電気自動車はSDGs?(2020年12月号)
※本記事はIDCJ SDGs室がこれまでのメールマガジンで取り上げた特集です。掲載内容はメールマガジン発行当時の状況に基づきます。
最近、メディアでSDGsに関する報道を目にすることが本当に増えた。新聞やニュースだけでなく、テレビの情報番組や女性誌などでもSDGsが幅広く取り上げられている。そんな中、民放テレビ局がSDGsの普及に向け作成した5分程度のミニ番組を見る機会があった。番組では、「レジ袋の有料化や電気自動車の利用などがSDGsの取り組みに当たる」と言っていた。私はこれを聞き、少し引っかかるものがあった。
電気自動車は、どれほどSDGsの達成に貢献しているのだろうか?
一見、電気自動車はガソリンを使わず、二酸化炭素が発生しないので、地球温暖化防止に貢献しているように見える。しかし、本当に二酸化炭素を発生していないかどうかは、電気自動車が使う電力がどこから、どのように来ているかまで見てみないとわからない。電気自動車が使う電気が、火力発電で作られた電気であるならば、電気自動車は間接的に二酸化炭素を出しているのではないか。 環境エネルギー政策研究所の発表によれば、2019年の日本の発電量の内訳は、火力が75%を占めていた。電気自動車は、使う電力が再生可能エネルギーで賄われて初めてエコカーになると感じる。
電気自動車のSDGsへの貢献に関して、電気の出所以外に、もう1点考慮すべきことがある。それは「蓄電ロス」だ。電力は一般的に蓄電すると、蓄電をしなかった場合と比べて使用可能電力が10~40%(電池の種類、機器により異なる)減ると言われている。この現象が「蓄電ロス」だ。電気自動車は、蓄電した電気を放電しながら走る仕組みなので、蓄電ロスが発生しエネルギー効率が下がる。SDGsのゴール7には「全世界のエネルギー効率の改善率を倍増させる」というターゲットがあるが、現段階では主に火力発電で二酸化炭素を発生させ、かつ発生させた電力を非効率的に利用している状態になっている。
またこうしたエネルギー効率は、最近もてはやされている「ワイヤレス充電」といった新技術の活用においても考慮されるべきものだと感じる。スマホなどの機器をワイヤレスで充電できれば確かに便利だが、こうした充電方法では約50%の電気を無駄にしているという試算もあり、エネルギー効率が非常に悪い。今、さまざまな電気機器メーカーがこのワイヤレス充電事業に参入しようとしているが、私たちが使うあらゆる機器がワイヤレス充電となれば、多量の電力が無駄になってしまう。
電気自動車やワイヤレス充電の課題を述べてきたが、私は何も電気自動車やワイヤレス充電によるSDGsへの貢献をすべて否定するつもりはない。例えば電気自動車は災害時に電気の供給源になる。これはSDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献している。ワイヤレス充電にしても、例えばインフラの点検関連機器に導入されればゴール9「産業と技術革新の基盤を作ろう」に貢献できる可能性がある。どちらも私たちの未来のために必要な技術であることは疑いなく、これから技術革新を続け、課題を解決できればもっと大きな貢献に結びつくものだろう。
前述したテレビ番組に話を戻すが、「電気自動車はSDGsに貢献している」という一言が引っかかるのは、私が常々SDGsの達成が如何に複雑かを感じているからだと思っている。例えば電気自動車のように、一見SDGsに貢献しているように見える取り組みでも、少し掘り下げてみると実はSDGsの達成にマイナスな部分があったり、または別の形で貢献しているということが良くある。SDGsのターゲットの解決には、単純明快な「解」が存在しないものも多く、ひとつひとつじっくり解決していく必要がある。
ゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」:
ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」:
ゴール13「気候変動に具体的な対策を」:
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