
三途の川?
今でも鮮明に覚えている
夢から覚めてしばらくは、
その光景を絵に描くことができるほど
鮮明に脳裏に焼き付いていた
私は幼少期から、気管支喘息を患い、
季節の変わり目にはよく発作を起こしていた
昔は今のように喘息の治療法が広まっていなかったのか、
町医者の知識不足なのか、
病院に行っても苦しみからは逃れられず、
ただ、数日かけて発作が落ち着くのを待つしかなかった
そうやってやり過ごしながら歳を重ねた
発作が起きている間は
息が苦しいので横になることもできず、
夜通し膝を立てて座ったままという日が続く
途中で座る姿勢に疲れて、
体を丸めた状態で横向きになる
そんな状態でうとうとする間に見た夢
夜
木造の塔の上から下を見下ろしている
下には川が流れていて波打っている
そこにはたくさんの白い狐が川一面に
泳いでいるのか水面に浮かんでいる
中には足の無い狐もいた
その光景を上から眺めながら
「早く逃げなきゃ」と心の中で思う
次の瞬間、螺旋階段を降りて行く
下まで降りると見知らぬおばあさんが
「出口はあっち」と指差して
昔のお金(和同開珎のような)を数枚くれた
そこで見知らぬ男の子と出会う
「一緒に逃げよう」と言って急ぎ足で建物を出た
外は時代劇のような昔の風景
地面は土の道
とにかくすぐにその場を立ち去りたかった
二人で一心不乱に走った
そこからは覚えていない
目を覚ましたときに
今まで見ていた夢が鮮明に記憶に残っていた
傍にいた母が、一瞬息が止まったと言った
私は三途の川を渡るところだったのかもしれない
おばあさんがくれたお金は
三途の川を渡るときに持っていくお金だったのだろうか
目覚めてよかった
生かしてくれた神様に感謝した
この命、大事にしよう
ところで、
一緒に逃げた男の子は誰だったのだろう
その子もきっとどこかで元気に生きているのだろう