昔のホテル

戦前に開業し、1997年まで営業していたホテル(某金沢の奥座敷だったホテル)のパンフレットをいくつか取り寄せて見比べている。
私が宿泊したのは90年代だったが、既に多数の客室は閉められて真っ暗だった気がするし、中は増改築が繰り返されて迷路のようだった。

気まぐれにエレベータを途中で降りれば、華やに使われていたのだろうホールがガランとして闇の中に佇んでおり、幼心にゾクッとしたものだ。

でも、その威厳と歴史の香りを鮮明に焼き付けたホテルなだけに、記憶をたどってどの部屋がどこにあり、昔は何に使われていたかを思い出して、歴史にふける。(似たような匂いのホテルに奈良ホテルがある。あそこも似たような歴史の香りがした)

部屋の変遷で、どういう経営戦略を辿ったかが見えるような気がする。

玉渓、銀鈴、富貴、幾世、露月庵、水光亭…

部屋の名前や建物の名前も実に風流。

下の図はおそらく開業当初1930年代であろう客室のパンフレット。
広々とした部屋(支那風、南洋風、朝鮮風…)のある一方で、恐らくトイレも窓もないであろう狭い部屋が並ぶ(図)。図では上が湖に面した景観のいい窓がついているが、「撫子」「芙蓉」などはなんと廊下の中に立っている。もちろん、パンフの写真にも載ってない。狭い部屋だったのだろう。

3円、かぁ…

格差の感じられる客室。上が南
「支那風」白楊の間


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