感を持っているからである。「スマートな悪」 という本は、スマートさが私たちに与える影響を、痛みがもつ感じた瞬間に脳内を支配して、ほかのことが考えられなくなる性質と同質のものであるとし、「スマートデバイスの本質は、余計なものと関わらなくて済む、という点にある。そしてそれは、痛みが私たちを他者との関係から切断することと連続している。」 と述べている。

 私はこの余計なものと関わらなくてよいというものの究極がAIであると考える。つまり、知能さえもAIに、人工知能に、外注してしまうのである。

 そして、AIはその過程で大量のデータ学習を行う、それは文字通りすべてのことを学習させること、人間の社会活動や個人的な行動もふくめた世界のすべてが生成AIにとっては精度を上げるための徴用物資なのである。

 そして、すべてを学習した最強のAIができた時、AIはスマートな痛みとなり、人間をその痛みに支配することで、ポイエーシスを完全に忘れさせてしまうことだろう。AIが進化して自分で考えるよりもいいレポートの文章を出力できるようになった際に、果たして使わずにいられるだろうか。

 戸谷洋志『スマートな悪 技術と暴力について』株式会社講談社、2022、p.39

いいなと思ったら応援しよう!