化学物質過敏症 立憲民主党の政策集「長期滞在型療養施設を建設」は”対策”になるのか
本日(2024年10月27日)は衆院選の投開票日でした。
立憲民主党の政策集に化学物質過敏症に対する記載を見つけたので、その内容を見ていきます。(党への批判が主旨ではないです)
化学物質過敏症が立憲民主党の政策集に
とあります。
国会答弁を検索すれば、どの議員が力を入れていて、どのような質問を行ってきたかもわかります。ちなみに過去の政策集にも化学物質過敏症は登場しています。
以前に何度か触れていますが、シックハウス症候群と化学物質過敏症は厚労省研究班の報告書でも別物として扱われています。
化学物質過敏症については、「化学物質による健康リスク」であることに対して否定的見解も示されています。
そうした状況にある中で、後段の「長期滞在型療養施設の建設」について、考えていきたいと思います。
化学物質過敏症の長期滞在型療養施設とは?
『あなたも化学物質過敏症?』という書籍には、化学物質から隔離して治療を行う「環境施設」(Environmental Control Unit=ECU)、およびECUと一般社会の中間的な生活施設として「コロニー」なるものが紹介されています。紹介されているのは海外の事例です。(日本でも旭川市で実験的に転地療養施設が設置されたことがあります。その後なくなった経緯までは調べ切れていません。)
化学物質から隔離した生活を送る場である「コロニ―」の例では、化粧品や殺虫剤や新しい印刷物は置かない、食事は完全無農薬の有機野菜で、水は山の地下水をくみ上げた安全な水、などと紹介されています。(植物がもともと含む”化学物質”は問題ないのかが気になるのと、地下水が安全なのかどうかは疑問がありますが)
厚労省研究班の報告書では
厚労省研究班の報告書では、化学物質過敏症の病因は明らかにはなっていないことを前提に、「化学物質から離れた生活を送ること」についても米アレルギー免疫学会(当時。1986年…40年近くも前です)の提言を念頭に注意を呼び掛けています。
旭川市で転地療養の施設を設けて研究が行われたのは2000年代初めとのことですが、その研究結果はこちらの報告書の科学的根拠として採用されていないようです。(当時の研究グループの発信によると、自覚症状の改善なども認められたとのことですが、中途退去者が多い…などの研究の問題点も書かれています。)
これ以外に同様の研究があるかはわかりませんが、もし「転地療養で化学物質過敏症が改善された」というエビデンスが集まっていれば、(化学物質が原因かは別としても)この報告書で紹介されていたのではとも思います。
建設が先?証拠の積み上げが先?
現段階で十分に効果の検証もできておらず、むしろあえて注意が呼びかけられているような状態で、いきなり各都道府県に長期滞在型療養施設を作るという政策…を立てるのは、野党の立場だからできることなのかもしれません。政策集で「科学的知見を充実させる」と書かれているので、転地療養に関する科学的知見が充実してから具体的な政策=施設建設 を考えても遅くないのではという気もしますが、いずれにせよどのようなプロセスで&どういった情報を参考に政策が立案されているのかは気になるところではありました。
細かすぎるのでメディアは取り上げないでしょうし、これだけで投票先を決めた人はいないでしょうが。