【日本年金機構からの回答】障害年金を申請できるということは、日本年金機構が化学物質過敏症を確立した疾患として認めていることを意味しているのか?
日本年金機構からの回答
前回、
厚労省が確立した疾患概念を認めていない「化学物質過敏症」で、なぜ障害年金が申請できるのか?
申請時に”化学物質との因果関係がある”ことを問う書式が設定されているが、実際「化学物質過敏症の原因となる化学物質」は特定されていないのに可能なのか?ということを書きました。
この続きで、日本年金機構に問い合わせていた内容が、12月初旬に戻ってきたので、その内容も含めてあらためて整理しておきたいと思います。
化学物質過敏症の定義について
厚労省は、化学物質過敏症を確立した疾患と認めていないが、日本年金機構は申請事例として挙げている以上、認めているということなのか?という問題です。
・障害等級の審査にあたっては、傷病名にとらわれず、障害の程度について日常生活能力等によって個別具体的に判断を行っている
・いわゆる化学物質過敏症を含め特定の傷病に関する特段の定義づけは行っていません。
世の中で言われる「化学物質過敏症で障害年金を請求できる」のはその通りなのですが、ただし、化学物質過敏症じゃなくても実際の障害の程度により申請が可能であり、そして化学物質過敏症の定義づけを年金機構で行っているわけではない。
そうすると、「化学物質過敏症で障害年金を請求できるのだから、日本年金機構は化学物質過敏症を確立した疾患概念として認めている」わけではなく、請求が可能なことと、疾患概念を認めたこととは、関係がないことになります。
回答としては、前回記載した厚労省の回答と内容はほぼ同じです。
とはいえ、ではなぜ申請時に提出が必要な「照会様式」で、化学物質と症状発症の因果関係があるかが問われるのでしょうか。
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これだけではなく、排気ガスや殺虫剤等さまざまな”化学物質”にどのくらい反応するか、を問う項目もあります。(※ただし「どのくらいの量に」曝露した場合のことを聞いているのかは不明)
ということは、日本年金機構は、ある種の化学物質が化学物質過敏症の原因であると考えているのでしょうか?
”化学物質”が「化学物質過敏症」の症状を引き起こすというエビデンスは独自に確認している?
・「化学物質」について、当機構では特段の定義をお示ししているものはありません。
・障害等級の審査にあたっては、傷病名にとらわれず、障害の程度について日常生活能力等によって個別具体的に判断を行っており、ご指摘のような因果関係の特定等を行うものではありません。
・審査の必要に応じて、診断書の内容等について、診断書を作成した医師等に紹介することはあります。
回答の通りなのですが、こうした項目があるからといって、日本年金機構として化学物質曝露と症状発症の間の因果関係の特定を行っているわけでもないとのこと。
とりあえず日本年金機構が「化学物質過敏症の原因物質」なるものを認めたわけではない、ということは理解できました。
しかし、そうするとこの「照会様式」は何のためにあるのでしょうか?
「症状発症と化学物質曝露との間の因果関係」を聞いておきながら、そこは特定するわけではない、因果関係はなくてもOKで「障害の程度について日常生活能力等によって個別具体的に判断」される、のであれば、この「照会様式」を記入する意味がないのでは…??
照会様式は何のため?
・化学物質過敏症に係る障害等級の審査にあたって、障害の程度の判定の参考となる検査数値等の異常が見られない事例が多く、障害等級の判定が困難であったことから、平成24年より、過去の認定事例を参考に作成された照会様式及び認定事例を活用することとしています。
・請求者や診断書作成医の利便性向上のため、令和3年に当機構のホームページに公開することとしました。
”請求者や診断書作成医の利便性”とは、何でしょうか。
結局「照会様式」が事実上のチェックシートのようになっているため、これにこの項目をチェックしていけば申請が可能、という意味では非常に便利ではあります。
しかし、提出を受けた側からすると、チェックシートを提出されたところで、認定には関係がないわけです。
事実上この項目は無意味であるため、「障害の程度について日常生活能力等によって個別具体的に判断」するための項目だけ聞けばいいのではと思うところではあります。
しかしながら、どなたか、この様式が本当に必要な理由をご存じの方がいらっしゃったら教えていただきたいです。
プラスマイナス両面、いろいろ推測するところはあるのですが、結局よくわかりません。
認定事例の「解毒剤処方」事例について
過去の認定事例として日本年金機構のサイトで公開されている診断書の記載を見ると、医師が「解毒剤処方」や「化学物質を避ける指導」を行った形跡がありますが、これらはそもそも国が効果を認めたものではありませんし、厚労省研究班の報告書でも否定的な見解が示されているものです。
しかし認定事例の診断書として記載することで、このような”治療”が化学物質過敏症の一般例のようにとらえられる恐れはないのでしょうか。
・過去の認定事例を参考に作成されたもので、請求者や診断書作成医の利便性向上のための参考として、ホームページで周知しているものですが、いわゆる化学物質過敏症については、引き続き、医学的知見の収集の状況等を注視してまいります。
質問に対する明確な答えはもらえなかったのですが、化学物質過敏症に「いわゆる」がついているところあたりが、国の見解を踏襲しているという意図かとは受け止めました。
とてもプラスに考えると、
・診断書の事例として、わざと「解毒剤」「化学物質を避ける生活」を挙げる
→しかしこうした”治療”(とされるもの)でも良くならなかったから、いま申請している
→つまり、こうした”治療”(とされるもの)に効果がない(という警告)
ということをあえて示していると取れるかもしれませんが、普通は「認定事例に書いてあるんだから、みんなやっている”治療”なんだろう」として、自由診療を受けるハードルを下げる効果のほうが大きいのではないかと感じました。