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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第四部  第五十五話「鏡からの光」

第五十五話「鏡からの光」

「その占いの道具がどんなものかご存じなんですか? 

あったとして誰でも使えるものなんですか? 」

「ん? さぁな。

だが手に入れれば何とでもなるだろう? 

エリスさんは宝石や鏡を使って占っていた。

宝石と言っても価値のなさそうな原石に見えたが、

あんたは知ってるか? 」

「知りません。

ただの石と鏡では、

処分されてしまったと思います」

「まぁ、そうだろうな。

じゃあ俺は、そろそろ失礼するよ。

もうここには来ねえよ。

あと、監視カメラは撤去させる」

井口が立ち上がった。

「誰が設置したかもわからないものを、

撤去できるんですか? 」

瑠璃は井口と一緒に玄関に向かった。

「俺を誰だと思ってる。

権力とはこういう時に使うんだよ」

「何かあったら警察に言うより、

あなたに相談したほうがいいという事ですね」

瑠璃はほとほと嫌になり、顔を顰めた。

「あんたがもう少し若きゃ、

孫の嫁にしたいところだったね」

「それはどうも」

瑠璃は楽しそうな井口を追い出すと、

車が出て行くまでじっと見ていた。

両親の死の真相を思わぬところで知ることになり、

瑠璃の気持ちは重かった。

フォスを守るのは当然だが、

この命は簡単に殺されるわけにはいかない。

両親と祖母が命がけで守ったものなのだから。

瑠璃が家に入ろうとすると、

フォスと妖精たちが裏庭から走って戻ってきた。

「楽しかった? 」

今日はボールと縄跳びを手にしていた。

「僕、縄跳び飛べたよ」

「そう? 凄いね~おやつあるから食べようか」

「シアンは? 」

「もう起きてるよ」

瑠璃の言葉にフォス達は走って家に入って行った。

それからしばらくすると、

井口が言うように、

いつの間にか監視カメラは外されていた。

権力は人を生かすも殺すも自由自在という事か。

これじゃ手放したくないわね。

瑠璃はため息まじりに呟いた。

その日の夜、

瑠璃たちの就寝中、

仏壇が光った。

まるで何かを受信するように光は点滅し消えた。

瑠璃は奥の寝室で、

大型のソファーベッドでフォス達と一緒に寝ており、

フォスが一人部屋を使えるようになるまでは、

とりあえずここで妖精も一緒に使うことにした。

仏壇が光るのと同時に、

裏の竹と鏡も点滅していた。

鏡や杖は瑠璃が作った魔法空間にあるので、

寝ていた瑠璃には気づくことがなかった。

居間の大きめのサークルで寝ていたシアンは、

輝く仏壇を不思議そうに見ていたが、

吠えることはなかった。

危険でないことが分かったのかもしれない。

そしてしばらくの点滅後、

輝きは消えた。


翌朝はいつものように早起きした瑠璃は、

シアンのお散歩をして家に戻った。

犬が来てからは今まで以上に、

朝が早くなった。

部屋をのぞくと、

フォス達はまだ気持ちよさそうに寝ていた。



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