かけ算順序批判に対する見解
ふつうの生活を送られている方には、信じられない話かもしれませんが・・・
主としてツイッターでですが、小学校の先生に対し「そんな教え方は、ダメだ!」と、からんでまわっている人たちが相当数います。
気晴らしにと、はじめてツイッターをやってみた学校の先生など、SNSに不慣れな方にとって、いわれのないところで急に自分が多数から執拗にからまれてるのは、ショックなことでしょう。
彼らのからみ方は、執拗で悪質です。
いやな思いをしていらっしゃる方が多くいます。
からまれた小学校の先生方からしても、ほっとけばいいし、気にしなければいいだけの話ですが、・・・
それでも、強い問題意識を感じます。
私も、時間がとれるときに、最低限のことだけでも発信していこうと思いました。
そこで今回は、彼らのもっとも大きな主張である「かけ算に順序なんてない」・・・という主張について、先に私自身の見解をまとめておきます。
一口に「かけ算に順序なんてない」・・・といっても、いろいろなポジションがあるようです。順にみていきましょう。
1.かけ算に「正しい」順序なんてない!
・・・なら、まだわかります。
というか、まったくその通りだと思います。
学校の算数でも、「(1つあたりの大きさ)×(それがどれだけあるか)」、「(全体)×(割合)」といった、かけ算の使い方を習いますが、これは理解を定着させるため…というか、そもそも『かけ算とは何か』ということを示しているものですし、・・・
私自身も、積で表される式がどういう順で表されていても対応できなければいけない、自分でも順番も自在に操れるようにならなければいけない、という指導方針を持っています(くわしくは、こちらの記事参照)。
ただし、・・・「だから何?」・・・という印象です。
3×4と4×3が、同じ答えになることは、かけ算を習った小学2年生でも知っています。
かけ算の順番を入れかえても答えは同じ・・・という、あたりまえのことを言ってドヤられても、リアクションのとりようがありませんね。(私自身、彼らに何度かからまれたことがありますが、こういうのが本当に多いです。ゆくゆくは、このマガジンでも紹介していきます。)
2.かけ算に順番なんてない!
この時点で、けっこう苦しいですね。
かけ算の式も、左から順に書く以上、そこには必然的に順番が生じます。
仮に両手を使って、2つの数字を同時に書いたとしても、読むときには左から順に読むことになります。
これ、一見、単純すぎるように思えるかもしれませんが、私の主な主張です。
特に私の場合、塾業をやっているので、指導の際に、「全体」と「割合」を同時に発声できないだろ・・・ということが、頭に浮かびます。
思考の過程でも、「全体の量がこれだけで、そのうちの何%だから…」とか、「1Lあたりの物質量がこれだけで、それが3Lあるから…」など、そこには順番があります。
もちろん、「(全体)×(割合)」の順だけでなく、「(割合)×(全体)」と考えられてもいいね、とアドバイスした方が適切な場合はするでしょうが・・・・
そうでもない場合は、「逆の順番でもいいね」などと、わざわざ言いません。あたりまえです。生徒にとって無意味な情報です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「順序強制は、よくない」、「式のかけ順で、×にするのはおかしい」・・・なら、わからなくもないです。
そう思われる人がいても、不思議ではありません。
でも、ヘイト活動をしていると、その理論も、どんどん進むようです。
次のような主張も、よく聞かれます。
3.「かけられる数」も「かける数」もない!
・・・まぁ、(計算結果は同じなので)まちがったことを言っているわけでは、ないのですが・・・
・・・そう考えることに、何の利点があるのか?・・・理解できません。
「もとになる数(かけられる数)」と「かける数」を想定した方が、考えやすい状況なんて、いくらでもあります。というか、基本はこっちでしょうね。(対等な数値どうしをかけ合わせる状況もありますが、そういうものは、ふつうオートマチックにかけ算とわかるものなので、やはり「もとになる数」を意識できた方が、よいです。)
(全体〔もとになる数〕)×(割合)
本当に、いくらでもありますが、代表例として「割合」をあげておきましょう。
「(全体)×(割合)=(調べたい量)」なんて、公式でも何でもないですよ。ごく、あたりまえのことです。
「(もとになる量〔全体〕」に「×3」すれば、3倍の量が出てくるように、「×0.65」すれば、0.65倍の量が求められる・・・それだけのことです。
(くわしくは、こちらのページの解説資料をどうぞ)
算数ヘイター(過激なかけ算順序自由派)のみなさんの中には、この「(全体)×(割合)」も、公式のように思える人が多いようです。しかも、彼らとしては「公式」は、忌み嫌うものです。
かけ算自由派って、とっても不自由ですね。(穏健なかけ算自由派のみなさん、すみません。失礼なことを言っているようですが、みなさんのことではありません。)
320×1423÷160
もう1例、自塾の小学5年生用計算練習教材から、
「320×1423÷160」という問題を紹介しておきます。
公立小学校が使っている教科書・ドリルなどでは、あまり扱われない問題ですが、5年生なら解けるので、のせています。
この問題を扱う理由は・・・
「A×B」、「A÷C」が、かけ算、わり算ではなく・・・
「×B」、「÷C」の部分がかけ算・わり算だという感覚は、なるべく早くもっておいて損のない感覚だからです。(もとになる数「A」があって、それに適切な数をかけたりわったりして必要な数量を得る…ということです。)
本来、小6算数、分数のかけ算わり算混合問題で、身に付けるべき感覚ですが、なかなか小6では、そこまで行けない人も多く、中学に入ってからの数学の計算問題で、問題になってきます。
(数学が始まった時期に、「×B」、「÷C」の部分がかけ算・わり算だという感覚をもてるかどうかは、1つの重要なファクターになります。下に、関連解説動画も貼っておきます。)
文字式の係数なんかもそうですね
きりがありませんが、中学数学の話になったのでもう1点だけ・・・
数学になって出てくる文字式の係数なんかも、そうですね。
例えば、「5a」という値に対し、単に「5×a」の×の記号が省略されたもの・・・ではなく、「aが5つ分」と、とらえられるようになることは、初期にとても重要なことです。
ⓐ ⓐ ⓐ ⓐ ⓐ : ⓐ ⓐ ⓐ
このようにとらえられなければ、「5a+3a」、「5a-2a」などの計算の理解が、たいへんです。
「aが5つと、aが3つで、合わせてaは8つなので8a」、「aが5つから、aを2つ分ひいたら、残りはaが2つ分なので2a」・・・
このようにとらえるためには、「5a」を「aが5つ分」と、とらえられている必要があります。そうでなければ、最初に教科書に考え方として示されている「(5+3)a」や「(5-2)a」という計算を、いつまでもしなければなりません。
逆に、「5a」を「aが5つ分」というとらえ方ができていれば、係数計算が負の数や小数・分数になっても、容易に抽象(応用)できます。
このとらえ方は、このように、とても重要なのですが、それほど心配することもなく・・・もちろん、学校の授業だけではつかめない生徒さんは、たくさんいるでしょうが、塾に限らず学校の補講や親御さんがみてあげるだけでも、比較的容易に補えます。
これは、日本の教育カリキュラム上、算数の段階で、「(1つあたりの大きさ)×(それがいくつあるか)」というかけ算の使い方を、重視してきた成果ともいえるでしょう。
いろいろと、つながっています。
以上です。ありがとうございました。
執筆:井出進学塾(富士宮教材開発) 代表 井出真歩
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?