【詩】甘いクレイジー
この世界の一人称はまだ確定していなくて、自分と隣の人との境目が曖昧なまま、地平線の果てまで続いている。膨れ上がった自尊心でくすんだ雲の色を、冷たい落ち葉が彩るけれど、卑下すら忘れたタバコの火は、他人との違いを歪ませる。
それでも、雨に溶けた歴史の音が、窓を伝って私の今日を教えてくれる。街灯の光を夜だけが照らしている時間、私はポケットにしまった雨粒の肌触りを確かめる。それは温かく艶やかで、とても偉大なものに思えた。
骨なった思い出は、頭痛で軋む金平糖として、紫陽花の中に忘れられる。座面に広がる星屑のような輝きと、解けた三つ編みのような懐かしさを放ちながら。
はじめましてと一緒にさよならが歩き出して、私は忘れていた誰かを好きになる。
あなたが好きです。
だから、あなたの今日が規格化された不幸で満ちればいいと思っています。
この気持ちが、テレビから流れる銃声と重なった時、私はようやく夢を叶えることができる。あなたを救うことができる。
恋が自らの熱でその意味を溶かしてしまわないのは、偽者たちが嘘をつくからだと、昔、本棚に住んでいた人が教えてくれた。きっと、私のはもう少しで溶けるだろう。
2人になったら、自分たちで存在を交渉しなければならない。漂流者は列車には乗れない。駅はもう雨で燃えてしまったけれど、たぶんこれからもっと爛れていく気がするから、いっそのこと一生分の太陽を私の中に刻んでおけばよかったと後悔した。
紙ひこうきが飛びながら撒いた笑顔には、機械仕掛けの花束が仕込まれていて、目を見開いたときの危うさはすでに犯罪者かもしれない。それなのに、あなたは面白くないと言って空をにらむ。その顔は美しく、水たまりをなぞっているみたいだ。
ずっと夢を見ていたい。でもいつからか、私たちは願いを捨てた凶器だと見なされて、みんなが待ちわびた草原の束を、コーヒーの香りを頼りに歩いている。こんな日にすら正しい気持ちでいられなかったとしたら、それは私が間違っているから、あなたがちゃんと叱ってください。