『言語学クエスト:ことばの世界をめぐる冒険』⑱
ことラボ りょ(2024)『言語学クエスト -ことばの世界をめぐる冒険- 』のChapter2「意味の迷宮」、【ことばの意味はどう変わっていく?】からのメモ、第一弾です。
ことばの中には、もともとの意味とは異なり、間違った意味で使われ続けているうちに、いつしか「正しい意味」として認められるようになったものがあります。
例えば、「なし崩し」。現在使用されている意味は、辞書に以下のように書かれています。
事実を積み重ねて、そのことが既に決定されたこととして成り立たせてしまうこと
私たちも、「ずっと継続して頑張ってたんだけど、一回サボったら、『なし崩し』的に全てダメになっちゃった」、のようにネガティブな意味で使っています。
しかしながら、かつては誤用だったみたいです。「なし崩し」のもともとの意味を、りょさんが次のように書いています。
「なし崩し」の「なし」は漢字で「済し」と書き、「借金を返す」という意味があります。「崩し」は「少しずつ」の意味で、「崩し」は元々「少しずつ」の意味で、「なし崩し」は元々「借金を少しずつ返す」、そこから転じて「物事を少しずつ片付けていく」という意味で使われていました。コツコツとやっていくような、ポジティブな響きがあったようです。
「志望校合格に向けて、『なし崩し』に努力する」みたいな、前向きなニュアンスをもつことばだったんですね。そう思うと、「なし崩し」からしたら、迷惑な変化な気がします。正から負の意味への変化のワケは、「現在の『いつの間にかこんなことになっちゃった』的なネガティブな意味は、おそらく『なし』を『無し』だと思ったり、『崩し』のイメージから連想したりして生まれたのでしょう」と本書に書かれていました。
つまり、「単語と意味の繋がりは恣意的で、ちょっとしたきっかけや誤解で変化しやすい」(p.57)ということみたいです。ボクらが普段使っていることばも、結局は「現状での暫定的な意味」ということになりますかね!