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元セフレと会ってきた話
その彼とは、元カレと出会う前にフリーだった頃、会社の飲み会帰りに声をかけられて飲みに行って、意気投合したのがきっかけだった。
後日また2回ほど会って、ちょうど寂しかった時期だったから、身体の関係を持った。
しかし、私は彼とはなぜか付き合う気になれなくて、元カレと付き合ってからはLINEをブロックし、音信不通にしていたのだった。
元カレにフラれてから、LINEブロックを解除し、「彼氏と別れた」と連絡を入れた。
「そうなん!俺んとこいよ」速攻で返事が来た。
自分でもなんて身勝手な女なんだと思う。そして都合のいい男、である。
マッチングアプリで2人と会ったけれどうまくいかなくて、ちょっとイイ男で寂しさを埋めたい気分だったのである。
彼は7歳上で、背が高くマッチョで営業マンで、バツイチなので、わたしより人生経験が格段に豊富で話していて楽しい。
そういえば、彼の家では猫を飼っていて、はじめて家に行ってセックスをしたとき、猫がガン見してくるので思わず笑いそうになってしまった。
その日は、彼の家でハイボールを飲みながら、元カレと別れた話を1から話して、これから復縁もしたいけど、新しい出会いも同時進行で探す予定だと話した。
「俺は、元カレ、戻ってくると思うけどな。」
「なんで、そう思うの?」
「まりもが、いい女だから」
私の機嫌をとるためなのかもしれないけれど、こういうことを言われると、素直にうれしいなと思う。
「だからと言って俺は、元カレとやり直すのは反対やな。1回別れようとしてるし、また同じこと繰り返す気がする。ほかの人と同じ意見やな、もっと良いやつおるって思う。やから、ゆっくり冷静に考えて。」
俺にしとけよーとかではなくて、私のこれからのことを一緒になって考えてくれる。
自分には結婚願望がないから、私と付き合っても幸せにできない。
その代わり、わたしの欲しい言葉や、ちょうど良い温もりをくれる。
「つらい時の止まり木くらいにはなってやるよ」そんな思いを彼から感じた。
男の人って、こうやってみんな優しいものなのかな。わたしは、今まで、人の優しさに案外気づいていないのかもしれない。
その日は、彼の話もたくさん聞いた。
家で飼っている猫は、捨てられていたのを拾ってきたのだということも初めて知った。
親きょうだいが亡くなっていることも。
今まで自分の話をするばかりで、彼に全然興味がなかったんだな。
はじめて、この人のことをもう少し知りたいと思ってしまった。
彼はお酒が弱いので、すぐに寝ようと言う。
私はもう少し話していたかったのだけれど。
翌朝、一緒にネトフリでドラマを見た。思わず集中してしまったし、2人で感想を言い合ったりして楽しかった。
彼と過ごした2日間だけは、元カレのことをあまり考えなくて済んだ。
帰り際、
「ねえ、もし私が本気になったらどうする。」
「え・・・」
彼は、困惑した表情をした。
「冗談やで」
すると安堵したあとに少し寂しそうな表情をする。
男の人って、言葉じゃなくて表情に出るんだなぁ
そういえば、元カレもそうだったけ。
言葉にはしてくれなかったけど、きっとわたしを愛おしいまなざしで見ていた時もあったのだろうか。
どうして、好きではない男の人はわかるのに、元カレのことはわからなかったのだろう。
余裕がなくて、分かろうととしてなかっただけなのかもしれない。
言葉だけじゃなくて、もっと表情や仕草、態度、行動を見ればよかった。
次の日、1人で家に居ると寂しさが込み上げてきたので、
その元セフレの彼にLINEをした。
「1人で家にいると寂しさがこみあげてくる😢
そのうち慣れるかな?」
「俺は、いつまでたっても慣れないよ。」
てっきり悠々自適の一人(と1匹)暮らしなんだと思っていた。
孤独と闘っている人は他にもいるんだなぁ。
わたしだけじゃなかった。
この世界を少しだけ知ることができたから、わたしもそのぶん、人に優しくなれたらいいな。
寂しさを埋めるだけの関係の彼に、大切なものを教えてもらった気がした。