「脱炭素化」続編(2021年3月号)

※本記事はIDCJ SDGs室がこれまでのメールマガジンで取り上げた特集です。掲載内容はメールマガジン発行当時の状況に基づきます。

2020年7月号のメルマガでSDGsゴール7とゴール13に関係の深い「石炭火力発電」、 11月号で「カーボンリサイクル 炭素資源活用の動き」について書きました。今回はカーボンプライシングによる脱炭素の動きについてです。カーボンプライシングとは簡単に言うと「炭素に価格を付ける」仕組みです。炭素に価格を付けることでCO2の排出者は排出量を減らすか、排出の対価を支払うことになり、社会全体でCO2削減のエコシステムが出来上がります。

排出に対価を支払う仕組みの一つの「排出量取引」は東京など一部自治体が導入済です。また炭素税、再生可能エネルギー発電促進賦課金は国が導入しています。しかし、2050年温室効果ガス排出量ゼロに向けて排出量取引、炭素税、再生可能エネルギー促進賦課金などカーボンプライシング制度導入をセットで進めている英国、フランスなどに比べ、日本にはまだ多くの課題があると言われています。

カーボンプライシングには炭素税、排出量取引、企業間削減量クレジット取引など様々な仕組み・手法があり、炭素価格の値付けが企業や個人に与えるインパクトも多様です。温室効果ガス排出量に応じて課税する炭素税やGHG排出上限超過分に負担を課す排出量取引は企業負担増加により企業活動停滞や商品価格上昇を招くのではないか、削減量クレジット取引や再生可能エネルギー電力付加価値を取引する非化石価値取引市場は企業に自主的な行動を促し技術革新が進むかもしれないが、経済効果は小さいのでははないかなど、それぞれの立場の違いを巡り議論は今後も白熱していく可能性があります。

また、「脱炭素化」に対する「産業界における温度差」もあります。脱炭素技術開発・活用を通じて成長の機会を窺う企業と、負担が大きく先が見通せない企業との間の温度差、格差の問題です。

ESG投資の動きが益々加速する中でステークホルダーの企業選別の動きは好むと好まざるにかかわらずグローバルレベルで確実に進んでいます。経済産業省が企業の「脱炭素電力」購入推進を後押しする企業向け新制度を本年中に導入する方針を固めたり、最近では重機大手企業が開発中のアンモニアを粉状石炭と混ぜて燃焼させCO2発生を大幅に抑える混焼技術が脚光を浴びたりと「脱炭素化」の動きからは目が離せません。

カーボンプライシングを含む各企業の「脱炭素化」への対応が待ったなしの状況に差し掛かる中で、企業も個人も「脱炭素化」を他人事ではなく、プラスチックごみ削減や、食品ロス削減などと同様に自分の身近な課題として取り組んでいく必要があると思います。

※本記事に含まれる情報は2021年2月18日時点の公開情報によります。

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