※20240819更新「化学物質過敏症」自治体の情報提供サイトの一部が変更に

※こちらの内容は、自治体の回答があり次第適宜更新します。

<「化学物質過敏症」の伝え方 自治体掲載の「厚労省研究班のパンフレット」は厚労省の見解とは全然違う>として、化学物質過敏症について「病態も原因も不明」とする厚労省の見解とは違う内容のパンフレットが自治体で引用・掲載されていることについて記載しました。


自治体の回答と対応

今月(2024年8月)、このパンフレットを掲載していた自治体、および、このパンフレットと内容的には同じような記載を行っている自治体に
・なぜ厚労省の見解と異なるものを情報源として引用しているのか
・掲載内容について自治体独自でエビデンスを確認したのか
などについて、問い合わせを行いました。

まだ回答がない自治体も多くありますが、回答のあった自治体の対応としては、現状以下のようなものがあります。
①サイト内容を更新
②サイト内容の更新を検討
③厚労省からパンフレットを使用しないようにという通知があるまでは、サイトは変えない。積極的には(自治体から厚労省に)問い合わせない。

サイトはどう変わったか

主な変更点※画像・リンク含む


こちらは宮城県で2024年8月5日時点で掲載されていたページです。
パンフレットのほか、症状や原因についての記載、自治体独自で制作したリーフレットの掲載が確認できます。

宮城県のサイト(20240805)
宮城県のサイト(20240805)


次に、2024年8月7日に更新後のサイトです。

宮城県のサイト(※20240807更新後・リンクあり)


配慮は求めているものの当該パンフレットや原因についての記載がなくなっています。また、独自で作成していたリーフレットも見当たりません。



※20240819追記 長野県の新旧サイト比較です。
旧サイト 

長野県サイト20240805時点

長野県更新後のサイト 香りの説明についても更新あり。別途「香りのポスター」の項目に貼ります。

長野県20240819※リンク

このほか岐阜県のサイトでは、「香料自粛のお願い」のページにあった化学物質過敏症についての記載がなくなっています。


ただし、サイトを更新した自治体でも、パンフレットから引用していた部分は削除したものの「化学物質過敏症の原因物質」などの独自の記載を残しているところもあります。(高知県サイト20240809更新)この記載内容についてですが、県独自で化学物質過敏症の病態や原因などのエビデンスの確認は行っていない、ということです。

(厚労省が化学物質過敏症についての科学的エビデンスの根拠として参照する2017年の『科学的根拠に基づく シックハウス症候群に関する 相談マニュアル』の報告でも、シックハウス症候群と化学物質過敏症を区別したうえで、化学物質過敏症については二重盲検法による試験の結果などから、「科学的には化学物質曝露と身体反応には関連はなく,症状の原因が化学物質とはいえない」としています。※簡易版はこちら

厚労省の方針と違う情報掲載の経緯

なぜこのパンフレットの内容が掲載されたのか、については
「過年度より掲載されていたものである」
「他県のホームページ等を参考に作成した」
などの回答がありました。
結局掲載の経緯についてはよくわからない、もしくは回答がないこともあります。

ただ、一方で「香りのポスター」については、下記のように要望があっての掲載、というケースもありました。

「香りのポスター」は?


続いては、5つの省庁が合同で出したポスター『その香り 困っている人もいます』(※リンクは消費者庁)についてです。
1つ前のnote<「香害」は「化学物質過敏症」なのか ※メディア側からみた問題点>にも書いたのですが、厚労省はこのポスターを化学物質過敏症と結び付けてはおらず、「香りによって気分が悪くなる人がいるのは事実なので、香りの製品に関しては注意して使用してください、という意味で出した」としています。

しかし実際は化学物質過敏と関連付けられて自治体のサイトに掲載されているケースが多数あります。
こうした自治体には、合わせてこのポスターについても質問しました。

現在まで…
・化学物質過敏症の原因の一つとして「臭い」も含まれるという考え方もあり、また複数の市民から臭い、いわゆる「香害」についての注意喚起を行ってほしいと要望があった
・化学物質過敏症の啓発の1つとして掲載してくださいという要望があったので掲載した。

などと、市民の要望を受けての掲載だったとの回答が届いています。
ただし、化学物質過敏症に関する記載を変えた自治体でも、香りのポスターについての掲載を変えたところは今のところないようです。(20240809現在)


※20240819追記 長野県と岐阜県が香りと化学物質を切り離して記載するようになりました。
長野県旧サイト 「化学物質過敏症と紐づけて考える方もいらっしゃるため、掲載していた」ということでした。

長野県サイト20240805時点

長野県更新後のサイト タイトルも変わっています。

長野県サイト20240819時点※リンク

岐阜県は「香料自粛のお願い」というタイトルが「香りへの配慮について」と変更になったほか、以下の文言が変わっています。

更新前:「香水・整髪料・柔軟剤・洗剤・シャンプーなどに含まれる香料は、アレルギー体質や化学物質過敏症の方など、人によってはアレルギー症状や喘息、頭痛、めまいなどを誘発することがありますので、ご配慮いただきますようお願いします」

20240819更新後:「香水・整髪料・柔軟剤・洗剤・シャンプーなどに含まれる香りで頭痛や吐き気がするという相談があります。香り付き製品の使用に当たっては、周囲の方にもご配慮くださいますようお願いします」(※リンクです)



自治体に質問した理由と今後

自治体に質問したのは、「国の見解と違う見解を載せているのはけしからん!」というわけではありません。
科学的に合意されたとは言い難い状態で、ある特定の見解だけが自治体に掲載されている状態であることを問題と考えています。

国の見解が間違っていて自治体の記載内容が正しいのであればその根拠を示すべきであると思いますし、「国とは異なるが見解の1つ」として紹介するのであれば、最低限「厚労省は病態も原因も不明としている」ということと、上記の研究結果(『科学的根拠に基づく シックハウス症候群に関する 相談マニュアル』)も紹介しなければ、サイトを見る人が得る情報が偏ってしまうと思うのです。

「自治体が掲載している情報」となると信頼度も大きく、メディアの人間でもあまり疑問をもたないところであると思いますので、今後もクリアにしていきたいと考えています。