GRIスタンダードとは何か
GRIスタンダードは、企業が環境や社会、経済へのインパクトを伝えるためのグローバルな共通言語を提供するために作成されたものです。現在GRIスタンダードは世界100カ国以上で数千の企業や団体により使われており、非財務情報開示の基準として最も普及しています。
GRIがGRIスタンダードの前身であるGRIガイドラインの初版(G1)を発表したのは2000年でした。国連の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」が南アフリカのヨハネスブルグで開催されたのが2002年でしたので、持続可能やサステナビリティという概念がまだ広く浸透していない時代に、その先導者としてGRIガイドラインが登場したことになります。続いて、2002年にはGRIガイドラインの第二版(G2)、2006年にはガイドライン第3 版(G3)、2013年には第4版(G4)が登場します。G4には「食品加工」、「建設・不動産」、「石油・ガス」など10業種を対象としたGRIセクター開示項目(G4 Sector Disclosures)が付け加えられました。
2016年には今までの「ガイドライン」の表記を改め、新たに「スタンダード」としてGRIスタンダードを発行しました。2021年10月には改訂版のGRIスタンダード2021が公開されたところです。
一般に、ガイドラインとは自主的に遵守することが推奨されるルールと位置付けられています。業務上の適切な方向性が示された文書であり、日本語では指針や行動指針などと訳されます。一方、スタンダードとはガイドラインよりも義務的な意味付けを伴う存在と認識されています。
G4ガイドラインでは、報告書がGRIガイドラインに「準拠」するための要件や開示項目を提示しています。ただあくまでガイドラインとしての位置づけであるため、開示項目ごとの解説が手引きとして示されているだけで、強く開示を要求するものではありませんでした。一方、GRIスタンダードになると、各開示項目に「報告要求事項」と「報告推奨事項」の二つが区別されており、報告書がGRIスタンダード準拠であるために「しなければならない」要件が明確に記載されています。この報告要求事項と報告推奨事項の違いを強調するために、ガイドラインでなくスタンダードという名称に変更したものと考えられます。
なお、2016年に公開されたGRIスタンダードの初版には、G4の「セクター開示項目」に該当するセクターごとの開示基準書は添付されていません。G4「セクター開示項目」は現在、GRIウェブサイトから削除されています。
その代わり、2021年に公開された改訂版のGRIスタンダード2021には、セクタースタンダードが設けられており、第一号として「石油・ガス」セクター向けのスタンダードが発表されました。今後、GRIは約40のセクターを対象としたセクタースタンダードを作成してゆく予定です。
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