サステナビリティレポートとは
前回からサステナビリティ・レポーティングの基礎編をお届けしています。第2回は「サステナビリティレポートとは」です。その背景と想定される読者についてご説明します。
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サステナビリティ・レポートとは
今日、我が国でも持続可能やサステナビリティいう言葉が日常的に使われてるようになっており、日本企業の中にも自社のサステナビリティへの取り組みを、報告書やウェブサイトの中で取りまとめているところが増えています。サステナビリティ報告書、環境報告書、統合報告書、ESGデータブックなど報告の形態は様々ですが、ここではサステナビリティ・レポートと総称することにします。サステナビリティ・レポートとはそもそも何なのか、誰のために、何のために作成されるかについて、以下に整理します。
サステナビリティ・レポートとは、持続可能(サステナブル)な経済、社会と環境の実現に向けて、企業がどのような取り組みをしているかを示す報告書と解釈されます。前回でご説明したように、持続可能な社会とは、「将来世代のニーズ」を損なうことが無いように留意しながら開発を進めることで実現します。近年になって持続可能性が注目された背景には、異常気象、自然災害、食料不足、社会不安、国際紛争など、経済、社会や環境の持続性に向けての懸念が、世界的に広まってきたことがあります。
こうした懸念を受けて、数多くの企業が持続可能性に資する取り組みを行い、これを対外的に報告するようになっています。その理由は、企業の持続的発展と経済、社会、環境の持続可能性は繋がっていると認識されるようになったからです。長期にわたり持続する企業とは、経済、社会、環境の持続的発展に貢献している企業、あるいは経済、社会、環境の長期的リスクに備えている企業と見なされます。一方、持続しない企業は経済、社会、環境の持続的発展に逆行している企業、あるいは長期的リスクに備えていない企業と見なされます。
例えば、地球温暖化防止に資するように再生可能エネルギーを積極的に導入している企業は長期的に持続する企業になりえますが、化石燃料に依存し温室効果ガスを大量に排出している企業は、長期的には持続しないでしょう。あるいは、バリューチェーン上の人権保全を徹底している企業は長期的に持続する可能性がありますが、調達先での強制労働、児童労働の存在を放置している企業は持続的な成長が難しいでしょう。後者のタイプの企業が持続しない理由は、やはり、消費者を含め社会がこういったビジネスを次第に許容しなくなること、さらに投資家等もこうした状況を見込んで当該ビジネスから手を引くことなどがあります。
こうした状況を踏まえると、経済、社会、環境の持続性に向けて自社が貢献していることを、社会に示すことが必要になります。また、こうした貢献により企業の価値が高まり、持続的に成長することを投資家等に示すことも必要となります。それゆえ、数多くの企業が持続可能性に資する取り組みを報告書の形で対外的に発信しています。これがサステナビリティ・レポートの作成が増えてきている背景と考えられます。
サステナビリティ・レポートは誰に向けて情報発信するのかについても、こうしたレポートを作る背景を考えれば明らかになります。想定される読者のグループの一つに投資家や評価機関があります。企業はサステナビリティ・レポートの中で、ESGの非財務情報を開示しつつ、自社が持続的に成長する可能性があることを投資家や評価機関に示します。次に取引先企業が読者として考えられます。とりわけ多国籍に事業展開する大手企業は、バリューチェーン上の全ての企業に対し、サステナビリティへの取り組み状況について説明を求める傾向があります。サステナビリティ・レポートを作成することで、こうした要請に応えることができます。
第三は消費者です。日本でもいわゆるZ世代を中心にエシカル消費への関心が高く、製品やサービスを購入する際に、企業のサステナビリティへの取り組みが考慮されます。サステナビリティ・レポートを通じて企業は消費者に対し自社の取り組みをアピールすることができます。第四は就活生です。仕事を通じて社会に貢献したいと考える学生は多く、サステナビリティ・レポートを通じて志望企業を選定するようです。優秀で意識が高い人材を確保するため、サステナビリティ・レポートは有効な求人手段となります。
第五は自社の従業員です。自社の事業が経済、社会、環境の持続的発展に寄与すると認識することは、特に若手の従業員にとって勤労意識を高める効果があると考えられます。サステナビリティ・レポートにより、自社の取り組みや今後の戦略などを従業員に周知させることができます。最後は、行政、NGO、地域社会等です。サステナビリティへの取り組みは単独ではなく、社外のパートナーと連携して行うことが有効な場合があります。同じ目標を目指すパートナーを見つける上で、サステナビリティ・レポートの公表は良いツールとなります。
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次回は「サステナビリティ・レポートの構成要素」についてご説明します。
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